サッカー日本代表、“久々に”招集しても面白いのは? ロシアW杯組にもまだまだ健在の選手
9月に行われる欧州遠征(現地9日:ドイツ代表、同12日:トルコ代表)の日本代表メンバー26人が発表された。お馴染みの面々が選出された一方、所属クラブで開幕3試合3得点2アシストの南野拓実(モナコ)、そして今季J1最多の19得点を決めて代表復帰を期待する声が大きかった大迫勇也(神戸)は選出されなかった。
親善試合のためのメンバー選考に細かい不満や指摘を並べることはナンセンスだが、チーム活性化のためには、年齢にとらわれずに好調な選手を迷うことなく選出する“瞬発力”は必要であり、大迫以外にも「久々に代表復帰して欲しい」と思える選手は多くいる。
まずは大迫とともに神戸の快進撃の原動力となっている武藤嘉紀(神戸)だ。1992年7月15日生まれの31歳。2018年のロシアW杯に出場した後、2019年1月のアジア杯で3年3カ月ぶりのゴールを決めたが、それ以来、新型コロナウイルスの影響による試合中止や自身の故障などで日本代表との縁が遠くなった。
だが、2021年8月にJリーグ復帰を果たして以降、持ち前の優れた運動能力、肉体的な強さを武器に献身的かつ効果的なプレーを継続しており、今季は右FWの位置からチャンスを作るだけでなく、タイミング良くゴール前に侵入して8ゴール9アシストと出色の働きを見せている。フィジカル面の衰えは感じさせておらず、ドイツ、イングランド、スペインと多くの経験を積んだ中で、90分を通して勝利に貢献できる“術”を身に付けている。現代表においても戦力になるはずだ。
同じくロシアW杯のメンバーに選ばれていた植田直通(鹿島)にもチャンスを与えていいのではないか。1994年10月24日生まれの28歳。空中戦の強さ、対人能力の高さを武器としてセンターバックで、鹿島でタイトル獲得に貢献した後、2018年夏に海を渡ってベルギー、フランスでプレーした。最終的にベンチ暮らしが増えて日本に戻って来たが、4年半ぶりに復帰した鹿島で今季、開幕からリーグ戦全試合にスタメンフル出場を続けながら守備の要としてリーダーシップを発揮している。
海外の屈強なFWとも渡り合える身体能力は大きな魅力で、課題の“荒さ”も経験を積んだ中で改善されて来ている。日本代表での出場は2021年9月が最後。年齢を重ねたことでひと回り大きくなっている男をもう一度、代表舞台で試してみたい。
そしてロシアW杯と言えば、乾貴士(清水)である。1988年6月2日生まれの35歳。スペイン1部リーグで6シーズンに渡って活躍し、W杯舞台でベルギー代表から得点を奪った“ヒーロー”だ。だが、2019年3月を最後に日本代表には選ばれていない。もちろん理由は分かる。年齢的にここから肉体的な成長は難しい上に、得意とする左MF(WG)のポジションは激戦区である上に三笘薫(ブライトン)というエースが誕生したからだ。
だが、今季もJ2の舞台ではあるが、7月の大分戦で長距離ドリブルから超絶ミドル弾を決めるなど“輝き”を見せている。1試合5人交代制となった今、短い時間でも試合の流れ、スタジアムの雰囲気を変えることができる優れたタレント性を持つ天才MFを、試合終盤の切り札としてベンチに置いておくのは“アリ”なのではないか。日程的な面を考えて「J2からは選ばない」とわれているが、J1昇格を果たした際にはもう一度、代表ピッチで乾のプレーを見てみたい。
さらにハリルホジッチ時代の“ホープ”だった井手口陽介(福岡)も、再び日本代表のユニフォームに袖を通してもらいたい一人だ。1996年8月23日生まれの27歳。G大阪時代の2016年11月に20歳でA代表デビュー。中盤の底から激しいプレッシングとダイナミックな攻撃参加で、W杯最終予選の“救世主”となったが、その後の海外移籍が裏目に出る形でロシアW杯メンバーから落選し、以降は怪我による長期離脱もあって不遇の時が続いている。2019年夏に復帰したG大阪で好プレーを見せて同年11月に代表復帰を果たしたが、2度目の海外挑戦も失敗に終わると、地元・福岡に戻って迎えた今季も開幕直後に右足骨折で長期離脱を強いられた。
しかし、6月に復帰してチームの5連勝に貢献した中、遠藤航に通じるデュエルの強さが戻って来ている。まだ27歳。コンディションさえ整えば代表レベルで活躍できる能力はある。井手口の“復活ストーリー”を見てみたい。
新戦力の発掘が現在の森保ジャパンの大きなテーマであり、次のW杯を見据えた際には、そのターゲットが若手になることは自然であり、仕方のないことではある。しかし、日本代表の舞台から長く遠ざかっている20代後半や30代の選手の面々の中にも、まだまだ代表レベルで活躍できるはずの選手は多くいる。科学的トレーニングや自己管理の意識や方法が広まったことで以前よりも選手寿命も伸びている今、年齢にとらわれすぎると見るべきものが見えなくなる。経験豊富なベテランたちの力をもっと利用してもいいのではないか。(文・三和直樹)