Jリーグ30周年スペシャルマッチの不思議/六川亨の日本サッカー見聞録
いよいよ今週末は「Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ」がスタートする。まず12日はFC東京対川崎Fの“多摩川クラシコ”が国立競技場で開催される。そして14日は同じく国立競技場で鹿島対名古屋の試合が開催される。鹿島対名古屋の試合は、Jリーグの開幕戦となった30年前の5月16日、鹿島スタジアムで行われた伝統の一戦でもある。ジーコ対G・リネカーの対戦でも注目を集めた試合だったが、ジーコやアルシンドの活躍などで鹿島が5-0と圧勝した。
好天に恵まれ、試合前はスタジアム周辺の芝生でバーベキューを楽しむサッカーファンもいた。待ちに待った開幕戦である。にもかかわらず、当日の観衆は10,898人にとどまり、過疎化による人口減少から集客力に不安があるという指摘を裏付けることとなってしまった。しかし、その後はレオナルドやジョルジーニョらの活躍もあり集客力もアップ。国内最多タイトルを誇る名門となった。
この試合に比べ、12日に国立競技場で開催される金Jフライデーナイト、FC東京対川崎Fの“多摩川クラシコ”は、「Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ」と呼ぶにはいささか違和感を覚える。というのもFC東京と川崎Fが揃ってJ2リーグに昇格したのは1999年だからだ。しかし、そこには「背に腹はかえられない」理由があるようだ。
本来「Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ」と銘打つなら、30年前の5月15日の国立競技場での開幕カードがふさわしいだろう。ところが東京V(当時はヴェルディ川崎)は現在J2のため、横浜FMと試合をするわけにはいかない。同じくジェフ千葉(当時はジェフユナイテッド市原)もJ2のため、広島との対戦は不可能だ。そして清水と対戦した横浜フリューゲルスは横浜マリノスに吸収合併されているため、チームそのものが存在しない。
唯一可能なのは、当時はG大阪のホームで開催された浦和戦である。この試合では、ハーフタイムにレーザー光線によるイベントを開催したが、そのため一時的に照明を消した。すると当時のスタジアムの照明は、一度落とすと再点灯するためには電球の熱を冷まさないといけないので、後半開始が10分以上遅れるというハプニングがあった。普段でも万博記念競技場の照明は暗く、当時はフィルムカメラで撮影していたので、カラーで誌面を構成するのに苦労した思い出がある。
話を浦和対G大阪戦に戻すと、5月14日の16時から埼玉スタジアムで開催される。この試合も「Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ」と呼ぶにふさわしいが、浦和はACL決勝の関係から10日に鳥栖と第10節の試合を消化したばかり。さすがに中1日で金Jフライデーナイトを戦うわけにはいかず、12日は“多摩川クラシコ”になったようだ。東京VがJ1に復帰していればJリーグ事務局も頭を悩ませる必要はなかったが、こればかりは仕方がない。東京は東京でもFCが、横浜FMと対戦するよりも“多摩川クラシコ”の方が話題性も高いと判断したというのがマッチメイクの真相ではないだろうか。
【文・六川亨】