【番記者の視点】G大阪、ルヴァン杯8強敗退「今年一番強かった」アジア王者・浦和に突きつけられた現実

◆YBCルヴァン杯準々決勝第2戦 浦和3―0G大阪(10日・埼スタ)

【G大阪担当・金川誉】

完敗だった。2戦合計0―4という結果で、事実上G大阪に残されていた今季最後のタイトル獲得への可能性は散った。0―1と敗れた第1戦後、ポヤトス監督は「この流れなら絶対勝てる」と自信を見せていたが、第2戦は違った。序盤にセットプレーから失点し、その後は焦りも逆手に取られて主導権を握れず。前掛かりとなった後半にも失点を重ね、力の差を見せつけられた。

アジア王者との差は何なのか。FW食野亮太郎は言った。「正直、今年一番強いと感じた。マリノスとかともまた違う強さだった。見えたと思います。自分たちの立ち位置が」。浦和は堅守をベースに隙を見せず、過密日程による選手温存にもチーム力は大きく落とさない選手層を持つ。そんな相手に対し、第1戦でリードを奪われ、第2戦でも先制されれば、思い通りのゲームプランに持ち込むことは難しかった。

この日は失点後も攻撃のテンポが上がらず、FW宇佐美貴史を投入してボールが循環し始めた後半も最後の質は欠いた。食野は「僕らからすると(チャンスを)探っているようにみえて、恐れているというのがあったんじゃないか。このサッカーを続ける以上、こういう展開はある。もっとボールを引き出して攻撃し続ける、奪われても即時奪回を狙う。この負けを糧にしてやっていかないと」。G大阪は主体的にボールを動かしたいチーム。隙を見せない相手を、自分たちのアクションで崩していくために必要な要素には、改善の余地が多い。

また司令塔のMF山本悠樹は、わずかな“ずれ”に苦しんでいた。アンカーとして攻守のつなぎ役となるべくピッチに立ったが「全体とつながっている感覚がしなかった」。守備時、サイドハーフが前に仕掛けてきた浦和に対し「適切なポジションを取っていれば、はがせるプレスだと終始思っていました」と言う。しかし味方との狙いだけでなく「自分の出すタイミングも、若干合っていなかった。疲労なのか(理由は)わからないですけど、見えてはいるけどずれている」という状況に陥っていた。

チームの心臓がつくりだすリズムにずれがあれば、今のチームがうまく回るはずもない。リードを奪われ、チーム全体を覆う焦りもあり、本来のリズムを取り戻せなかった。山本は言う。「うまくいっていない中でも、もう少しチームに落ち着きを与えられたら。後半は前掛かりになって雑なプレーが増えた。浦和はありがたかったはず。カウンターにいけそうな時にひとつ落ち着かせるとか、緩急を出したかった。それこそ(浦和の)岩尾選手はうまいなと思っていました」。状況に応じてチームのかじを取る敵の35歳司令塔のプレーから学びを得つつ、敗退の悔しさを受け止めた。

DF黒川圭介は、シンプルに自らの力不足をかみしめていた。「個人的にもいいパフォーマンスを出せなかった悔しさと、チームを上にいかせられなかったことに責任を感じます。相手のやり方どうこうより、自分のすべての質、そこがかみ合っていなかった」。今季主力としてピッチに立ち続けている左SBは、足に巻かれたテーピングからも、疲労や負傷を抱えながらプレーを続けていることがうかがえる。それでも「こういう時にチームを勝たせる活躍ができない。そこまでの力しかないということ。そこは真摯に受け止めないといけない」と語った。

今季ポヤトス監督を迎えたG大阪は、一時リーグ戦最下位に沈んだが現在は11位まで浮上。しかしシーズン終盤に差し掛かった今、公式戦は3試合連続無得点と、調子を落としている。課題を挙げればきりがない。スタイルの追求、その中でも修正力や緩急を加えたゲームコントロール、さらに疲労や負傷を抱えるシーズン終盤にも落ちない個の力と選手層、そしてしたたかさ。頂はまだ遠かったとは言えタイトルを逃した悔しさは、現実を思い知る機会になった。これで8年連続の無冠は確実となった。しかしポヤトス監督が語る「G大阪を元々いた場所に戻す」という目標に向け、残りのリーグ戦も無駄にするわけにはいかない。

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