借りパク注意! レンタル先で大活躍中のJリーガー10人。武者修行でパワーアップ中なのは?

2023シーズンの明治安田生命Jリーグは前半戦が終了した。各クラブの目標も明確になりつつある中、レンタル移籍で武者修行中の選手の活躍も気になるところだ。今回は、レンタル先で大活躍しているJリーガーを10人紹介する。※成績は17日時点の『transfermarkt』を参照。

MF:齊藤未月(ヴィッセル神戸)

生年月日:1999年1月10日(24歳)

レンタル元:湘南ベルマーレ

今季リーグ戦成績:18試合0得点1アシスト

年代別の日本代表でキャプテンも務めた齊藤未月は、3年連続で湘南ベルマーレからのレンタル移籍を経験している。一昨年に加入したルビン・カザンでは怪我にも泣かされ不完全燃焼に終わったが、昨年に加入したガンバ大阪で復活。そして、今季より所属するヴィッセル神戸では、大迫勇也や山口蛍といった多くの日本代表経験者に囲まれながら持ち味を発揮し、大きく成長した姿を見せている。

神戸では“心臓”とも言えるアンカーで活躍中。166cmという小さな体からは想像できない球際の強さと豊富な運動量を武器に最終ラインをサポートするだけでなく、機を見たダイナミックな前線への飛び出しでも存在感を放つなど、攻守においてチームのハイインテンシティーを支えている。まだ24歳と若いが、キャプテンシーも申し分なく、まるで古参選手かのような雰囲気すらある。

前半戦はなかなか降格圏から抜け出せず、最終的に13位フィニッシュと不振に陥った昨季の神戸だが、今季は一転して優勝争いに絡んでいる。今夏に退団したアンドレス・イニエスタのためにもタイトルを勝ち取りたいところで、そのためには引き続き齊藤の活躍が不可欠となるはずだ。

FW:キャスパー・ユンカー(名古屋グランパス)

生年月日:1994年3月5日(29歳)

レンタル元:浦和レッズ

今季リーグ戦成績:21試合11得点2アシスト

2021年に浦和レッズの一員となったキャスパー・ユンカーは、加入後すぐに結果を残し、一瞬にしてサポーターのハートを射抜いた。しかし、昨季は細かい怪我を繰り返した影響もあって、前シーズンからゴール数、プレータイム数ともに減らすなど、周囲の期待に応えることができず。来日3年目の今季は心機一転、レンタルで名古屋グランパスに身を置くことになった。

そのユンカーは、昨季の鬱憤を晴らすかのように新天地で躍動している。第1節の横浜FC戦でさっそく決勝ゴールをマークすると、その後もハイペースにゴールネットを揺らしていき、第19節の川崎フロンターレ戦を終えた時点で早くもリーグ戦2桁得点に乗せた。現得点ランキング1位のアンデルソン・ロペスの勢いは凄まじいが、十分にトップの座を狙えるだろう。

崩しの核であるマテウス・カストロに昨季ほどの元気がない中でも、名古屋が安定して勝ち点を拾えているのは、やはり新エースであるユンカーの存在が大きいと言えるはず。ここまで懸念されていた長期離脱がないのもポジティブな要素であり、今後どこまでゴール数を伸ばしていくか楽しみだ。

FW:森海渡(徳島ヴォルティス)

生年月日:2000年6月7日(23歳)

レンタル元:柏レイソル

今季リーグ戦成績:21試合9得点1アシスト

「天皇杯ではゴールを決めてしまい申し訳なかったです。次はヴォルティスの為に沢山のゴールを決めます」。今季、さらなる成長のために柏レイソルから徳島ヴォルティスへのレンタル移籍を決断した森海渡は、自身のSNSにて新天地での活躍を誓っていた。ここまでは、その言葉通りのパフォーマンスを示していると言っても過言ではないだろう。

185cmの大型ストライカーは、開幕スタートダッシュにこそ躓いたものの、第12節のジュビロ磐田戦で移籍後初ゴールをマークするとスイッチオン。5月に行われたリーグ戦6試合では6ゴールを奪取と爆発し、同月のJ2リーグMVPに輝いた。6月にも2試合連続ゴールを決めており、現時点での総得点数は「9」に。自身初の2桁ゴール到達は時間の問題と言っていいだろう。

森の魅力はシュートセンスの高さとフィニッシュへの高い意識だ。巨体から放たれるボールはパワー、コースともに申し分なく、どの位置からでもGKを脅かすことができる。第20節の栃木SC戦では、クロスバー直撃のパワフルなミドルシュートで観る者の度肝を抜いた。

DF:藤原優大(FC町田ゼルビア)

生年月日:2002年6月29日(21歳)

レンタル元:浦和レッズ

今季リーグ戦成績:16試合0得点0アシスト

高校卒業後の2021シーズンに浦和レッズへ加入した藤原優大だが、ここでの出番は限定的で、同シーズン途中にSC相模原にレンタル移籍し、昨季も引き続き同クラブでプレーした。そして迎えた今季は、青森山田高校時代の恩師でもある黒田剛監督率いるFC町田ゼルビアにレンタル加入している。

藤原は当初センターバックの3番手以下という位置付けで、ほとんど出番を得られなかった。また、初先発を飾った第9節のジュビロ磐田戦で山田大記を突き飛ばす愚行に及び、一発退場を命じられるなど散々だった。それでも、同じCBの池田樹雷人が負傷してからはフル出場を継続。チャン・ミンギュとのコンビで、ここまでのJ2リーグ最少失点&首位独走を支えている。

レンタル元の浦和にはマリウス・ホイブラーテンとアレクサンダー・ショルツという鉄壁の2人が存在。そんな彼らに並ぶパフォーマンスとまでは言えないが、J2リーグ首位を走るクラブで経験を積めているのは藤原にとって大きいはず。引き続きピッチに立ち続け、巨漢FWフアンマ・デルガドを封じるほどの対人守備や足元のスキルなどにより磨きをかけたいところだ。

GK:一森純(横浜F・マリノス)

生年月日:1991年7月2日(32歳)

レンタル元:ガンバ大阪

今季リーグ戦成績:18試合23失点

ベテランの一森純は、2023シーズン開幕直後の2月下旬に高丘陽平を失った横浜F・マリノスに期限付きで移籍を果たした。2020年から過ごしたガンバ大阪でほとんどピッチに立てていなかったが、一森は自らの力をピッチで存分に発揮している。移籍後初先発を飾った第3節以降、リーグ戦の欠場はわずか1試合のみだ。

移籍当初はやや不安定なプレーも見られたが、試合を重ねるごとにマリノスのスタイルに馴染んでいった。セービング能力はもちろんのこと、やはり目を見張るのがビルドアップの貢献度で、視野が広く、狙った場所へピンポイントで届けるキック精度が光る。形勢を一気に変える勝負パスも多く、リスキーなだけにミスにつながることもあるが、恐れず狙い続けるメンタリティーも見事だ。

第20節の名古屋グランパス戦では神プレーが炸裂。シュートをキャッチした一森は素早く低弾道のパントキックを繰り出し、相手の背後へ抜けたエウベルの得点をお膳立てしている。G大阪で2番手以下だった一森に目をつけレンタルで獲得したクラブ、その期待に応えている一森。両者あっぱれだ。

MF:梶浦勇輝(ツエーゲン金沢)

生年月日:2004年1月2日(19歳)

レンタル元:FC東京

今季リーグ戦成績:24試合0得点2アシスト

今後のさらなる成長が楽しみな逸材の1人だ。FC東京のアカデミーで育った梶浦勇輝は、一昨年に17歳でトップチームデビューを果たすと、昨季正式にトップチームへ昇格。第20節の北海道コンサドーレ札幌戦ではJ1デビュー戦ながらフルタイムプレーし、3-0の快勝に大きく貢献していた。

今季は育成型期限付き移籍でツエーゲン金沢に加入。ここまでリーグ戦24試合に出場、1931分プレーするなど不動の地位を確立しており、中盤底で攻守のタスクをこなし続けている。相手の嫌な位置でボールを受けて捌く技術が高く、171cmと小柄であることを忘れさせるほどの球際の強さ、運動量、守備範囲の広さを誇るなど、19歳とは思えぬほど武器は豊富だ。

なにより素晴らしいのがパフォーマンスの波が小さいこと。第21節の水戸ホーリーホック戦でマン・オブ・ザ・マッチの証でもある“勝ちユニ”に選出された際に、サポーターの「ようやく」や「遅すぎるほど」という言葉がちらほら見受けられたほど、今季のプレーは安定している。この勢いが継続されるとなれば、当然ながらレンタル元のFC東京が放っておかないだろう。

FW:荒木駿太(FC町田ゼルビア)

生年月日:1999年10月24日(23歳)

レンタル元:サガン鳥栖

今季リーグ戦成績:25試合5得点2アシスト

駒澤大学4年次にインカレMVPに輝いた荒木駿太は、2022シーズンにサガン鳥栖へ正式加入したものの、1年目の成績は凡庸。J1リーグ出場はわずか12試合に留まっており、そのほとんどが20分未満のプレーとアピールするには不十分だった。迎えたプロ2年目の今季は、さらなる経験を積んで成長するべく、FC町田ゼルビアにレンタル移籍している。

黒田剛監督率いるチームでは当初、ジョーカーとして躍動。3月にはいずれも途中出場ながらリーグ戦3試合連続ゴールをマークするなど申し分ない働きを披露していた。第9節のジュビロ磐田戦で移籍後リーグ初先発を飾って以降はスタメン起用の頻度が増加しており、ここまで25試合5得点2アシストという成績でチームの首位快走をサポートしている。

荒木は限られた時間でも結果を残す勝負強さもさることながら、守備の貢献度も高く、豊富な運動量を活かした強烈なプレスを絶え間なくかけ続けている。守備を第一に勝利を目指していく黒田監督のチームにおいて、23歳の献身性が今後も欠かせないものとなるだろう。

MF:小原基樹(水戸ホーリーホック)

生年月日:2000年3月9日(23歳)

レンタル元:サンフレッチェ広島

今季リーグ戦成績:24試合4得点2アシスト

2000年生まれの小原基樹は、2022シーズンに東海学園大学から愛媛FCに加入。ルーキーイヤーながら背番号10を身につけ、J3リーグ30試合の出場で4得点6アシストをマークした。その活躍や将来性を評価されたか、同シーズン終了後にサンフレッチェ広島へとステップアップ。2023シーズンは期限付き移籍という形で水戸ホーリーホックでプレーしている。

全国からドリブラーが集まる聖和学園の出身ということもあり、小原はドリブルに絶対的な自信を持っている選手だ。身長170cmと小柄な分、俊敏性に優れており、細かなタッチも駆使しながら対峙したDFを着実に無力化している。今季ここまでのリーグ戦におけるドリブル成功数はチーム内ダントツの42回を数えており、主戦場とする左サイドから違いを作り続けている。

とくにカットインの鋭さは非凡で、今季は第15節の栃木SC戦、第20節のジェフユナイテッド千葉戦と似たような中への切り込みからゴールを奪っていた。昨季はJ3、そして今季はJ2で存在感を放つ小原。来季は自身初のJ1挑戦となるだろうか。

GK:波多野豪(V・ファーレン長崎)

生年月日:1998年5月25日(25歳)

レンタル元:FC東京

今季リーグ戦成績:26試合29失点

FC東京のアカデミーで育った波多野豪は、2017年にトップチームに昇格。その後しばらくは出場機会の確保に苦しんだものの、2020シーズン後半戦に守護神の座に躍り出ると、翌2021シーズンはレギュラーとしてリーグ戦31試合に出場した。しかし、昨季にヤクブ・スウォビィクが加入したことで序列が低下。今季は初めてFC東京を離れ、V・ファーレン長崎にレンタル移籍している。

198cmという日本人離れした体格を誇る波多野は、ここまでリーグ戦全試合に出場中。セーブ数は69回で白井裕人(ツエーゲン金沢/83回)、櫛引政敏(ザスパクサツ群馬/77回)に次ぐリーグ3位、セーブ成功率は全体トップ10の71.9%と安定したパフォーマンスを示し続けている。6月にはファン・サポーターが選ぶ月間MVPに選出されていた。

今季リーグ戦26試合を消化した時点で、長崎の被ゴール期待値(xGA)は33.186となっており、実際の失点数は29となっている。この要因は様々あるが、波多野の好守もその1つと言えるだろう。明るい性格の持ち主で、ムードメーカーでもある大型GKを、長崎は返したくないはずだ。

MF:井手口陽介(アビスパ福岡)

生年月日:1996年8月23日(26歳)

レンタル元:セルティック(スコットランド)

今季リーグ戦成績:9試合0得点0アシスト

1度目の海外挑戦が失敗に終わるも、その後古巣のガンバ大阪で復活した井手口陽介は、昨年にセルティックへ移籍し、自身2度目の海外挑戦を果たした。しかし、ここでは怪我に泣かされてしまい、在籍2年目は公式戦で1度もピッチに立つことができず。またも異国の地でのチャレンジが失敗に終わった井手口は、今季よりアビスパ福岡に身を置き、再起を図っている。

その井手口は、第3節の柏レイソル戦で負傷し、いきなり3ヶ月の長期離脱を強いられるなど厳しい新天地でのスタートとなった。それでも6月の古巣・G大阪戦で戦列復帰して以降は、激しいボール奪取に豊富な運動量を駆使したカバーリング、タメを作るターン、強烈なミドルシュートなど、攻守において好パフォーマンスを披露しており、福岡の中盤の質をより高めている。

長谷部茂利監督も井手口を高く評価している。第21節の湘南ベルマーレ戦後には「全員に同じことをしていないが、彼(井手口)には高いレベルでオーダーしている」と言葉を残していた。かつて日本代表の中心を担ったMFは、再びJリーグで復活を遂げつつある。

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