パリ五輪世代Jリーガー「NEXT欧州組候補」 注目6人厳選…柏エースは“即挑戦”可能レベル【コラム】
欧州挑戦レベルに値するパリ五輪世代の人材をピックアップ
近年Jリーグから欧州クラブへ活躍の場を求める日本人タレントはあとを絶たず、国内にはその“予備軍”が控える。「FOOTBALL ZONE」ではその顔ぶれを今一度おさらいすべく「NEXT欧州組」特集を展開する。このコラムではパリ五輪世代の人材をピックアップ。すでに斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)などが欧州を舞台に戦っており、今回は半年で戻ってきたが、鈴木唯人(RCストラスブール→清水エスパルス)がフランスのリーグ・アンに挑戦した。ここからどういった選手がJリーグから海外に旅立って行くのか。筆者の目線で欧州挑戦をしたら興味深いタレントをそれぞれ【即戦力】と【成長中】で分け、幅広くピックアップした。なお松木玖生(FC東京)に関しては繰り返し取り上げてきているので、当然候補ではあるが、今回は対象外としている。
【動画】「ほんとに17歳?」 熊本FW道脇豊、途中出場からチームを勝利に導いた2ゴールの瞬間
【即戦力】
■細谷真大(FW/柏レイソル)
2001年9月7日生まれ(21歳)
パリ五輪世代のエース候補であり、最も海外移籍に相応しい実力を示している1人であることは間違いない。チームは下位に沈んでいるが、今季J1リーグ第21節までで7得点を記録しており、相手ディフェンスにも脅威となっている。チームを勝たせる絶対的なエースになるというのが細谷のモットーだが“チームを勝たせる”という基準ではまだまだ達しているとは言い難い。
1枠だけ降格する今シーズン、現在17位に沈む柏は残留が現実目標になってきている。現時点でも海外移籍のチャンスを生かせるポテンシャルは十分なだけに、来夏のパリ五輪、さらに3年後の北中米ワールドカップを見据えてどういう選択をしていくかは注目だ。
■半田 陸(DF/ガンバ大阪)
2002年1月1日(21歳)
スコットランド1部ハーツからのオファーが伝えられるなど、今夏の欧州移籍への動向が注目されていた半田だが、7月14日の練習中に左腓骨骨幹部骨という大怪我を負い、まずは回復とG大阪での完全復活、そしてパリ五輪に良い状態で臨むことが先決になるだろう。
サイドの1対1に強く、タイミングの良い攻め上がりからボールを失えば、即時奪回やリトリートでもスペシャリティーを発揮する。モンテディオ山形時代にはピーター・クラモフスキー監督(現・FC東京監督)からビルドアップのポジショニングを学び、ダニエル・ポヤトス監督が率いるG大阪でも生かされている。戦術適応力の高さは海外でも強みになるはずだ。
■川﨑颯太(MF/京都サンガF.C.)
2001年7月30日(21歳)
中盤の底から攻守にわたり、存在感あるプレーを見せている。6月にA代表初招集を受けたが、直前に負傷した影響もあり、代表初キャップを踏むことはできなかった。それでも大きな刺激を受けた様子で、ここからの飛躍的な成長が楽しみな選手だ。ここ最近の京都では金子大毅が“ホールディングセブン”と呼ばれるアンカーの位置で起用されるケースから、インサイドハーフで使われる試合もある。
現在は立命館大での学業を両立させており、今夏の海外移籍はないと考えられるが、パリ五輪予選から本大会まで、中盤の軸として活躍していければ注目度は上がるはず。ただ“京都愛”の強い選手でもあるので、個人の成長とクラブにどう還元できるかというのは判断基準になっていくだろう。
U-17アジア杯で躍動の道脇は、飛び級枠としてピックアップ
【成長中】
■三戸舜介(MF/アルビレックス新潟)
2002年9月28日(20歳)
俊敏性なボール捌きとゴールに向かう明確なビジョンで相手ディフェンスを掻き回しながらゴールに迫る。現在2得点2アシストだが、それ以上にゴールに絡んでいるシーンは多い。序盤戦は左サイドハーフ、5月以降は右サイドハーフがメインだったが、伊藤涼太郎がベルギー1部シント=トロイデンに移籍。そこから4-2-3-1のトップ下を担い、サイドとはまた違った多彩なプレーを見せている。
彼の場合もパリ五輪というのが1つキャリアの分岐点になると考えられる。しっかりと新潟で試合に出続け、インパクトを残していけばパリ五輪のメンバー入りはもちろん、その先の道も開かれるだろう。
■佐野航大(MF/ファジアーノ岡山)
2003年9月25日(19歳)
鹿島アントラーズの主力MF佐野海舟を兄に持つ。左サイドをメインにボランチやアタッカーもこなせるポリバレントなタレントでありながら、右足の正確なキックという武器を持っている。スペースを見出せば、素早く持ち出してチャンスメイクできるセンスも高いものがある。
年代別代表でも存在感を放ち、今年5月のU-20ワールドカップでは3試合で確かなインパクトを残したが、チームはグループリーグ敗退。自身のミスから失点につながったことを悔やんでいたが、しっかりと前を向いている姿が帰国後のJ2で見られる。現在9位の岡山は自動昇格から勝ち点10差、昇格プレーオフ圏内から同5差という状況にあるが、ゴールに絡むプレーで、チームを軌道に乗せていくことができるか。
■道脇 豊(FW/ロアッソ熊本)
2006年4月5日(17歳)
2028年のロス五輪世代ではあるが、飛び級枠としてピックアップ。高校2年生ながら熊本とプロ契約している逸材で、U-17アジア杯では前線の主軸として攻撃を引っ張り、4得点を記録した。アジア王者として、11月にインドネシアで行われるU-17ワールドカップの切符を掴んだ。チームメイトの名和田我空(神村学園)が5得点を挙げており、その点の悔しさはあるが、世界に向けて確かな手応えを得たはずだ。
もともと、裏抜けばかり意識していたというところから大木武監督の熱心な指導で、体格を生かすポストプレーやヘディングシュートにも磨きをかけている。まずは熊本で出場時間を増やしながら、世界での活躍につなげていきたい。本人は飛び級でのパリ五輪も目指しているが、1年上の後藤啓介(ジュビロ磐田)を超えるべき存在として挙げる。2年後にはU-20ワールドカップも控えており、どういう状況で迎えるか注目だ。
[著者プロフィール]
河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。