【番記者の視点】通算60度目の「大阪ダービー」 G大阪担当が占う“新時代への分岐点”
【G大阪担当・金川誉】リーグ戦最後のダービー勝利から、はや約4年が経った。MF倉田秋のゴールで競り勝ったのが、2019年5月18日。この試合では宮本恒靖監督が、負ければ最下位転落という状況でMF遠藤保仁=現磐田=と今野泰幸=現南葛=をベンチスタートとし、当時大卒ルーキーのDF高尾瑠や20歳MF福田湧矢らを抜てきして勝利した。この日の記事では『令和初の大阪ダービーでG大阪が“新時代”を感じさせた』と書いた。しかし、まだその新時代は到来していない。
ポヤトス監督を迎えた今季、G大阪のサッカーは変わった。近年続いた受け身のスタイルから「主導権を握る」サッカーへとかじを切った。開幕から10試合を終えた結果は、1勝4分け5敗の17位。今季ここまでのデータをJリーグ公式記録(@JSTATS)から見ると、パス数リーグ3位(559)、シュート数4位(1試合平均11・3)と、昨季から考えれば夢のような数字が並ぶ。しかし得点数は15位(同1・1)、失点数はワースト2位(同2・2)とあっては、勝ち点を積めないもの当然だ。
データについては「あくまで客観視するためのもの」と語るポヤトス監督だが、結果が出ない中でもチームが変わりつつことは強調している。「ここ数年のG大阪は、構えたところからカウンターというスタイルだったが、自分自身は攻守において支配するスタイルを伝えていきたい。より大きなクラブになるには、攻守において支配することが必要、と言うことを伝えたい。(大敗した)湘南、神戸、鹿島戦は悪い試合をしてしまったが、その中でもよい瞬間はあった。自分たちのやっていることには、何の疑いも持っていない」。自身が目指すスタイルに対しての自信は失っていない。
近年のダービーでは、C大阪が前線から仕掛ける守備に手を焼き、中盤の強度でも上回られた、という印象が強い。今季もC大阪の武器は「ブロックを組んだ守備からのショートカウンター」だと指揮官は分析。しかしC大阪もMF香川真司の復帰などもあって、豊富な運動量を備えた2トップでどんどんプレッシャーをかける昨季のスタイルから、変化の課程にあると聞く。プレスの強度が下がるのであれば、相手を見てボールを前進させる得意な展開に持ち込めるはずだ。ショートカウンターを封じるためにも、鋭い切り替えからの守備も試合の流れを左右するポイントになるとみる。
コロナ後初のチケット完売となったこの試合。ピッチ、及びスタジアムの熱量が非常に高くなることが予想される。お互いに集中力、強度の高い展開の中で、試合を決めるのはほんのわずかな隙になる。ベンチスタートの選手も含め、総力戦となることは必至。MF宇佐美貴史は、自身がドイツ・デュッセルドルフから復帰する直前にあった4年前の勝利を「強烈に記憶に残っていますし、勝ち点3以上の勢いをチームにもたらす勝利だった」と語った。大一番で勝利すれば、目指すスタイルへの自信となるだろう。しかしもし敗れれば、その方向性に疑いが生まれても不思議はない。“新時代”への分岐点となる大阪ダービーが、いよいよ幕を開ける。