Jリーグに「珍現象」。酷暑では“非優等生”が勝つ。その共通点とは?【Jの十字架】
明治安田生命J1リーグ第22節が行われた。日没後のキックオフでも30度近い暑さの中で行われる真夏のゲームは、サッカーのスタイルにも影響を与える。『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』の著者である“異端のアナリスト”庄司悟氏は、勝利チームの共通点をあぶりだす。(文:庄司悟)
●コンセプトすら溶かす日本の酷暑
2週間の中断期間を終え、再開されたJ1第22節は、「真夏の夜の珍現象」と呼ぶべき異変が起こった。まずは、今節の十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率、図1)を見てもらいたい。スコアレスドローだった浦和レッズと横浜F・マリノスの2チームを除けば、右側の「優等生領域」に位置する8チームは全敗だった。つまり、左側の「非優等生領域」に位置する8チームが全勝したということだ。
詳細な数字を見ていくと、勝った8チームの平均ボール支配率は40.75%、平均パス成功数は194本、負けた8チームの平均ボール支配率は59.25%、平均パス成功数は430本と、歴然の差があった。加えて、川崎フロンターレとの乱打戦(4対3)を制したガンバ大阪を除く勝った7チームはクリーンシートを達成している。さらに言えば、今節の総得点数17点は、第19節の16点に次ぐ少なさだった。
もはやホームの立ち居振る舞い、アウェイの立ち居振る舞いなどお構いなしに、「ボール保持時間を短くし、少ないパスでシュートにつなげたチーム」が勝ち点3を積み上げた現象を、どのようにジャッジすればいいのだろうか。気温を考慮した戦略的なエコサッカー……。確かに間違いはないが、これを「コンセプトの勝利」と呼んでいいのかは、実に微妙なところだ。
健康被害が出るレベルの酷暑は、各チームの「コンセプト」まで溶かしてしまうのだろうか。



