歴代ストライカー「助っ人部門」TOP10 「アマゾンからやってきた」と触れ込みの逸材もランクイン
【専門家の目|栗原勇蔵】浦和でプレーしたワシントンとエメルソンが1位・2位
日本サッカー界にはこれまで、さまざまなタイプのストライカーがその名を轟かせてきた。相手との巧みな駆け引きから得点嗅覚を発揮した者や力強いポストプレーを武器にゴールへ迫ったハンターなど、特徴は多岐にわたる。
「FOOTBALL ZONE」では今回、日本人ゴールハンターの系譜を振り返るべく特集を展開。横浜F・マリノス一筋で18年間プレーした元日本代表DF栗原勇蔵氏に、対戦した選手をベースに日本人ストライカーのランキングを作成してもらったなかで、番外編として「外国籍選手」の歴代トップ10を訊いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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1位:ワシントン
■元所属:浦和ほか
■国籍:ブラジル
■年齢:48歳(OB)
■身長・体重:189センチ・88キロ
■J1通算成績:85試合64得点
「ワシントンはもうどうにもなりませんでした(笑)。(2005年の)F・マリノスと東京ヴェルディのゼロックス(スーパーカップ/現富士フイルムスーパーカップ)の時は、身体のでかい選手で2点取られたというだけの印象でしたけど、その年に東京Vが降格(J1リーグ17位)したなかでリーグ2位の22ゴール。チームが弱く、チャンスが少ないなかで確率が高いからこその成績だったと思います。
レッズ移籍後は、周りの選手のレベルも上がって、もう止められない。身体の厚みが凄くてボールが見えないし、ボールを覗きに行ったら反転されてシュートを打たれてゴールされる。07年のクラブワールドカップで、ACミランの(元イタリア代表DFアレッサンドロ・)ネスタもやられているのを見た時に、自分クラスでは止められないなと思いました(笑)。ブラジル代表の実績も持っていて、欧州5大リーグでプレーしていてもおかしくない実力者。今の若いディフェンダーの選手には、あのレベルを体感してほしいです」
2位:エメルソン
■元所属:浦和ほか
■国籍:ブラジル/カタール
■年齢:44歳(OB)
■身長・体重:171センチ・69キロ
■J1通算成績:100試合71得点
「誰もが知っている存在で、あの爆発力とスピードは分かっていても止められない。プレーも派手だし、インパクトという意味では一番と言っていいかもしれません。練習に遅刻してきたり、やんちゃな選手でした。でも、試合であれだけ結果を残すから使わざるを得ないですよね(笑)。今のコンパクトなサッカーの時代だったら無双できたかは分かりませんけど、ワシントンとのワンツー(1位・2位)は納得してもらえるはずです」
3位:オルンガ
■現所属:アル・ドゥハイル(カタール)
■国籍:ケニア
■年齢:29歳(現役)
■身長・体重:193センチ・85キロ
■今季成績:22試合22得点(カタール1部)
■J1通算成績:42試合31得点
「言ってみれば全盛期のワシントン+スピードみたいな選手で、体格、スピード、テクニックのすべてを兼備していました。直接のマッチアップ経験はないですけど、外から見ていて凄いと感じました。現代のコンパクトなサッカーの中で結果を残す能力と実力。J2とはいえ、1試合8ゴールのJリーグ最多記録はダテではなく、組織で守らなかったら止められない選手だと思います」
4位:ジュニーニョ
■元所属:川崎ほか
■国籍:ブラジル
■年齢:45歳(OB)
■身長・体重:174センチ・60キロ
■J1通算成績:264試合116得点
「ジュニーニョはとにかく速かった。身体の線は細かったので強さはないですけど、身体を当てる場所まで近寄らせないスピードを持っていました。得点も取れるし、アシストもできる。攻撃的なチームだったフロンターレの中でもジュニーニョにはよくやられたというイメージで、対戦する試合は憂鬱でした(笑)」
5位:フッキ
■現所属:アトレチコ・ミネイロ(ブラジル)
■国籍:ブラジル
■年齢:36歳(現役)
■身長・体重:180センチ・95キロ
■今季成績:9試合5得点(ブラジル1部)
■J1通算成績:22試合8得点
「聞いた話ですけど、アマゾンのほうからとんでもない逸材を見つけてきた、という触れ込みだったみたいです。めちゃくちゃ速いし、めちゃくちゃ身体も強かった。来日当時、体重70キロ台(79キロ)だったのがいつの間にか90キロ以上になっていて、それでいてスピードが落ちない。それはもう、手がつけられませんよね(笑)。その後欧州のポルトやゼニト、ブラジル代表でもプレーするまでに化けるフッキを見つけてきたフロンターレのスカウトは凄いと思います」
元鹿島のダヴィは「対戦するのが厄介だった」
6位:マグノ・アウベス
■元所属:G大阪ほか
■国籍:ブラジル
■年齢:47歳(OB)
■身長・体重:176センチ・70キロ
■J1通算成績:115試合65得点
「シュートの振りがとにかく速い。シュートブロックに行こうとしても、もう打ち終わっていてゴールされてしまう。スピードももちろんあるので、記憶に残っている選手です。在籍期間(2006~07年)はガンバも強かったので、なおのことインパクトはありました」
7位:マルキーニョス
■元所属:鹿島ほか
■国籍:ブラジル
■年齢:47歳(OB)
■身長・体重:174センチ・77キロ
■J1通算成績:333試合152得点
「言わずと知れた、Jリーグの外国籍選手最多得点記録保持者です。日本で長くプレーするなかで成長した1人で、どのクラブに行っても活躍している。日本で一番成功を収めたと言っていい外国籍選手でしょう。得点バリエーションがとても多くて、鹿島時代の2008年にMVP、得点王、ベストイレブンと圧巻の活躍でした。マルキーニョスは献身的なプレーもできるのが素晴らしいと思います」
8位:ダヴィ
■元所属:鹿島ほか
■国籍:ブラジル
■年齢:39歳(OB)
■身長・体重:183センチ・85キロ
■J1通算成績:124試合47得点
「ウェイトオーバーの時期があったり、身体能力に長けてなさそうにも見えるんですけど、身体が強くてスピードもある。腕の力が驚異的で、腕力には多少自信があった自分も、ダヴィには片手で抑えられてしまうくらいでした。足もとの技術は、トップレベルの選手ほど上手くなかったとはいえ、鹿島時代には2013、14年とJ1二桁得点を記録している。個人的には対戦するのが厄介な選手だったので、今回トップ10に入れました」
9位:パトリック
■現所属:京都
■国籍:ブラジル
■年齢:35歳(現役)
■身長・体重:189センチ・82キロ
■今季J1成績:15試合5得点
■J1通算成績:278試合91得点
「パトリックはもう完全にフィジカル特化型。テクニックに関してはランキング内で一番劣るかもしれないですけど、日本人選手を圧倒するフィジカル、そして献身性を持っているからこそこれだけ長く活躍できていると思います。甲府でパトリックありきのサッカーをやるなかで台頭したイメージ。能力のあるブラジル人選手は1トップで自由にプレーさせるとやっぱり生きるなと。野性味に溢れているけど、穏やかなキャラクターでサポーターにも選手たちにも愛されてる。人間性も含めて日本で活躍できる要因でしょう」
10位:チェ・ヨンス
■元所属:千葉ほか
■国籍:韓国
■年齢:49歳(OB)
■身長・体重:184センチ・79キロ
■J1通算成績:88試合55得点
「2003年の臨海(市原臨海競技場)でのリーグ戦(J1第1ステージ第5節)でジェフに1-3で負けた時にハットトリックをされた時の印象があまりにも強くて、凄いなと。当時日韓のライバル関係が今より色濃くて、点を取ったあとに、(1997~98年に)日本代表の監督をやっていた岡田(武史)さんの前に来て、思いきりガッツポーズして、挑発された岡田さんがめちゃくちゃ悔しそうにしていた姿も記憶に残っています(笑)。昔の韓国人選手らしく、気持ちが強くて、ベンチから見ていても恐ろしい選手でした」
[プロフィール]
栗原勇蔵(くりはら・ゆうぞう)/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。