危険なゾーン。ガンバ大阪はなぜ勝てないのか?「年齢は関係ない」、まずやるべきことがある【コラム】
明治安田生命J1リーグ第6節、湘南ベルマーレ対ガンバ大阪が1日に行われ、4-1でガンバは大敗を喫した。開幕から6試合勝利がないガンバが、J2降格も視野に入る「危険なゾーン」にいることは間違いない。苦境から抜け出し、浮上するためのヒントはどこにあるのだろうか。(取材・文:元川悦子)
●ガンバ大阪、悪夢の4失点
3月のインターナショナルマッチデー(IMD)が終わり、再開されたJリーグ。4月1日の湘南ベルマーレ対ガンバ大阪戦は28日のコロンビア代表戦に先発した町野修斗、代表活動に参加した谷晃生、半田陸の3選手が一堂に会するということで注目度が高まった。
さらに言うと、湘南の山口智監督、阿部浩之、小野瀬康介はかつてガンバで仕事をした面々。逆に谷は昨季まで湘南にレンタル移籍しており、そういった人間模様も入り混じる「因縁マッチ」となった。
試合はガンバが押し込む形でスタート。開始13分には宇佐美貴史に代わってキャプテンマークを巻く山本悠樹のシュートが右ポストを直撃する決定機を作る。ダニエル・ポヤトス監督体制1年目のガンバは開幕からここまで未勝利。IMD期間にじっくりチーム強化を図ったこともあり、「この日は絶対に勝つ」という意気込みが表れていた。
だが、その勢いを削ぐショッキングな出来事が起きる。それが前半21分の湘南・町野の先制弾だ。
湘南が自陣ゴール前から蹴り出したロングボールを、前線に残っていた町野が頭で落とし、阿部がダイレクトで前線へ。これを読んでいた谷が飛び出し、難なくクリアすると思われたが、ワンバウンドしたボールをキックミス。次の瞬間、日本代表FWは無人のゴール前へ走り、落ち着いて右足で押し込む。思わぬ形で先制点を手に入れたのだ。
これで困惑し、混乱したのがガンバ。江川湧清、黒川圭介、半田、谷と25歳以下の若手中心で構成する守備陣がバタバタし、守備組織が機能しなくなったのだ。
●「プレッシャーに耐える経験が足りていない」
「僕はキャプテンマークを巻かせてもらっているので、『率先してやらないといけない』と普段から思っています。(三浦)弦太君とか(食野)亮太郎とかは反応してくれる一方で、全員が切り替えられているかと言ったらそんなことはない」と山本悠樹もムードの悪さを感じながら戦っていたが、思うように修正が利かなかったという。
ポヤトス監督も「一言で言うと『怖さ』。プレッシャーに耐える経験が足りていない」と指摘したが、強烈なリーダーシップを示せる選手は残念ながら見当たらなかった。
それが前半38、40、42分の連続失点につながってしまう。得点者は全て町野だった。
2失点目は石原広教の右クロスをクリアしきれず、ガンバDF3人に当たってフリーの町野にこぼれ、押し込まれる形だった。3失点目は永木亮太のFKを谷がなんとか触ったが、ファーの角度のない位置から町野が直接ゴールに蹴り込んだ。さらに4失点目も相手に自在にボールをつながれ、最終的には中野嘉大のクロスに町野が反応した。いったんはオフサイドと判断されたが、VARオンリーレビューの末にゴールが認定される結果となった。
相手エースFWに21分間で4ゴールを決められるという信じがたい展開に、ガンバの選手たちは呆然とするしかなかった。「1失点だったらゲームは壊れなかったと思いますが、3失点、4失点となると厳しくなってくる」と山本悠樹も悔しさを吐露した。
●元ガンバ大阪戦士「年齢は関係ない」
強い時代のガンバだったら、苦境に陥った時に踏みとどまれる底力があった。遠藤保仁や今野泰幸は激しく要求しあっただろうし、丹羽大輝は真っ先に怒号を浴びせていたはずだ。2020年に2位になったチームを振り返っても倉田秋、昌子源らがいて、ここぞという時に声を出し、闘争心を掻き立てていたはずだ。
昨季までガンバにいた小野瀬は「宇佐美がいないからじゃないですか。それで解決できるところもあるから」と神妙な面持ちでコメントしていたが、キャプテン・宇佐美がケガで離脱している今、全員がリーダーの自覚を持って戦わなければいけないのは事実だ。
2014年の3冠を知る阿部も「若いとか年齢は関係ない。いい選手が揃っているんだから、あとはマインドだけだと思う。自信を失わずに頑張ってほしい」と古巣に対して複雑な思いをにじませた。
やはりサッカーは技術・戦術うんぬんの前にやるべきことがある。この日のガンバはそれが足りなかった。ゆえに「町野の4得点」が起きてしまったのだろう。
ポヤトス監督は「陸や湧清、圭介らはタレントのある選手だが、学んでいく必要がある。このプロセスを続けることでチームの悪い流れを断ち切っていく自信を持っている」と語気を強めたが、本当にこの大量失点を糧にしなければ意味がない。まずはハーフタイムに全員で意思統一を図ったはずだ。
●J2降格へ「危険なゾーン」
その効果なのか、後半に入って多少の改善が見られたのは、前向きな要素と言えるかもしれない。前半終了間際にイッサム・ジェバリ、後半頭からネタ・ラヴィと持てる駒を投入。さらに布陣変更したことで、確実に流れは変わった。最前線にジェバリがいることで前線に厚みと鋭さが生まれ、63分にはその背番号11が1点を返すことに成功。さらに追加点が取れそうな雰囲気も感じられた。
いい状態のガンバはそれだけ堂々とした戦いができるチーム。だからこそ、本当に前半の崩れ方が悔やまれる。今回の1-4の敗戦を彼らがどう受け止めるのか。それ次第で今後の展開は大きく変わってくるだろう。
結局、ガンバは6戦未勝利。現時点の勝ち点は3で16位に沈んだままだ。その下に横浜FCと柏レイソルがいるものの、危険なゾーンにいるのは間違いない。今季はJ2降格が1チームということで、例年よりは恵まれた部分があるものの、早急に立て直しができなければ、ズルズルいく恐れも否定できない。
「今日は本当に悲しい試合だったが、この状況を前向きに考えながら選手をサポートしていきたい。それを変えるつもりは一切ない」とポヤトス監督は若い集団に自信を取り戻させるべく、アプローチを続けていくという。が、果たして思惑通りに物事が進むのか。
いずれにしても、ミスを犯した谷らは今こそ真価が問われるところ。ここからリバウンドメンタリティを示してほしいものである。
(取材・文:元川悦子)