ガンバ大阪が最下位から急浮上も危機的状況を脱したと言えるのか
ガンバ大阪は危機的状況から脱したのか――。
その問いにすぐさま答えを出すのは難しい。
J1第19節、G大阪は敵地に乗り込み、横浜FCと対戦。0-0の引き分けに終わった。
このスコアレスドローで、G大阪は前節まで続いていた連勝が4でストップ。内容的に見ても、それほど多くのチャンスを作り出すことができなかった試合は、4連勝中の勢いを感じさせるものではなかった。
「無失点で終えられたことはよかったが、ドローに終わった結果には満足していない」
G大阪を率いるダニエル・ポヤトス監督は、そう言って強がったが、特に試合終盤は横浜FCの猛攻にさらされ、いつ失点してもおかしくないようなピンチが続いていた。それを思えば、勝ち点1を確保できたことは、むしろ喜ぶべき結果だったかもしれない。
シーズンの折り返し地点をすでに過ぎた今季J1において、G大阪は”出入りの激しいサッカー”を続けている。
開幕戦から6試合連続で勝ちがなく、第7節でようやく初勝利を挙げるも、その後は再び7戦勝利なし。その間には5連敗を喫し、一時は最下位に転落した。
ところが、不振のG大阪が突如目を覚ましたのは、第15節のことだ。アルビレックス新潟に3-1と勝利して、連敗を5で止めるや、そこから怒涛の4連勝。18クラブのなかで一番下だった順位も、一気に14位まで上昇した。
4連勝の要因をひと言で言えば、ボール保持にこだわらなくなったことだろう。
昨季より、G大阪はボールを握って試合を進める、より攻撃的なスタイルへの転換を図ってきた。昨季の片野坂知宏監督にしろ、今季のポヤトス監督にしろ、招き入れた指揮官からも、G大阪がどんなスタイルを目指しているかは、はっきりとうかがえる。
しかしながら、このスタイル転換は、2シーズンにわたってうまく進んでいない。
昨季はJ2降格すら目の前にちらつく下位低迷が続き、片野坂監督を解任。最悪の事態こそ免れたものの、今季新たにポヤトス監督が就任してもなお、(少なくとも第14節までは)大きく事態が好転することはなかった。
だからこそ、ポゼッションスタイルを志向するスペイン人指揮官も、従来の発想にメスを入れる必要があったのだろう。ボールを握ってゲームを進めることに固執せず、相手守備の背後をシンプルに狙う。そうしたリスク回避重視の攻撃を増やすことで、事態の改善を図った。
結果的に、これが功を奏した。
そもそもG大阪は、歴史的に見ても、例えば2014年シーズンの三冠達成時がそうであったように、前線に能力の高い点取り屋を配し、手数をかけることなく一気に攻めきることができた時、強さを発揮するチームだ。それを考えれば、この4連勝は原点回帰の賜物と言えるのかもしれない。
ひとまず、G大阪は危機的状況を脱した……ように見えた。
だが、言い方を変えれば、それは急場しのぎの策を施したにすぎない。
本来G大阪が目指していたのは、もっとボールを保持して相手を押し込み、ボールを失ったとしてもすぐに奪い返す。そうやって敵陣で攻守を繰り返すサッカーだったはずだ。
実際4連勝中にも、そうした展開を作れる時間帯がなかったわけではない。左サイドバックのDF黒川圭介が決めた2ゴール(第15節の新潟戦、第18節の鹿島アントラーズ戦)などは、目指していたスタイルが形になったものだと言っていいだろう。
だとすれば、その時間をもっと長くしたい。指揮官はもちろん、ピッチ上の選手たちが、そんな気持ちを抱えていたとしても不思議はない。
ようやく結果がついてくるようになり、順位も上昇。確かに、大きく”現実”へと傾いていた針を”理想”の側へと引き戻すチャンスを迎えていたのかもしれない。
しかし、それは決して簡単な作業ではないと思い知らされたのが、横浜FC戦だったのではないだろうか。
ポヤトス監督が試合後の会見で、「正確性が足りなかった」という言葉を何度か繰り返していたように、この試合のG大阪はパスミスが多かった。
なかでも目立っていたのは、意図のズレ。キックやトラップなどの技術的なミスというより、出し手と受け手の狙いがズレることで起きるパスミスだった。
DF半田陸は、「受け手は背後にアクションを起こして、出し手は足元に(パスを)出して、そこから(ボールを奪われて)カウンター(を受ける)ということがだいぶ多かった」と語り、こう続ける。
「パスを出す僕らも、(最近4連勝と)うまくいっているから(ボールを大事につなごうと)足元、足元ってなっていたのかもしれない。もっと背後のアクションを増やすべきだし、そういう人がいないとスペースも空かない。そこは最後の最後まで判断を変えられるようにしないといけない」
いわば、4連勝の流れのままプレーしようとする選手と、そこから次の段階へと進もうとする選手。そんな意識の違いが、危ういパスミスとなって表出したと言えるのかもしれない。
それを戦い方のブレととるのか、避けては通れないステップととるのかで、連勝ストップの印象もまったく違ったものになってくる。
だが、いずれにせよ、G大阪が危機的状況を完全に脱したとは言い難い。そのことだけは確かだろう。
半田は言う。
「負けなかったことだけは、今日はよかった。この引き分けがどうなるのかは、次の試合にかかってくる」
G大阪の葛藤と模索は、まだまだ続きそうだ。