J1優勝争い「ラスト6試合」展望 首位・神戸の悲願Vに2つの懸念点…トップ2崩れで浦和“逆転のシナリオ”も【コラム】
J1リーグも残り6試合、上位3チームがV争いの有力候補
今季のJ1リーグも残り6試合となり、いよいよシーズンは佳境を迎えている。残り試合数=逆転可能な勝点差というサッカー界の定説に当てはめれば、優勝争いは3チームに絞られたと言えるだろう。第28節を終えて首位に立つヴィッセル神戸(勝ち点55)、2位の横浜F・マリノス(同54)、3位の浦和レッズ(同49)の3チームだ。
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浦和を2ポイント差で追いかける4位の名古屋グランパス、さらに1ポイント差で続く5位の鹿島アントラーズも可能性はゼロとは言えないが、名古屋はマテウス・カストロ(→アル・タアーウン)の移籍を機に急失速し、鹿島も第28節の横浜FMとの直接対決に敗れたのが痛かった。状況を考えれば、厳しいと言わざるを得ない。
優勝に最も近いのは、やはり神戸だろう。現在、首位に立っているのはもちろん、横浜FM、浦和とは異なり、AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)がないからだ。
ただし、残り6試合の対戦相手を見ていくと、横浜FM、鹿島、浦和、名古屋と上位陣との対戦が目白押しだ。このうち横浜FMと浦和には前回対戦で敗れ、名古屋とはドロー。鹿島には勝っているとはいえ、当時と今とではチーム状態は大きく異なっている。
一方の横浜FMの上位対戦は、神戸のみ。もっとも上位ではないものの北海道コンサドーレ札幌、セレッソ大阪、アルビレックス新潟の3チームには前回対戦で敗れており、苦手とする相手との戦いが続く。残り試合の相手との前回対戦の成績を見比べると、神戸は3勝1分2敗、横浜FMは3勝3敗でどちらも一筋縄ではいかない戦いが予想される。
両チームが躓く可能性があることを踏まえれば、浦和に逆転優勝の芽も十分に出てくる。浦和は鹿島、神戸との上位対決を残すが、鹿島と引き分け、神戸に勝利したのも含め、前回対戦の成績は3勝3分と負けなしだ。
ただし、気掛かりなのは横浜FC(第29節)、柏レイソル(第30節)と残留争いに苦しむチームとの対戦も控えているところ。窮地に陥るチームが土壇場で底力を発揮するケースは珍しくはなく(実際に横浜FMもこの2チームに足をすくわれている)、しかもこの2試合にはFWホセ・カンテが出場停止でピッチに立つことができない。得点源を欠くなかで、勝ち切れないシナリオも十分に考えられる。
29日開催の横浜FM対神戸“上位対決”は今季最大の一戦
混沌とした今季を象徴するように、3チームともに決め手を欠く印象だ。それでもスケジュール的に余裕のある神戸が優位と見られるが、懸念材料はこのチームに優勝経験がないことだ。
現行の18チーム制となってから、初優勝チームは6チーム誕生している。2005年のガンバ大阪は最終節の逆転劇でタイトルを手にしたものの、終盤に失速して一時は首位の座を明け渡している。2006年の浦和も終盤に取りこぼしが目立ち、タイトル獲得は最終節までもつれ込んだ。
2010年の名古屋、2011年の柏、2012年のサンフレッチェ広島のようにすんなりと初優勝を成し遂げるチームもあるものの、首位の座を守り続けるには窺い知れないプレッシャーがかかることは確かだろう。2017年の川崎フロンターレは一度も首位に立つことがなく、驚異の末脚を見せ、最終節に鹿島をかわして悲願成就を果たしている。
優勝を争う重圧のなかで、神戸の選手たちは持てる力を発揮できるのか。そこが初戴冠のポイントになるだろう。実績十分なタレントが揃うとはいえ、主力でリーグ優勝経験があるのはFW大迫勇也のみだ。
いずれにせよ、29日に行われる横浜FMとの直接対決が、優勝の行方を大きく左右することになるだろう。4月の対戦では横浜FMが3-2と逆転勝利を収めたが、果たして今回はいかなる決着を見るか。今季最大の一戦となることは間違いない。
[著者プロフィール]
原山裕平(はらやま・ゆうへい)/1976年生まれ、静岡県出身。編集プロダクションを経て、2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。