元日本代表MF稲本潤一、南葛SCでの挑戦を語る「自分の力を還元できる自信はある」
南葛SCでの2シーズン目を戦う元日本代表MF稲本潤一が、現在の挑戦について語った。「充実している」と白い歯をのぞかせる。約2時間のトレーニングで汗を流した後は、プロテインを気持ちよさそうに飲み干した。
21年限りで相模原(当時J2)を退団した稲本が新天地として選んだのは、関東リーグ1部の南葛SCだった。東京都葛飾区を本拠地に、将来のJリーグ入りを目指している。漫画「キャプテン翼」の主人公である大空翼が所属したチームと同じ名前だ。作者・高橋陽一氏の地元で、同氏が代表を務めている。移籍の決断に、大きな迷いはなかったという。
「一番最初に声をかけてくれたのが大きい。本当に必要としてくれていると感じたし、高橋先生のビジョンにも共感できる部分が多かった」
日本代表として82試合に出場し、海外5か国でプレー。国内でもG大阪、札幌などのクラブで成績を残してきた。国内5部相当のクラブに所属する現在の環境は、そうした過去とは大きく異なる。練習場も日ごとに変わり、クラブハウスは当然ない。だが、その環境に向き合うことへの楽しさも感じている。
「これまでとのギャップに対して文句を感じたことはない。逆に、厳しい環境だからこそ、今までより『考える』ことは増えた。体のケアも含めて、自分で何をしないといけないか、どうすればもっとよくなるのか。チームに力を還元するために、というのももちろんある」
根底には、サッカーをすることへのシンプルかつ揺るぎない思いがある。”プロ”ではないチームにいることで、新たな気づきも生まれた。
「Jリーグではないけど、サッカーしていることに変わりはない。ゴールを取りにいく、それがサッカー。ここでも、JFL昇格、将来Jクラブになるという結果を求めにいくことが楽しい。普段話すようなこともない20代前半の選手がいたり、社会人として働いている話を聞いたり。勉強になることは多いし、自分の幅はすごく広がった」
今月18日、44歳の誕生日を迎えた。27日にはともに1979年生まれとして”黄金時代”を築いてきたMF小野伸二が今季限りでの引退を発表した。JFLの沖縄SVに所属するMF高原直泰も今季限りでの引退を表明しており、「さみしい」という気持ちはあると吐露した稲本。スパイクを脱ぐ決断をする仲間が増えた一方、「今は、やれる環境がある限りやり続けたいと思う。ここまでカテゴリーを下げてもやってるから、逆に辞め時は正直わからない。でも、まだ自分の力を還元できる自信はある」と今後のキャリアについても考えを明かした。
チームは10月1日、流通経大ドラゴンズ龍ヶ崎との今季最終節を迎える。稲本は、まだまだ目の前のボールを追いかけ、ピッチを走り続ける覚悟だ。