例年以上に混戦を極めるJ1リーグ。優勝の行方を福西崇史が占う「重要なのは勝ち切る力。それがあるのは…」

不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 第66回のテーマは、J1リーグの優勝争い。7月の中断期間が明け、いよいよ後半戦が本格的にスタート。例年以上に混戦を極める今季のJ覇権争いを福西崇史が解説する。

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先月第21節からの中断期間が明け、今月の第22節から後半戦が本格的にスタートしました。その22節ではサンフレッチェ広島が湘南ベルマーレに、ヴィッセル神戸が横浜FCに負けるなど、上位が倒れるやや波乱の再開となりました。

第23節では広島対浦和レッズ(1-0)、名古屋グランパス対鹿島アントラーズ(1-0)川崎対神戸(0-1)など、優勝を占う上で重要なカードがあり、第24節でも浦和対名古屋(1-0)、神戸対柏レイソル(1-1)など、上位対決、あるいは順位に大きく影響する結果がありました。

こうして再開後の結果を見ると、近年の横浜F・マリノスと川崎の2強時代と比べ、改めて抜きん出たクラブのない拮抗したシーズンになっていると思います。

第19節ぶりに首位に返り咲いた横浜FMは、再開後は2勝1分で結果的には好調と言えますが、昨年ほど圧倒する強さは見せられていないのは気になるところです。ただ、難しい試合を勝ち切る勝負強さはさすがだと思います。

一方、首位を明け渡した神戸は川崎に競り勝ったものの、横浜FCに負け、柏に引き分けるなど、下位に大きく勝ち点を取りこぼし、失速しています。前線のタレントが強力で、とくに大迫勇也の存在感はずば抜けているものの、そこが止められたとき、あるいは不在のときにどうするか。そこが課題というのは、横浜FC戦、柏戦で顕著に現れていたと思います。

名古屋と浦和は難しい相手が続いた中で、名古屋は2連勝したものの浦和に敗れ、浦和は横浜FMに引き分け、広島に負けたものの、名古屋に勝ったことでなんとか食らいついています。5位の鹿島は微妙なラインですが、6位のセレッソ大阪までいくとすでに9敗していて、優勝争いをするには負け過ぎている印象です。

今後、優勝争いをしていく場合、重要なのは難しい試合をいかにして勝ち切り、勝ち点3を奪うかになります。そのための駒が揃っているか、チームとしての戦い方を持っているかが問われてきます。現役時代にジュビロ磐田で優勝争いを何度もしてきましたが、勝ち切る術をどれだけ持っているかが大事でした。

下位のクラブなどはとくにそうですが、極端に守ってくるチームを相手にどうやって点を奪うか。前半から下手に攻めに行ってカウンターを受けると後々キツくなってくるので、前半はボールを回して相手を走らせて体力を奪い、足が止まってきた後半に勝負を仕掛けるとか。

あるいは僕らは良いキッカーがいたので、セットプレーが大きな武器でした。だから良い位置でファールを誘うというしたたかな戦い方も重要でしたね。そうやってゲームをコントロールしつつ、いかに自分たちの強みを出せる戦い方ができるか。

そういった意味で横浜FMは、そうした戦いに長けていると思います。前半は普通に戦いながらコントロールしつつ、後半途中から前線の選手のキャラクターをガラッと変えて、クロスを多く入れるようになったり、サイドバックが上がりっぱなしになったり。

人を変え、戦い方を変えて相手が対応できないうちに点を奪い切る。昨季はその試合巧者ぶりが際立っていました。焦れる展開でも自分たちのサッカーを貫き通せる経験値も彼らの強みでしょう。

神戸はクラブとしてJ1での優勝争いの経験はないものの、やはり経験豊富な選手を多く擁していることは大きなアドバンテージになるはずです。大迫、武藤嘉紀のほか、山口蛍や酒井高徳など、代表クラスの選手たちはプレッシャーがかかる中で、自身の落ち着きはもちろん、チームを落ち着かせるうえで大きな影響力があると思います。

その中で監督がどう策を講じることができるか。あるいはピッチの中で選手たちがどう変化をつけ、引いて守る相手から奪い切るか。タレントはいるので、そこがここから試されると思います。

名古屋と浦和も守られたときにどう奪うかというのは課題だと思います。そういった意味で名古屋は森島司、浦和は中島翔哉と安部裕葵という攻撃に違いを生み出せる選手たちを獲得しました。

冒頭でも述べたように、それでも抜きん出たクラブはないと思っています。上位が拮抗していることもありますが、下のクラブのレベルも高く、侮れないからです。

上位にいるC大阪や広島が難敵なのはもちろん、上位との対戦を残しているアビスパ福岡は前節敗れたものの公式戦7連勝と好調。G大阪も直近で7勝1分1敗と前半の苦戦が嘘かのように調子を上げてきています。神戸が横浜FCと柏に取りこぼしたように、下位が相手であっても何が起こるかわかりません。

現時点で昨季王者の横浜FMが首位に立ってはいますが、今季は例年以上にどうなるかわからない非常に面白いシーズン。今週末もどんなドラマがあるのか、ぜひ注目してほしいと思います。

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