【番記者の視点】G大阪ポヤトス監督“いらだち”の理由 チームの変化に伴わない結果
◆YBCルヴァン杯 ▽1次リーグE組 FC東京1―0G大阪(19日・味スタ)
【G大阪担当・金川誉】試合後の会見に訪れたポヤトス監督は、厳しい表情を浮かべて、こう切り出した。「こういった試合の後なので、すごく話すのが難しいなと思います」。後半にMF山本理仁が一発退場。それでも同ロスタイム、DF高尾瑠の同点ゴールで追いついたかに見えたが、MF石毛秀樹がGKの動きを制限した、と判断されてオフサイドに。運に左右される部分もサッカーの要素とはいえ、納得できない思いをかみしめている様子がうかがえた。
リーグ戦からメンバーを大幅に入れ替えたこの試合。G大阪の中盤3枚に対して、FC東京がマンマーク気味の守備を取られ、ボールの動きは制限された。インテリオールで先発したMF宇佐美が「もっと早く気づいて、自分たちのやり方を少しアレンジする必要があった。どこでポジションを変えて、どういうパスコースを空けさせるか。僕も含めて、全員で見つけ出さないと」と語ったように、ボールの動きがスムーズさを欠く、という課題は浮き彫りになった。
それでも前半14分には、中央のスペースに左ウィング食野が入り込んでパスを引き出し、フリーとなった右ウィングの中村へ展開。左足のクロスからMF倉田がヘディング、という決定機を作り出した。同30分にもDF高尾が相手のプレスをはがし、中村からFW鈴木へスルーパス。さらに食野へとつないたが、FC東京DFのカバーに阻まれた。指揮官は「ボールの動かしは足りていなかったかな、と思うのですが、はっきりとしたゴールチャンスはあった。逆にFC東京さんにははっきりとしたゴールチャンスはそんなになかったのでは」と振り返っていた。
退場者が出た影響もあってか、パス数やポゼッション率でFC東京に上回られた。しかしシュート数はG大阪12本、FC東京6本。指揮官の一貫した考えは「どこにスペースがあるのか」を把握して攻める点。今季は自陣からパスをつないでポゼッション率を高めている点が注目されているが、あくまでスタイルのいち部分。倉田の決定機は自分たちで相手陣内にスペースを作り出し、食野のチャンスはFC東京のプレスを逆手に取り、背後のスペースを突いた。試合を支配できなかったことは課題だが、メンバーを大幅に入れ替えても、狙いを持って相手より多くゴールに迫ったことも事実だ。
しかし無得点という結果も重い。今季初出場でチャンスに絡んだ19歳MF中村は「ウィングとしての仕事はできなかったのかな、と思います。(前半に)一度、(FC東京の)長友選手に仕掛けて縦に行ったけど、奪われたところはまだ迷いがあった。自分の得意なはずのプレーで迷いが出てしまった」と悔しがった。チームとして運んだボールに、最後に“彩り”を添えてネットを揺らすのは主にアタッカー陣の仕事。そのひとりとして「得点」という結果を出せなかったことを受け止めた。
これでルヴァン杯は初黒星。リーグ戦もわずか1勝と苦しむ。ポヤトス監督は11対11なら勝てていたか、という質問に「10人で戦ってもチャンスをつくった展開を見て、どう思いましたか。11対11なら、皆さん想像ができると思います」と投げかけた。指揮官からにじんだいらだちは、判定に加え、チームの進歩、変化に対して結果が伴わない点からだろう。しかし試合後、平日にもかかわらずアウェースタンドの一角を占めたG大阪サポーターからは、ブーイングではなく力強いチャントが響いた。近年G大阪が追い求めてきた“スタイル”が、少しずつ形になってきていることは、応援する人々には伝わっている。