北川信行の蹴球ノート 静かな移籍期間、残り10日でサプライズはあるか…セレッソは「個人昇格」渡辺ら獲得
Jリーグの第2登録期間(ウインドー)が、8月18日に期限を迎える。ウインドーとは、いわゆる移籍市場が開いている期間のことで、選手の登録(=移籍)は一部の例外を除き、原則としてこの期間中に行われることになっている。
国際サッカー連盟は傘下の各国・地域協会に年2回のウインドーを設けることを義務付け、第1ウインドーはシーズンとシーズンの間(つまりシーズンオフ)に最大12週間、第2ウインドーはシーズン中に最大4週間の長さとするよう定めている。2023年のJリーグ(日本フットボールリーグも同様)の場合は、第1ウインドーが1月6日から3月31日、第2ウインドーが7月21日から8月18日(J1リーグの選手追加登録期限は9月8日)。秋春制を敷いている欧州の主要リーグはこの時期が第1ウインドーとなるため、6月中旬ごろから9月初めまで移籍市場が開いており、期間のギャップがJリーグがシーズン移行を目指す一つの理由となっている。
ともあれ、今季はリーグ改革の一環で、J1からJ2への降格が1チームだけという特殊事情もあり、熾烈(しれつ)な残留争いを生き残るための緊急補強を実施したクラブは今のところ少ない。こうした影響もあって、第2ウインドーは例年に比べておとなしい印象がある。第2ウインドー前の退団なども含め、シーズン中の移籍の動向を関西のJ1チームを中心にまとめてみる。
【OUT】アンドレス・イニエスタ→未定▽ステファン・ムゴシャ→仁川(韓国)▽セルジ・サンペール→未定▽寺阪尚悟(期限付き)→琉球
【IN】日高光揮(復帰)←CDアトレチコ・パソ(スペイン)
⑥セレッソ大阪
【OUT】加藤陸次樹→広島▽中原輝(期限付き)→東京V▽原川力(期限付き)→FC東京▽岡沢昂星(期限付き)→琉球
【IN】丸橋祐介(復帰)←BGパトゥムユナイテッド(タイ)▽新井晴樹(復帰・期限付き)←枚方▽渡辺りょう←藤枝▽柴山昌也←大宮
⑫ガンバ大阪
【OUT】山本理仁(期限付き)→シントトロイデン(ベルギー)▽谷晃生(期限付き)→FCVデンデル(ベルギー)
【IN】唐山翔自(復帰)←水戸
⑮京都サンガ
【OUT】メンデス→未定▽パウリーニョ(復帰)→メタリスト・ハルキウ(ウクライナ)▽アラン・カリウス→未定▽白井康介→FC東京▽イスマイラ(期限付き)→栃木▽飯田貴敬(期限付き)→大宮
【IN】原大智←デポルティーボ・アラベス(スペイン)▽具聖潤(期限付き)←札幌 ※チーム名の冒頭の丸数字は順位(8月8日現在)。
このうち、セレッソ大阪に加入した渡辺、柴山は中断期間明けの6日のFC東京戦でJ1リーグ戦デビューを果たした。京都サンガの原も同日の柏レイソル戦で途中出場。京都サンガからFC東京に移籍した白井もセレッソ大阪戦でフル出場した。このことからも明らかなように、セレッソ大阪、京都サンガの両チームは開幕後に主力級の選手が移籍。第2ウインドーを使って即戦力となる選手を補強した形だ。
とくにセレッソ大阪に加入した渡辺は産業能率大からJ3の沼津に加入し、J2の藤枝を経てJ1のセレッソ大阪へと「個人昇格」。J2大宮の育成組織出身の柴山も初めてのJ1の舞台となる。
セレッソ大阪は上門知樹(J3、J2琉球→J2岡山→J1セレッソ大阪)▽毎熊晟矢(J2長崎→J1セレッソ大阪)▽鳥海晃司(J2千葉→J1セレッソ大阪)▽鈴木徳真(J2、J1徳島→J1セレッソ大阪)らJ2やJ3でプロのキャリアをスタートさせて実力をつけ、「個人昇格」を果たした選手が主力級に多いのが特徴。同じルートをたどってきた渡辺や柴山にも期待がかかる。
FC東京戦後、渡辺は「(好機で)決めきれなかったのが今の自分のすべてだと思う。しっかりと決めきる力を磨いてチームの勝利に貢献できるようにしたい」と振り返り「できた部分も、できなかった部分も肌で感じることができた。まだまだ成長できると感じた」と強調した。今季のJ1リーグは残り12試合。新加入選手がチーム躍進のキーマンとなるか。
また、第2ウインドーはあと10日開いている。残留争いに巻き込まれた昨シーズンは積極補強を行ったヴィッセル神戸とガンバ大阪だが、今夏はいたって静か。どんな動きを見せるかも注目される。



