「J1残留争い」も正念場 夏の補強の“効果”は? リーグ再開後に浮上の気配あるチームも
連日にわたって熱中症警戒アラートが発表される中、J1リーグ再開の時が近づいてきた。全チームが34節中21節まで終え、神戸と横浜FMが激しい首位争いを繰り広げる一方で、下位では残留争いが数チームに絞られてきている。来季からの各カテゴリー「20チーム」統一のために今季のJ2降格クラブは「1」のみ。果たして脱落する危険性があるのは、どのチームなのか。
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7月を終えて最も危険な最下位に沈んでいるのは湘南だ。勝点13(2勝7分け12敗、26得点44失点)。開幕当初こそアグレッシブな戦いぶりで第1節の鳥栖戦(○5-1)、第6節のG大阪戦(○4-1)と大勝したが、今季リーグ戦の白星はその2試合のみ。現在15試合未勝利で、その間の成績は5分け10敗。第18節の鳥栖戦(●0-6)から浦和戦(●1-4)、横浜FM戦(●1-4)とダメージの残る大量失点ゲームが続いた。
その中で今夏、エースのFW町野修斗が海外移籍した。だが、現チームの最優先課題は守備であり、ベルギーから若手ホープのMF田中聡を復帰させ、鹿島からは経験豊富なDFキム・ミンテを獲得。さらにクラブOBの名塚善寛氏をトップチームのコーチとして招聘した。FWにも清水からディサロ燦シルヴァーノを獲得しており、フロントの必死さは伝わってくる。あとはその“効果”をすぐに出せるかどうか。リーグ戦再開初戦の8月5日の広島戦は、今後の流れも決める非常に重要な一戦になる。
湘南とわずか勝点1差の17位にいるのが柏だ。勝点14(2勝8分け11敗、18得点33失点)。開幕6戦未勝利スタートから調子が上がらず、5月13日の第13節・横浜FC戦(●0-1)に敗れてネルシーニョ監督が退任し、井原正巳ヘッドコーチが監督に昇格した。だが、新体制になっても得点力不足の課題は解消できず、第16節の札幌戦(●4-5)、第17節の横浜FM戦(●3-4)と久々に複数得点を奪えば大量失点する悪循環。現在10試合未勝利(4分け6敗)という状況だ。
浦和から獲得した経験と実績のあるセンターバック・犬飼智也の加入でチームがどう変わるか。開幕前の故障で長期離脱していたDFジエゴが7月に入って復帰しており、戦力は整ってきている。MFマテウス・サヴィオ、FW細谷真大とタレントはいるだけに、夏の中断期間をキッカケに一気に浮上する可能性はある。まずは8月6日の京都戦に注目だ。
そして現在16位にいるのが、J1昇格1年目の横浜FCだ。勝点15(3勝6分け12敗、15得点41失点)。開幕10試合白星なし(3分け7敗)の超低空飛行からは抜け出したが、まだまだ安心できる位置にはいない。第13節の柏戦(○1-0)、第14節の川崎戦(○2-1)の連勝は見事だったが、その勝利を最後に、気が付けば7戦未勝利(3分け4敗)と再び飛行高度が低下しているからだ。
そして今夏、エースFW小川航基が海外移籍したことが痛手だ。だが、その小川も中盤戦以降は停滞していたことも事実であり、代わりにワントップとして期待されるFWマルセロ・ヒアンが爆発すれば問題ない。パワーとスピードを兼ね備えるブラジル人ストライカー。21歳と若いが、若い分だけ一気にブレイクする可能性がある。チーム全体のしぶとさも出てきているが、まず8月の早い段階で引き分けではなく勝利が欲しい。
現状、湘南、柏、横浜FCの3チームが勝点2差の中にあり、毎節、順位が入れ替わる可能性が大いにある。そして、その上の2チーム、京都と新潟も安心してはいられない。
15位の京都は、ここまで勝点23(7勝2分け12敗、24得点31失点)。序盤戦こそ3連勝をマークするなど飛躍を期待させる戦いを見せていたが、第9節から第16節まで8戦未勝利(1分け7敗)と低迷した。だが、第17節から中断前の第21節までの5試合は3勝1分け1敗と復調しており、さらに今夏の移籍期間で将来の日本代表入りも期待されている長身FWの原大智と元韓国代表GKク・ソンユンの即戦力2人を獲得し、楽しみが増えている。まずは再開初戦、8月6日の柏戦でしっかり勝ち切りたいところだ。
14位の新潟は、ここまで勝点24(6勝6分け9敗、22得点29失点)。こちらも序盤戦に勝点を積み上げた後、第9節から第18節までの10試合を1勝3分け6敗と苦しんだ。だが、中断前の3試合を2勝1敗で終えたことは大きなプラスだ。最大の課題が、MF伊藤涼太郎の抜けた穴をどう埋めるか。最適任者のMF高木善朗の相次ぐ故障が悩ましい。代わりにMF三戸舜介がトップ下でまずまずのパフォーマンスを披露したが、果たして再開後はどうするのか。今夏に群馬から補強した23歳FW長倉幹樹の抜擢はあるのか。松橋力蔵監督の選択と手腕が注目される。
すでにリーグ戦の半分を消化し、残りは13試合となっている。夏の移籍によってチーム力の変化も予想される中、まずは8月の4試合をどう戦うか。そこで連続して勝ち切れるチームが出てくれば、一気に残留争いから抜け出すことは可能だ。その反対に連敗すれば、暑さも相まって精神的に苦しくなる。勝負の秋を迎える前の「夏」こそが、正念場だ。(文・三和直樹)



