U-22日本代表「アジア大会組→パリ五輪行き」候補は? 大学→独1部クラブ入りのアタッカーら5人厳選【コラム】
アジア大会組からパリ行きを果たし得る5人のタレントを厳選
大岩剛監督率いるU-22日本代表は、中国・杭州で行われているアジア競技大会のサッカー男子で決勝へ進出。通算2度目の優勝を懸け、10月7日に韓国代表とのファイナルに臨む。日本は来年のパリ五輪を見据え、アピールが求められる国内&海外組や大学生中心のメンバー構成に。実質“Bチーム”から来年のパリ五輪行きを掴むタレントは現れるのか。ここではアジア大会組からパリ行きを果たし得る5人のタレントを厳選して紹介する。
【動画】「リアル少林サッカー」 アジアで前代未聞の退場劇、レフェリーに猛タックル→レッドカードの瞬間
■谷内田哲平(MF/京都サンガF.C.)
3-1で勝利したカタール戦の先制弾に続き、パレスチナ戦で直接フリーキック(FK)から唯一のゴールを決めて、1-0の勝利に導いた。4-3-3のインサイドハーフを担うが、相手陣内を幅広く躍動して、相手ゴールに迫る。準決勝の香港戦も日野翔太(拓殖大)とのコンビで多くのチャンスを作り、精力的なフリーランなども目立った。
2020年に京都加入から栃木SCに期限付き移籍し、1年半の“武者修行”で大きな成長を遂げて復帰した。プロ4年目にして初のJ1挑戦となっているが、限られた出場チャンスのなかで存在感を増している。8月19日の北海道コンサドーレ札幌戦では鮮やかなパスカットからFWパトリックに縦パスを通し、アシストを記録。松木玖生(FC東京)などボランチにタレントの多いパリ五輪世代だが、ボールを奪う役割をこなしながら、攻撃のアクセントやより前目で違いを生み出せる谷内田はFKも含めて貴重な存在になり得る。
■関根大輝(DF/拓殖大)
187センチというサイズのどおりスケールの大きな右サイドバック。現在大学3年生で、2年後の2025年からの柏レイソル加入が内定しているが、正式な加入を待たず、特別指定選手としてブレイクする可能性も十分にある。言い換えるなら、そうでなければパリ五輪のメンバーに食い込むことは難しい。外側を豪快に駆け上がるだけでなくドリブル突破、そして現代のサイドバックにとって必要条件になってきているビルドアップでも、効果的なプレーを見せる。
出身高校の静岡学園では攻撃性能の高いセンターバックとして知られていたが、拓殖大で右サイドバックにコンバートされた。フィジカル的な強さはアジア大会でも目を見張るが、ライン側での守備などは、まだまだ上達していく段階で、伸びしろも大いにありそうだ。今大会は横浜F・マリノスに来季加入内定の吉田真那斗(鹿屋体育大)がファーストチョイスに。パリ五輪に向けても内野貴史(デュッセルドルフ)や怪我から回復中の半田陸(ガンバ大阪)など、同ポジションのライバルは強力だが、ここから予選も含めて1年弱の期間に伸びてくる期待は高い。
■佐藤恵允(MF/ヴェルダー・ブレーメン)
ラウンド16のミャンマー戦で2ゴールを決め、相手の厳しいマークやラフプレーに晒されたベスト8の北朝鮮戦では、左からのクロスで内野航太郎(筑波大)のゴールをアシスト。さらにスルーパスで西川潤(サガン鳥栖)のPK獲得につなげると、松村優太(鹿島アントラーズ)が決めて、これが決勝点となった。まさしくエースとして日本を牽引している佐藤はサイドのドリブル突破を得意としながら、中央に流れて決定的な仕事もできる。ボックス内での冷静さはシュート技術に対する自信の表れでもあるだろう。
これまで東京五輪世代の活動に何度も招集されてきただけに、わざわざ取り上げる必要はないかもしれない。それでも本人は現状に向き合い、ここから再び本メンバーに割って入ることを目指して、奮起している様子だ。Jクラブから引き手数多と見られたが、卒業を待たずに明治大学のサッカー部を退部して、ドイツに渡った。セカンドチームからのスタートになったが、大会前9月8日に行われたテストマッチで、トップチームでスタメン出場している。大会でさらに成長した姿をブレーメンで見せれば、かなり早い段階で公式戦デビューもあるかもしれない。
今大会追加招集メンバーの筑波大1年大型ストライカーは伸びしろ十分
■日野翔太(MF/拓殖大)
ここまで3試合で3得点と結果を残し、ボールを持った時の怖さでも違いを見せている。167cmというデータだが、体幹が非常に強く、球際では小柄さを感じさせない。準決勝の香港戦では起点のパスから前線に走り、角昂志郎(筑波大)の右ワイドからのシュートをGKが弾くと、その角度まで完璧に予測していたかのようにヘッドで合わせて、鮮やかにゴールネットを揺らした。さらに味方の縦パスから左ワイドでディフェンスの背後を取ると、そこから中に切り込んで、右足で美しい弾道を描くゴールを叩き込んだ。
現在大学3年生の日野は、2025年シーズンからのサガン鳥栖入りが内定している。中盤でのボール捌きに定評はあったが、直接ゴールに絡める攻撃的MFとして、パリ五輪のメンバーに食い込んでいく可能性は大いにある。大会の中でも大岩監督の評価を高めていると考えられるが、決勝の韓国戦は“ファーストチーム”への食い込みを目指すうえで、良い試金石になりそうだ。
■内野航太郎(FW/筑波大)
ダイナミックな動き出しと正確なフィニッシュを武器とする大型ストライカー。横浜F・マリノスのアカデミー育ちで、トップ昇格も期待されたなかで筑波大に進み、1年生ながら関東大学サッカー1部リーグで得点を量産している。タイプは違うが、川崎フロンターレのユースから同じ“進学ルート”で日本代表に上り詰めた三笘薫(ブライトン)などを参考に、日々のトレーニングに取り組んでいるようだ。
パレスチナ戦、ミャンマー戦でゴールを奪うと、準々決勝の北朝鮮戦では佐藤のクロスに合わせて大会3点目を記録した。2004年生まれで、今回はU-20ワールドカップにも出場した熊田直紀(FC東京)の怪我による辞退により追加招集された形だが、ギラギラ感にあふれるプレーが目立っている。北米遠征を控えるU-22代表には細谷真大(柏レイソル)や藤尾翔太(FC町田ゼルビア)といった強力なライバルはいるが、ここから1年足らずでどんどん壁を突き破っていく期待もある。
[著者プロフィール]
河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。