北川信行の蹴球ノート 世界ベスト100クラブにJリーグが入らない現実…SNS活用遅れ、発信力強化急げ
1993年5月の開幕から30周年を迎え、「トップ層が、ナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く」との新たな成長戦略を打ち出したJリーグだが、世界への発信力はどのくらいあるのだろう。このコーナーでも時々利用している国際サッカー連盟(FIFA)が中心となって設立したサッカーの国際研究機関「CIES Football Observatory」が、物差しの一つになるのではないかと思われるユニークな調査結果を発表した。
◆2億超えは「3強」だけ
ツイッター、インスタグラム、フェイスブック、TikTok(ティックトック)の4種類の交流サイト(SNS)を合わせたフォロワー数の多い世界の100クラブを調べたのだ。トップはレアル・マドリード(スペイン)の3億6300万。ライバルのバルセロナ(同)が3億4200万で続く。
世界的に名前の知られた欧州5大リーグ(スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ、フランス)のクラブが上位を占めるが、意外に感じたところでは、サウジアラビアやインドネシア、タンザニア、南アフリカ、エクアドルなどのクラブもベスト100入りしている。ところが、残念ながら日本のJリーグのクラブはゼロ。言語のハンディーや人口差はもちろんあるが、Jリーグのクラブが世界で認知されるようになるには、まだまだ乗り越えなければならない高いハードルがあるように思う。
まずはベスト10を紹介する。
①レアル・マドリード(スペイン)3億6300万=ツイッター7970万▼インスタグラム1億3500万▼フェイスブック1億1700万▼ティックトック3080万
②バルセロナ(スペイン)3億4200万=ツイッター8280万▼インスタグラム1億1900万▼フェイスブック1億1200万▼ティックトック2830万
③マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)2億600万=ツイッター4150万▼インスタグラム6150万▼フェイスブック8080万▼ティックトック2240万
④パリ・サンジェルマン(フランス)1億8700万=ツイッター2370万▼インスタグラム7020万▼フェイスブック5250万▼ティックトック4040万
⑤ユベントス(イタリア)1億4400万=ツイッター1510万▼インスタグラム5770万▼フェイスブック4700万▼ティックトック2430万
⑥チェルシー(イングランド)1億3400万=ツイッター2770万▼インスタグラム3940万▼フェイスブック5360万▼ティックトック1370万
⑦マンチェスター・シティー(イングランド)1億3100万=ツイッター2550万▼インスタグラム4090万▼フェイスブック4580万▼ティックトック1870万
⑧リバプール(イングランド)1億3100万=ツイッター2950万▼インスタグラム4180万▼フェイスブック4470万▼ティックトック1460万
⑨バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)1億2700万=ツイッター1380万▼インスタグラム3810万▼フェイスブック5880万▼ティックトック1600万
⑩アーセナル(イングランド)9370万=ツイッター2200万▼インスタグラム2570万▼フェイスブック4110万▼ティックトック490万
国によってよく使われているSNSの種類が異なり、中国由来のティックトックの使用が政府機関などで禁止されている国もあるため、一概に比較できない部分もあるが、3億超えはスペインの2クラブのみ。マンチェスター・ユナイテッドを加えた「3強」が2億超えしている。
◆インドネシアやタンザニアもベスト100入り
SNSの種類別に見てみると、レアル・マドリードはインスタグラム(1億3500万)とフェイスブック(1億1700万)でトップ。ツイッターではバルセロナ(8280万)が最もフォロワー数が多く、ティックトックはパリ・サンジェルマン(4040万)が首位。レアル・マドリードはツイッター、ティックトックともに2位(ツイッター7970万、ティックトック3080万)で、SNSの種類にかかわらずフォロワーを集めていることが分かる。
ちなみに、個人レベルでは、クリスティアーノ・ロナルドのフォロワー数は8億5900万(うちインスタグラム5億8700万)でリオネル・メッシは5億8200万(うちインスタグラム4億6800万)。レアル・マドリードやバルセロナといえども遠く及ばず、SNSの世界では組織よりも個人志向が圧倒的に強いことが分かる。
欧州5大リーグ以外のトップ3は
①フラメンゴ(ブラジル)=全体14位、4970万
②アル・アハリ(エジプト)=全体17位、4480万
③ガラタサライ(トルコ)=全体18位、4010万
これ以外に、サウジアラビア▼インドネシア▼アルゼンチン▼オランダ▼メキシコ▼ポルトガル▼イラン▼タンザニア▼南アフリカ▼モロッコ▼コロンビア▼エクアドル▼インド▼米国▼チリ▼ロシア▼スコットランド-のクラブもベスト100入りしている。
アジアでは
サウジアラビア(アル・ナスル3220万▽アル・ヒラル2000万▽アル・イテハド720万)
インドネシア(ペルシブ・バンドン2470万▽ペルシジャ・ジャカルタ960万)
イラン(ペルセポリス870万)
インド(ケーララ・ブラスターズ670万)のクラブが含まれている。
ちなみに、100位はボルシア・メンヘングラートバッハ(ドイツ)やエスパニョール(スペイン)ヤング・アフリカンズSC(タンザニア)ピラミッドFC(エジプト)の410万。
Jリーグの中でもSNSの利用が活発とされるセレッソ大阪はツイッターが22万、インスタグラムが9万、フェイスブックが11万。ライバルのガンバ大阪はツイッター23万、インスタグラム9万、フェイスブックが10万。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制してアジア王者となった浦和レッズはツイッター46万、インスタグラム15万、フェイスブック7万-となっている。
いずれのクラブもSNSの種類によって強弱がある一方で、いずれのSNSでも同じような情報を提供しがちとなっている気がする。SNSの種類や特性に応じた「使い分け」をさらに進化させることで、フォロワー数を増やせる余地があるのではないだろうか。
Jリーグのクラブの中から世界に伍するトップクラブが誕生するには、ピッチ内の実力ももちろん大切だが、こうした発信力も高めていく必要があるように思う。