【番記者の視点】25年ぶり5連敗のG大阪 応援ボイコットが生んだ異様な分断
◆明治安田生命J1リーグ 第14節 G大阪0―2横浜M(20日・パナスタ)
【G大阪担当・金川誉】
スタジアムには、異様な雰囲気が漂っていた。いつもなら鳴り響く、太鼓の音色や応援を先導するコールリーダーの声が聞こえない。サポーターの中核を担うグループが、ここ数年の低迷及び今季の結果、姿勢に対してクラブに抗議の意を示すため、応援をボイコットしたためだ。一方、苦しい時期だからこそ応援しようというサポーターもおり、自然発生的に起こったチャントは響いていた。
G大阪は後半に退場者を出した横浜Mに、セットプレーから2点を奪われて敗れた。34歳のMF倉田秋が左ウイングで今季初スタメンに名を連ね、前線からのプレス強度を上げて、ボールを奪えばシンプルに裏につけることでチャンスを作った。しかし試合が進むにつれて、横浜Mのパスワークに翻弄された。主導権を奪われると、前半37分にCKから失点。それでも後半開始から再びギアを上げ、同14分には球際で戦った倉田が横浜M・DF松原のファウルを誘い、2枚目のイエローで退場に追い込んだ。数的有利となったが、10人でも腰を引くことなく応戦した昨季王者は強かった。後半34分に横浜M・DF永戸に強烈な直接FKで追加点を許すと、最後まで相手ゴールをこじ開けることはできなかった。
倉田は「立ち上がりはシンプルにやろうとしたけど、プレスがいけなくなった時はつないで自分たちの時間を作ろう、ピッチ内では話していた。でもその時間がなかなか作れなかった」と振り返った。今季ここまでの敗戦では、ボール支配率を高めても崩しきれず、カウンターや自陣でのミスから失点して敗れることが多かった。しかし縦に速い攻撃や、前線からの切り替えへの意識を高めたこの日は、これまでできていた“時間をつくる”精度が下がった。まだその好バランスを、チームとして見つけることができていない。
試合後には応援をボイコットした一部のサポーターと選手達が対面した。サポーターからは「後押しする。絶対に見捨てない。どこまでもついていく」などの激励があったという。しかし現地、SNS上でも応援ボイコットに対する批判の声も上がり、サポーターの分断すら懸念される状況だ。倉田は「勝ってさえいれば、こんなことにはなっていない。サポーターの思いをきっかけにしないといけない。何も感じなかった選手はいない」と事態の重さをかみしめていた。
ポヤトス監督の目指す「攻守に主導権を握る」スタイルは、ボール支配への意識が高く、シンプルに裏を狙う前線への速さや、運動量といった部分が出にくい。しかし14試合でわずか1勝という歴史的低迷から、狙い通りのスタイルだけで抜け出せると考えるのは甘いだろう。横浜M戦では敗れはしたが、選手達が最後まで戦う、走る姿勢を強く示したことが、スタジアム内の空気を変えていく熱となった。ルヴァン杯を挟み、新潟、福岡とのアウェーが続くリーグ戦。今は泥水をすすってでも勝ち点を積み上げることができなければ、スタイルの追求など夢物語に終わってしまう。