大黒将志の“本物の技術”に魅せられて。U-17代表候補FW山本吟侍が猛アピール!「勝ち残るにはゴールが必要だった」
空中戦や動き出しで存在感
4月30日に行なわれたU-17日本代表候補と関東大学選抜のトレーニングマッチ(45分×3本)。今秋のU-17ワールドカップを目ざすチームにおいて、今年初の代表活動は新たな戦力の発掘が主なテーマとなった。
6月中旬には最終予選を兼ねたU-17アジアカップが控えており、メンバー入りを果たすためにも今合宿でのアピールが求められていた。そうしたなかで、見事に結果を残したのが、高川学園に所属するFW山本吟侍(3年)だ。
早生まれで出場資格を持っている点取り屋にとって、日の丸を背負うのは昨年7月のU-16日本代表候補合宿以来。U-17高校選抜などには選出されていたが、以降は世代別代表からは遠ざかっていた。
意気揚々と代表活動に参加したが、28日に行なわれた流経大柏との練習試合(1−1)は無得点。このままでは終われない。
「メンバーに選んでもらった経験もあるけど、以降は怪我もあったし、実力不足で選ばれなかった。今回はアジアカップに向けて、メンバー候補に入れたので、勝ち残るために自分はFWなのでゴールが必要だった」(山本)。
関東大学選抜戦では、2本目の途中からピッチに立つと、空中戦の強さや動き出しの良さを武器に存在感を示す。
「(流経大柏戦では)お互いのことがよく分かっていなかった。なので、(関東大学選抜戦は)新しく来た選手もやるべきプレーをはっきりさせたうえで自分を出してほしい」と森山佳郎監督がチームに送った言葉通り、コンセプトを理解しながら特徴を発揮。守備面でも最前線からプレスをかけ、献身的なプレーでチームのために汗をかいた。
そして、迎えた3本目の開始直後に見せ場が訪れる。2分に右SB柴田翔太郎(2年/川崎U-18)のクロスに反応。上手くミートできなかったが、気持ちでネットを揺らした。これで勢いに乗ると、28分にはFW木吹翔太(2年/広島U-18)からラストパスを受け、GKとの1対1を冷静に制して2点目をゲット。持ち前のゴールセンスをいかんなく発揮し、アピールに成功した。
試合前から意識していたファーストタッチ
巡ってきたチャンスを活かした山本だが、この2ゴールが生まれた背景には、“ある人”からの助言もあった。それが今回の活動に帯同しているゲストコーチの大黒将志氏だ。現在G大阪のアカデミーでストライカーコーチを務める元日本代表FWから、今合宿では多くのことを学んだという。
「フォワードとして、絶対にこの合宿で多くのモノを吸収しようと思っていた。プルアウェイの動きや、その際にどう身体を反転させるのか。そういう動きは大黒さんから学ばせてもらえて、実際に細かく教えてもらった」
特に参考になったのが、プルアウェイ時の駆け引きだ。相手の後ろに隠れる動きや、オフサイドポジションで構えて、一瞬の動きで相手の前に入るプレー。そういう狡猾な動きは聞くよりも、実際に指導を受けて学ぶほうが吸収できる。
実技指導で示してもらった際に、山本は「動きが早くてびっくりした」と目を丸くしたが、「下がったあとに前へ出る動きの際に、ちょっとボールがずれれば、自分は受けられなかったけど、大黒さんは身体が前向きなのでズレても受けられていた」と、“本物の技術”を前に心を躍らせた。
プルアウェイの動きは簡単には真似できないが、アドバイスが活きた場面もあった。それが2点目のシーンだ。
「大黒さんから『ファーストタッチにこだわれ!』というアドバイスをもらった。前日の練習では上手くいっていなかったけど、試合前からずっと意識をしていた」
クロスをしっかり収めてゴールを決めており、大黒コーチの助言が見事に活きた。
充実の時間を過ごした山本は、この技術をチームに持ち帰り、自分のモノにできるか。代表入りを目ざすストライカーはさらなる成長を期し、大黒コーチの教えを胸に刻んで前に進んでいく。