【番記者の視点】G大阪低迷の2023年<後編>宇佐美貴史の不振、グループ化…一体感不足の解消は急務
【G大阪担当・金川誉】今季はチームの顔であり、エースでもあるFW宇佐美貴史が主将に就任し、さらにかつて遠藤保仁が背負った背番号7を継承した。開幕の柏戦では、新ポジションのインテリオールで今季初ゴールも奪い、大きな可能性を感じさせた。しかしチームに結果が出ない中で、5月以降はベンチスタートの試合が増加。出場機会が減る中で、チームをまとめる重責を背負った。さらにシーズン終盤は調子が上がらない中でも、MFアラーノの負傷離脱により先発が増えた。勝てない責任も背負い、苦しみ抜いたはずだ。
宇佐美は最終戦後、あいさつの場面でもサポーターからブーイングを浴びた。「当然だと思います。罵詈(ばり)雑言の嵐は飛んできますけど、サポーターのみなさんは僕たちと同じくらい勝ちたいと思っている。辛い思いをさせているので、そういうことを言わせないように結果を出したい。それを痛感しました」と話した。22年3月に負ったアキレス腱断裂の大けがから、同年10月に復帰し、この年はJ1残留に貢献。しかし今年は1年を通じ、コンディション的に上がりきらない部分もあった模様で「(違和感を)たくさん感じることはありましたけど…それはあえてここで言うことじゃない。自分のパフォーマンスが低かった。それだけだと思うので。来年どうするのか、というところだけだと思います」と語るにとどめた。
エース、キャプテンの不振。そんな中で、浮かび上がった問題点が、チーム内のグループ化だ。宇佐美を中心とするベテラン組と、主に大卒の選手などで構成される若手組、そして外国人組と、大きく分けると3つのグループが存在したように見えた。どのグループにも属さない選手もおり、決してグループ間が反目しているわけでもないが、どこか見えない壁のようなものが存在するように映った。グループ外とはお互いの意見をぶつけ合う機会も少ない、という点もあったと聞く。これだけ勝てない時期(4、5月に7戦勝ちなし、9月以降は7連敗)が続いたにもかかわらず、チーム内では激しく意見をぶつけ合うような建設的なバトルは、今季1年を通じてなかったという。
今季チームに感じた強度不足は、一体感の欠如とリンクしているのではないだろうか。2022年の終盤、残留争いの中で必死になったチームには強度、そして一体感が確かにあった。しかし今季はシーズン中盤の連勝で、ほぼ残留は濃厚と言える位置まで浮上したことで、終盤戦にかけて7連敗を喫した時期にも必死さからくる一体感は感じなかった。苦しい時にあと1歩踏み出す、10センチでも体を投げ出す。そんなディティールを徹底する空気の欠如が、リーグ最多タイの61失点につながったのでは、と危惧する。
近年のG大阪を見ると、監督や選手が入れ替わっても、同じ問題を抱え続けているようにも見える。それは選手だけに押しつけていい問題ではない。毎年のようにチーム戦術にフィットしない高額年俸選手を抱え、これが他選手の不満の種となっていた点は、編成面のミスがたたった、とも言える。緩んだ土台の上に、いくら戦術を積み上げようとも、強いチームができあがるはずはない。
来季、ポヤトス監督2年目のシーズンに向かう中では、G大阪にかかわる全員が「どうすればG大阪は強くなるか」をひとりひとりが考え、誰か任せにせずに自ら一歩踏む出す必要がある。そこには遠慮や忖度(そんたく)、ましてやグループ間の壁などあっていいはずはない。計9つのタイトル獲得を誇るG大阪が、7年間無冠、さらに3年連続で残留争いに甘んじるという現実。この重みを受け止め、再び“強いG大阪”復活に向けて前に進むことを願う。



