平畠啓史チョイス“至極の11人”|3人を選んだ鹿島からMVPをセレクト。カンテの喜び時間差攻撃はハマる【J1月間ベストイレブン8月】

2人分、3人分の仕事ができる毎熊

芸能界屈指のサッカー通で、J1からJ3まで幅広く試合を観戦。Jリーグウォッチャーとしておなじみの平畠啓史氏がセレクトする「J1月間ベストイレブン」。8月の栄えある11人はどんな顔ぶれになったか。

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7月後半は中断があり、移籍も活発だった印象。新しい戦力も加えたなかでのJ1の8月は4試合。GKは鹿島の早川友基。4試合で2失点。安定のパフォーマンスに加え、24節の鳥栖戦終了間際、ペナルティエリア内で鳥栖の長沼洋一がクロス。味方の舩橋佑が触り、ボールは角度を変えてゴール方向に向かった。

至近距離で角度が変わりオウンゴールの可能性もあったが、早川は素早く反応しチームを救った。早川の特筆すべきポイントはセービングの技術とともにキックの正確性。ビルドアップ時のキックが見事に味方に収まる。

相手の陣形と味方のポジショニングを即座に判断し、正確なキックで攻撃の起点となる。グラウンダーで中央を通し、浮き球で前線から降りてきたFWの胸もとへパスを送る。早川のキックの正確さはスタジアムで見たほうが分かりやすい。スタジアムで見るべきゴールキーパーの一人。

右サイドバックはC大阪の毎熊晟矢。攻撃時のポジショニングが絶妙。インサイドに入って、ジョルディ・クルークスを平行の位置でサポートし、時にはスプリントから、いわゆるポケットの位置に走りこむ。ボランチと同じ高さに立って、味方をサポートし、いつの間にかゴール前に現われる。2人分、3人分の仕事ができるサイドバックだ。

左サイドバックは名古屋の森下龍矢。働くエリアがサイドにとどまらず、ゴール前に侵入し、8月は2得点。プレーの可能性がさらに広がっている。

センターバックは鹿島の植田直通と柏の犬飼智也。対人の強さ、カバーリングの速さでディフェンスラインに堂々君臨の植田。攻撃時のCKの関川郁万、鈴木優磨、植田と居並ぶ姿は漢(おとこ)感満点。鹿島伝統のセンターバック正統後継者である。

苦しいチーム状況の柏に浦和から加わった犬飼は、ディフェンスラインだけでなくチーム全体に安心感を与えている。25節・広島戦の43分。中野就斗のシュートに対するスライディングゴールカバーは圧巻。スライディングのタイミングが素晴らしかった。

樋口の喜び方は感動的だった

ボランチはG大阪の山本悠樹と横浜F・マリノスの渡辺皓太。猛暑のなかでも渡辺の献身性は衰えるところなし。24節・FC東京戦では後半アディショナルタイムに劇的な決勝点。F・マリノスには絶対的に欠かせない選手の一人だ。

そして、ここ最近のJ1の中盤で存在感を発揮しているのがG大阪の山本。インサイドハーフもしくはトップ下あたりで持ち味を発揮。ボランチの時はパスの正確性が目立ったが、現在はその正確性に加えて攻撃センスを余すことなく披露。23節・横浜戦で見せた、黒川圭介のパスを密集で受け、ターンして食野亮太郎へラストパスの一連の流れは美しすぎた。

中盤の右には鹿島の樋口雄太。今月も2ゴール・2アシストと結果を残した。鹿島を代表する選手の一人ではあるが、24節・鳥栖戦でゴールを決めた時は古巣へのリスペクトを忘れず、喜びを控えめにしていたのが感動的だった。

感動的と言えば、横浜から広島へ移籍したマルコス・ジュニオール。愛する横浜に別れを告げ、広島での初戦となる24節・川崎戦で1ゴール・1アシスト。彼がなぜこれほどまでに愛される選手なのかを広島でも証明し、広島の人たちの心を掴んだM・ジュニオールを中盤の左に。

前線は京都の原大智と浦和のホセ・カンテ。以前よりも力強さが増した印象の原。彼が前進することでチーム全体に前向きのパワーをもたらすことができる。

そして、3試合連続ゴールのJ・カンテ。シュートを打つタイミングが絶妙でおもしろい。シュートが決まりそうだとこちらが身構える前にシュートが決まっている。あのゴールの喜び時間差攻撃はハマる。これからもどんどん狂わせてほしい。

MVPは8月唯一3勝を挙げた鹿島のディフェンスラインの顔、植田。ディフェンスラインには植田のような頼りになる漢が必要だ。

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