【月刊ラモス】『Jリーグの秋春制移行』決定に「日本サッカー界が世界に打って出るための準備が整った」
「日本サッカー界が世界に打って出るための準備が整った」。月刊ラモスのラモス瑠偉編集長はJリーグの秋春制移行決定、さらに宮本恒靖“次期会長”就任を歓迎した。30年の歳月を費やし、サッカーを日本の文化に育て上げてきた日本サッカー界。これからは世界のトップを目指す戦いが本格化する。W杯優勝、クラブW杯制覇。さらなるJリーグの発展のために、大変革は「欠かせないもの」と力説する。2024年、日本サッカー界は新たな領域に大きな一歩を踏み出す。
2026/27年シーズンからJリーグの8月開幕、翌年5月終了、いわゆる秋春制移行が正式に決まった。私はかねて、秋春制移行に賛成してきたが、長い年月をかけ、幾度となく頓挫してきたこの改革案が、ついに現実のものとなった。日本サッカーが、世界と戦っていくために、この改革は必要不可欠なものだ。
移行のメリットは多い。温暖化の影響で近年、猛暑日が一気に増えてきた。酷暑下のリーグ戦は、選手のパフォーマンスを著しく低下させ、試合の質の低下だけでなく、選手のコンディション維持にも大きな影響を与える。
リーグの国際化という面でも大きなメリットがある。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)が秋春制に移行したが、今回の改革でACLをより戦いやすくなる。ACLの先にあるクラブW杯も、大会規模を大きくして4年に一度の開催となることが決まっている。この大会で欧州や南米のビッグクラブを打ち破り、上位に進出することができれば、Jリーグの価値を大いに高めることになる。リーグのカレンダーを欧州に合わせることで、より大会の注目度が高まり、大会に向けた強化、コンディショニングにおいてもメリットがある。
さらに、欧州のカレンダーに合わせることで選手の海外移籍がスムーズになり、逆に外国人選手の獲得、外国人指導者の招聘(しょうへい)も容易になる。大多数が海外クラブでプレーする日本代表の召集、強化にもプラスとなり、W杯やW杯予選、そのほかの国際大会に向けての準備も整えやすい。
30年前はW杯出場が悲願だった。しかし、いまはW杯優勝という目標を、堂々と口にできるまで日本のサッカーは進歩している。クラブ、代表の両方で世界の頂点を狙うためにも、今回の改革は大きな前進といえる。
もちろん課題も多い。一番は、降雪地帯のクラブのデメリットをいかに軽減するか。12月第3週から約10週、ウインターブレーク(冬季中断)を設けることで、実際の開催時期はいまの春秋制とそれほど変わらない。ただし、期間が短くなり、J1のクラブ数も20に増えることで、日程は過密になるが、その分、酷暑の試合は減る。
中断期間前後は降雪地帯のクラブはアウェーの試合が多くなるかもしれないが、開幕直後、シーズン大詰めの時期はホームの試合が増える。施設やキャンプをどうするか、さらに年度をまたいだスタジアムの確保、新人選手の加入時期など、考えなければならないことは多くあるが、できないと言ってしまったら、前へは進めない。降雪地域のクラブだけでなく、みんなでどう解決するかを考えることが重要だ。
私は85年にドイツのサッカーを見にいったが、雪の中、普通に試合をやっていた。欧州の降雪地帯のクラブがどう工夫し、どんな施設を整えているのか、キャンプやトレーニングをどう行っているのか、すでに情報は持っていると思うが、あらためて視察し、研究する。資金面の援助、行政への働きかけ、やれることは日本サッカー協会、Jリーグを挙げてやる。それが日本サッカー界の明るい未来への投資となる。
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日本サッカー協会の宮本恒靖専務理事の同協会会長就任が確実となった。G大阪の選手として、そして監督としてJリーグを戦い、海外のクラブ(ザルツブルク)でも実績を残した。そしてユース年代から代表に名を連ね、各年代でキャプテンを務め、W杯を戦った初めての会長。まだ46歳。日本サッカー界がこの30年で育てた若きリーダーで、戦後最年少の会長となる。
それだけではない。現役引退後、彼はFIFAマスター(FIFA大学院)に日本の元プロ選手として初めて合格、卒業した努力家でもある。サッカーだけでなく、世界中に人脈を持つ国際派だ。
日本サッカー界はサッカーを日本の文化として育ててきた。地域に根挿し、週末には多くのサポーターがスタジアムに足を運ぶ。各クラブは育成組織を充実させ、多くの才能を発掘し、育てた。そこから多くの日本代表選手が誕生し、W杯や五輪で活躍して海外のクラブに挑戦していく。それが日本代表の強化にもつながり、世界でも注目される存在となった。
日本サッカー界が世界に打って出る時代が来た。そのけん引役として、宮本“次期会長”には存分にリーダーシップを発揮してもらいたい。Jリーグを知り、日本代表を知り、世界のサッカーを知るグローバルなリーダー。Jリーグ秋春制という大改革とともに次の時代、日本サッカーが大きな飛躍を遂げるための推進役として、存分に手腕を振るってほしい。
森保ジャパンの活躍で2023年は日本サッカー界躍進の年となった。そして2024年元日、日本代表とタイ代表の戦いで新年の幕が開く。さらに1月にはアジアカップが開催され、Wカップ予選へとつながっていく。今年最後の月刊ラモス。2024年も良い年でありますように。日本サッカー界の未来は明るい。私はそう信じている。 (元日本代表)



