「泣きそうになった…」川崎サポーターと高知の選手の試合後のやり取りが「素敵な光景」と今も止まらぬ反響!横竹が「自分たちにくれた」と手から離さなかったパイナップル
川崎フロンターレは今週末の8月6日にJ1リーグ第22節としてガンバ大阪と対戦する。その試合を前にした4日でも、フロンターレサポーターからは高知での思い出に浸るSNS投稿が見られる。
■【独自撮影】「泣きそうになった…」「素敵な光景」と反響の、川崎サポーターと高知の選手の「試合後のやり取り」■
8月2日、天皇杯ラウンド16として川崎は高知ユナイテッドSCと対戦した。会場は高知県高知市。Jリーグチームがない県とあって、フロンターレサポーターも遠征では行くことのない地である。そのため、平日開催の試合ではあるが、「#フロサポ高知を叩いて勝つお」と謳って多くのサポーターが土佐の地を訪れた。
試合翌日に帰った人も多くいるが、せっかくの機会にと休みを取って高知を長めに満喫している人もいる。いずれにしても、多くの人が土佐の自然と食事に感動をしながら、試合の満足度についても触れる投稿をSNSで見せている。
満足度といっても、勝ったことだけが気持ちを満たしているわけではない。試合中の両チームの健闘、そして、試合後の川崎サポーターと高知の選手のやり取りもその要因となってる。
そのやり取りは、1-0で川崎が勝利した試合終了のホイッスルを告げたあとのことだ。高知の選手が、川崎サポーターが多く集まるゴール裏エリアの元に、監督も含めて訪れた。遠路駆け付けたサポーターの前で一列になって挨拶をする高知の選手。その健闘と姿勢に、川崎サポーターも応えた。通常は自チームの活躍した選手に贈るパイナップルをキャプテン横竹翔に渡したのである。
「ほんとうはフロンターレの選手にあげるんだけど」
そう言って手渡しすると、受け取った横竹は胸に抱えて自分たちのサポーターの元へと向かったのだった。
■横竹が離さなかったパイナップル
この様子は、SNS上で多くのコメントを呼んだ。その多くが、両チームの選手とサポーターを称えるもの。そして、サッカーや天皇杯の素晴らしさに感銘を受けたものだ。
「こういう光景が増えて欲しいなぁ。試合中は憎くても、試合が終わったらノーサイド」
「素敵な光景」
「ちょっと泣きそうになった…。」
このやり取りが、試合翌々日の4日になっても川崎サポーターが高知遠征に行った思い出を投稿させる要因の一つとなっている。
そうしたやり取りがあった後、会場で本誌記者は横竹に聞いてみた。当事者にすれば突然だったに思えるパイナップルをもらって、どう思ったのかと。
それまで神妙な面持ちを見せていた横竹は質問を聞いた途端、「いやあ(笑)」と屈託のない笑顔を見せた。そして、こう口を開いた。
「ふだんは、フロンターレの選手にあげているっていうのを聞いたので、それを自分たちにくれたというのは認めてくれたというか、称えてくれたと思うので、自信を持ってこれからのリーグ戦につなげていきたいなと思います」
「率直に悔しいですね」と試合結果について振り返った選手にとっても、特別な思い出となっていた。実際、試合終了からかなりの時間が経っていたにもかかわらず、一度、ロッカールームに入っていたと思われるタイミングなのだが、それでもずっと胸にパイナップルを抱えていたのだ。
■土佐日記とUFOキャッチャーと
川崎と高知が次にどのタイミングで試合をするか、しかもそれが公式戦となれば、最速で来年の天皇杯以外にはないだろう。ただし、同じ組み合わせとなる確率は極めて低い。極めて遠い縁かもしれないが、袖振り合う以上に濃厚なこの90分とパイナップルはそれぞれの胸にしっかりと刻まれたはずだ。
多くの人がその名前を知る『土佐日記』の成立は930年代で、実に1100年近くも受け継がれている。その有名な冒頭から始まる物語は紀貫之が高知を旅立つ場面から始まり、京に帰る途中の出来事や縁をユーモアたっぷりにまとめた紀行文で、フロンターレサポーターがSNSに投稿している高知遠征と同じものである。
川崎の選手にすなるパイナップル贈呈といふものを 高知の選手にもしてみんとてするなり
ゴール裏で始まった今回の物語は、いつかの再会に向けてきっと語り継がれる。そして、また春野を舞台に戦う日が来れば、きっと多くのフロンターレサポーターが土佐を訪れるはずだ。「#フロサポ高知を叩いて勝つお」のハッシュタグと、川崎スタッフが用意するであろう「絶対に取れないUFOキャッチャー」の遠征地グッズとともに。



