【番記者の視点】最下位脱出のG大阪 ポゼッションだけではない幅と競争力が生んだ連勝

明治安田生命J1リーグ 第16節 福岡1―2G大阪(3日・ベススタ)

【G大阪担当・金川誉】今季初の連勝を飾った福岡戦の記者会見。ポヤトス監督の表情に、やっと柔らかさが戻った。「逆転に持ち込めたところに、チームの成熟度が表れたと思います。危険な場面を作られながらも、しっかりと守ることができました。こういう展開は自分としては望んでいないものですが、しっかりと勝ち切れたことは良かったと思います」。微笑みも浮かべ、苦しみながらつかんだ勝ち点3を振り返った。

前節の新潟戦でやっと連敗を5で止める勝利をつかんだが、そのメンバーから先発2人を変更。ロングボールが多い福岡に対し、ヘディングの強いDF三浦弦太、MFダワンを先発に戻した。さらにDFラインは本来右サイドバック(SB)のDF半田陸を左に、前節までセンターバックのDF福岡将太を右SBに配置。高さのあるメンツをそろえたことは、守備面では理にかなった変更と言えた。

しかし前半17分には、警戒していたはずのCKから失点。高さのある選手をそろえたはずが、あっさりと中央でフリーをつくってしまった。それでも同24分、ロングボールからFWジェバリが起点を作り、最後はMFアラーノが詰めて同点に。同32分にはFKからダワンの折り返しを三浦が決めて逆転に成功した。先発に抜てきした2人が結果を残し、終盤には福岡のパワープレーを5バックでしのいで勝利をつかんだ。

ポイントとなったのは、選手達がみせた柔軟な戦い方だ。この日、ポヤトス監督は攻撃時にDFラインを3枚(福岡、三浦、佐藤)にする可変システムから、相手のプレスをはがす狙いをチームに授けていた。しかし同点後は3トップ気味にプレスを当ててきた福岡に対し、選手達はビルドアップにこだわらずに最前線のジェバリをシンプルに生かす形を選択し、勝ち越しゴールを奪った。DF福岡が「いまチームが良い要因は、試合の中で選手自身がいろいろなことを感じてピッチ内で変化できていること」と語ったように、有効な手段を導き出した。今季、ポゼッションをベースに戦ってきたG大阪だが、連敗中は戦い方を修正できずに敗れる試合も目立った。しかしこの日は相手に合わせた守備で1失点でしのいだ点も含め、戦い方の幅が生まれ始めている。

また、思い切ったメンバー変更は、いくら理にかなっていたとは言え、大きな決断だった。連敗から抜け出した先発メンバーを変え、ここで結果が出なければ、チーム内の不信を生む要因になりかねなかった。負傷などもあり、5試合ぶりの先発となった三浦は「チームとして勝てていない中で、メンバーをいじることもある。でも自分自身も(ポジションを)譲る気はないし、タイミングが来たらしっかりやろうと思っていた」と話した。競争心を表に出すことは多くない三浦だが、強い覚悟があったことは確かだ。勝利した勢いより、相手と自分たちの戦力を見定めた指揮官の決断が“吉”と出たことは、今後の競争力を高める意味でも大きい。

守備から立て直し、ポゼッションに頼らずつかんだこの連勝は、今後の対戦相手に「G大阪はどう戦ってくるのか」という迷いを抱かせる効果もある。試合終盤、途中出場したFW宇佐美貴史をジェバリに代えて1トップとして起用した点も含め、まだ広がりをみせそうな予感もある。連勝で最下位を脱出したが、まだまだ安心できる場所ではない。しかしどん底から抜け出したこの勝利は、勝ち点3以上にチームに落ち着きとさらなる成長へのヒントをもたらしたとみる。

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