JのCS決勝展望。ガンバの下克上Vの可能性は? THE PAGE 12月1日(火)8時0分配信

年間総合勝ち点1位のサンフレッチェ広島と同3位のガンバ大阪が、ホーム&アウェー方式で激突する「2015 Jリーグチャンピオンシップ」決勝 の第1戦が2日午後7時半に、ガンバのホーム万博競技場でキックオフを迎える。ドラマティックな展開で、浦和レッズを撃破した一発勝負の準決勝から中3 日。決勝戦の注目は、G大阪が再び下剋上を起こせるかどうかに注がれる。

まずは迎え撃つ広島を見てみたい。J1が18チーム制になった2005年以降では最多となる年間総合勝ち点74を獲得した軌跡が物語るように、今シーズンのJ1で最も盤石な試合運びを展開したチームであることは間違いない。
元日本代表MFで、現在は解説者を務める水沼貴史氏は、森保一監督のもとで4年目を迎えた広島のサッカーをこう表現する。

「相手が出てくれば、自分たちが仕掛ける。出てこなければボールをしっかり回して、相手を動かしながら誘き出そうとする。そういった部分で、選手個々の判 断のレベルが非常に上がっている。たとえばボール回しが上手くいかないときには、最終ラインでボール回しに参加する千葉和彦や塩谷司たちが前後左右にポジ ションを微調整する、あるいはちょっと横に出るなど、こまめにポジションを変えてプレッシャーを回避する術をチームとして身につけている。成熟した大人の チームといっていい。
加えて、今シーズンは後半途中から相手が前へ出てくれば、カウンターを仕掛けられる浅野拓磨という武器も手に入れた。爆発的な縦へのスピードを誇る浅野はたとえパートナーがいなくても、一人でプレーを完結できる。相手にとって大きな脅威となっている」

浦和とともに「3‐4‐2‐1」を基本形としてマイボール時に「4‐1‐5」へ、相手ボール時には「5‐4‐1」へ素早く陣形を変える「可変システム」を採用するが、本家はあくまでも広島だ。

2008年シーズンの序盤から取り入れ、試行錯誤を繰り返しながら進化させ、その過程で史上4チーム目となるJ1連覇を達成した。戦い方に対するこだわりの強さは浦和以上であり、徹底された戦いぶりをG大阪のMF今野泰幸もこう警戒する。

「5バック状態となっても気にすることなく守り通してくるあたりは、堅いというしかないですね」

そのキーマンが、キャプテンのボランチ青山敏弘だ。浦和の柏木陽介と同様に、システムが「4‐1‐5」になったときの「1」を務めるが、長い縦パスと前へ攻め上がっていくタイミングを常に狙っている点でプレースタイルが異なる。前述の水沼氏が言う。

「試合前の全体練習の最後で、青山は長いボールを黙々と蹴ることが多い。おそらく試合へ向けたイメージを膨らませているのだろう。ピッチ全体を見渡せてい るから、行けると思ったときにワントップの佐藤寿人に出す縦パスや、サイドを大きく変えるパスを出せる。相手の守備網を突破するときのワンタッチパスと、 無理をしないときのワンタッチも完璧に使い分けられるし、バイタルエリアが空いたと思ったらすっと入っていくときの判断力も研ぎ澄まされている。

守備でも、たとえばセンターバックの千葉あたりが誘き出されたときにはしっかりと埋める。戻るべき場所を瞬時に察知できる点は、ガンバのキーマンである 遠藤にもないといっていい。もちろん、闘える選手でもある。選手選考はあくまでも代表監督の専権事項であることを承知の上で、それでもA代表に呼ばれない のはなぜなのかと不思議に思ってしまうほど、いまの青山は心技体のすべてで充実している」

ファーストとセカンドの合計となる73得点は最多で、30失点は最少。攻守のバランスが完璧なハーモニーを奏でる、まさに隙がない広島をいかに攻略すればいいのか。

G大阪の攻撃を差配する遠藤保仁は、広島と同じシステムの浦和戦でヒントを得ている。

「間延びしたおかげで点を取れたと思う。間延びすると浦和のペースになりがちなんですけど、そこを上手くカウンターで仕留めることができた」

後半開始早々。G大阪は狙い澄ましたように前へ、前へと怒涛のプレスを仕掛ける。その結果として浦和の守備陣は押し下げられ、さらに左右に広げられた。
GK西川周作からボールをもらったDF那須大亮が、右タッチライン際のDF森脇良太へパスを出す。そこへ、待っていましたと飛び出してきたMF大森晃太 郎がカット。そのままショートカウンターを仕掛け、西川へプレッシャーをかけた後に前線へ残っていた今野が鮮やかなゴールを決めた。

水沼氏も前線からの激しいプレスが広島のリズムを狂わせる有効な対策となるとしながら、場合によっては「もろ刃の剣」となりうるとも指摘した。

「3バックのチームを苦手としていないガンバの長谷川監督は、浦和戦のように前からどんどんプレッシャーをかけてくることが多い。ただ、広島のビルドアッ プは浦和よりも上手い部分があるし、青山と柏木の特徴も違う。最後までしっかりとプレッシャーをかけないと、左右のワイドの選手を上手く使われるおそれも 出てくる。それでも、前からプレッシャーをかけないと苦しくなるだろう。そして、ボールを奪ったときにはパトリックの巨体をいかに上手く生かせるか、とい う展開になってくるのではないか」

延長戦を組めた120分間を戦ったG大阪の中3日に対して、広島はセカンドステージ最終節から中9日とスケジュール面では優位に立つ。水沼氏によれば疲労 が蓄積される関係で、体力的な問題は広島のホームで行われる5日の第2戦でより色濃く出てくるおそれがあるという。ならば、延長戦のないホームでの第1戦 で、G大阪が乾坤一擲の勝負をかけてくる可能性が強い。

対する広島はおそらく無理をすることなく、千葉とボランチから下がってくる森崎和幸を中心にボールを回してG大阪を焦らしにくる。そうした「緩」の展開を、いかにして強引に「急」へもち込めるか。

そのためには時間帯および狙いを定め、全員の意思を統一して一気にプレッシャーをかけなければいけない。前へボールを運ばせないためにも、青山にプレッ シャーをかけるだけでなく、青山へのパスも遮断する必要がある。相手を押し下げる意味で、体を張れるパトリックの存在感も増してくる。試合巧者・広島の最 終ラインと前線を間延びさせたときに、G大阪の第1戦勝利と下剋上への可能性が大きく膨らんでくる。

Share Button