なぜ本拠地サン・マメスに宿敵ソシエダのロゴが? 出会った少年が久保建英を「嫌い」な理由は…【ビルバオを巡る旅|前編】

「隣の13番に相手チームの会長が座るんです」

久保建英の所属するレアル・ソシエダの試合を観にサン・セバスティアンを訪れるなら、同じスペイン北部のバスク地方にあるビルバオにも足を運んでみてはいかがだろうか。

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バルセロナ、レアル・マドリーの2大クラブと並び、ラ・リーガで2部に降格したことがないことで知られるアスレティック・ビルバオのホームタウンは、造船業や鉄鋼業が衰退してから観光の街に生まれ変わった。

町並みは綺麗で、食事も美味しく、観光スポットも豊富。訪れるのは2回目になるが、「オススメの街」だ。

ビルバオのホームスタジアムであるサン・マメスは、街の中心部から、地下鉄や路面電車で10分ほどで移動できる。スタジアムツアー(大人14ユーロ、ガイド付き20ユーロ)では選手が使用するロッカールームや記者会見室、VIP席が見学できた。

VIP席から下を見下ろすと、アウェー側のベンチのところに「RESPECT」の文字とライバルクラブであるレアル・ソシエダのロゴが。いったいなぜ?  これはアウェーチームに敬意を表わすためのもので、ロゴは対戦相手によって張り替えるのだという。たまたま見学したのがソシエダとのバスクダービーの後だったため、宿敵のロゴがあったというわけだ。

そんな話を訊いた後に、「VIP席では、ビルバオの会長は必ず14番の席に座り、隣の13番に相手チームの会長が座るんです。13番は不吉な番号ですからね(笑)」との説明が。「RESPECT」とのギャップに思わず笑ってしまった。

ビルバオとソシエダのダービーでは、それぞれ赤白と青白のユニホームを来たファンが、隣に並んで一緒に観戦しているシーンをよく見かける。

「健全なライバル関係です。例えば、レアル・マドリー対バルセロナのエル・クラシコのように憎悪をむき出しにするということはありません」

そんな女性スタッフの言葉が印象的だった。

サン・マメスのスタジオツアーでは併設されている博物館にも入館できる。ラ・リーガ7回、コパ・デル・レイ23回の優勝を誇る名門だけに、とりわけトロフィールームには圧倒された。

これまで在籍した全選手の顔写真が飾られたコーナーでは、ガンバ大阪でもプレーしたマルケル・スサエタを発見。日本では思ったような活躍ができなかったが、インタビューをした時の生真面目そうな姿が思い出された。

「タカシ・イヌイ、タカシ・イヌイ」と声を掛けてくる少年が

サン・セバスチャンと同じく、美食で知られるビルバオの旧市街にはそれぞれ違ったピンチョス(おつまみ的な料理)を出すバルが立ち並び、手軽に逸品を味わえる。バスク地方で作られているさっぱりとした口あたりのチャコリ(ワイン)とともに、食事を楽しんでみては。

ヌエバ広場には、いい雰囲気のバルやレストランが集まっており、そこでお店を見つけるのもいいかもしれない。「バスク州観光局」が紹介してくれた、その一角にある「VICTOR MONTES」ではイカやキノコなど、地元の食材を使った料理を堪能できた。

食事をしてから、散歩がてらサン・マメスに向かうと、目の前の空き地で高校生ぐらいの男子6人がボールを蹴っていた。自分の姿を見ると、そのうちの一人が「タカシ・イヌイ、タカシ・イヌイ」と声を掛けてくる。

そこで、「タケ・クボについてどう思う?」と尋ねてみた。おそらくビルバオのファンである彼らは、ライバルクラブのソシエダに所属する日本人選手にいい印象を持っていないだろうが…。

案の上、「いい選手だけど、嫌いだね」とひとりが言った。「ダービーでゴールを決められたから?」と訊くと、「ラ・レアルでプレーしているからだよ。ダービー? 2-0で勝ったよ」との返答。「その前のダービーだよ。タケが決めたよね?」と突っ込むと、「そんなの知らないなぁ」ととぼけていた。

ちなみに「タカシ・イヌイ」と連呼していた少年はエイバル出身とのこと。地元のエイバルで活躍した乾貴士(現・清水エスパルス)を今でも忘れていないようだ。

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