京都と契約満了のパトリック、Jでのキャリア続行に意欲「日本が好き。日本でのプレーを望んでいます」

どこへ行っても愛されるというのは、才能の一つだろう。そして、複数のクラブを渡り歩くサッカー選手にとってファン・サポーターからの愛情には特別な想いがあるはずだ。

明治安田生命J1リーグ第34節が3日に行われ、京都サンガF.C.は横浜F・マリノスに3-1で勝利を収めた。先月30日に今季限りでの京都退団が発表されたFWパトリックは、82分から途中出場してホームスタジアムに集まったファン・サポーターに最後の勇姿を披露した。スタンドには「ありがとう、愛してる」と書かれた横断幕も掲げられ、ファン・サポーターもパトリックとの別れを惜しんだ。

「このクラブには1年所属しただけで、特にタイトルを獲ったわけでもなく、どこまで自分が貢献できたのか…と思っていた中で、期待はしていなかったんです。でも、(ファン・サポーターは)ああやって横断幕を用意して送り出してくれました。心の底から嬉しかったですし、すごく印象に残る出来事でした。すごくいい終わり方だったと思います」

試合後に報道陣の取材に応じたパトリックは、京都のファン・サポーターから受け取った愛情に感激している様子だった。ホーム最終戦セレモニー終了後にはゴール裏へ向かって日本語で挨拶し、自身へのメッセージが書かれた横断幕の前で記念撮影もした。

「出場時間はそこまで長くなかったですけど、しっかりと自分の仕事をしてチームに貢献できたと思います。ファン・サポーターの皆さんにも自分のことを覚えていただけたと思うので、京都は僕にとってもすごく特別なチームになりました。全てにおいてポジティブな1年だったと思います」

ガンバ大阪から京都に移籍した今季、パトリックはリーグ戦32試合に出場して10得点を挙げた。J1での二桁得点は2年ぶりで、得点数は豊川雄太と並んでチーム最多タイだ。しかし、出場時間は1206分と思うように伸びず、特に夏場以降は途中出場でのスーパーサブ的起用がほとんどになった。それでも手応えは大きいようだ。「もちろんもっと出場機会があれば、もう少しゴールを決められたかもしれない」とは言ったものの、「それは“たられば”です」とパトリックに後悔はなし。むしろ「1年を通して新しく学んだことも多かった」と充実感をにじませた。

「これだけ走って、強度も高いチームは他になかなかないと思いますので、そこでプレーしたというのは自分にとっても新しい経験でした。これであと6年くらいは走れるかなと思います(笑)」

攻守に90分間を通じたハードワークが求められる京都で、来年37歳になるブラジル人ストライカーは“まだまだいける”という実感をつかんだようだ。だからこそ京都からの退団は、次のステップへの前進だ。

「ファン・サポーターからの『残留できたのはパトのおかげだ』という声は聞き取れましたし、すごくありがたい言葉だと感じました。僕のために横断幕を作ってくれて、ああいう声も聞けたということで、自分の歩んできた道が間違っていないんだと感じることもできました。京都では非常にいい時間を過ごせたと思います。今まで様々なクラブを渡り歩いてきて、どこでもポジティブなものを残してきたつもりですが、京都でもそれができたのかなと思います」

そう語ったパトリックは、これから来季以降の所属先を探すことになる。もちろん愛する日本でプレーし続けることを熱望し、Jリーグ内での移籍を第一に検討していくつもりでいる。

「(日本でサッカーをしている)息子のこともありますし、僕自身も日本が好きなので、日本でのプレーを望んでいます。それを念頭にこれから移籍先を探すことになると思います。一番は京都でプレーを続けられることでしたが、そうはならなかった。それでも日本のことが好きなので、どこかいい場所を探していきたいです」

以前から日本への帰化を希望し、日本語の勉強も熱心に続けているパトリック。帰化申請の条件を満たし、実際の手続きを進めるためには今後もJリーグでプレーし続けることが必要になる。

果たして新天地はどこになるだろうか。2013年の来日以来。川崎フロンターレヴァンフォーレ甲府、ガンバ大阪、サンフレッチェ広島、そして京都と行く先々で愛され、J1通算300試合出場にあと5試合と迫るベテランストライカーの次なる挑戦を楽しみにしたい。

取材・文=舩木渉

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