冨安不在のDF陣。初陣ウルグアイ戦は板倉を軸に、A代表招集経験のあるメンバーで4バックを編成か
瀬古がCBのスタメン候補に浮上
2026年の北中米ワールドカップに向けて、第2次森保ジャパンがいよいよ船出する。3月20日から初めての代表合宿が千葉県内でスタートし、24日の初陣・ウルグアイ戦に挑むことになる。
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そんな矢先に守備の要・冨安健洋(アーセナル)が16日のヨーロッパリーグ(EL)・スポルティング・リスボン戦で右膝を負傷。ご存じの通り、離脱が発表されたのだ。
ここ数年、何度も怪我を繰り返してきた彼は、カタールW杯の際、「怪我? よくないサイクルなんだろうなって思いますし、どこかで断ち切りたい」と切なる感情を吐露していた。代表の新体制移行後は初陣からフル稼働したいと願っていたはず。
それが直前に断たれる形になったのだから、本人も悔しさや焦燥感でいっぱいだろう。今は回復に努めるしかないが、とにかく戦える身体を取り戻すことに専心してほしいものである。
代わって招集されたのは、東京五輪代表の町田浩樹(ユニオンSG)。森保一監督は世界基準を踏まえ「185センチ以上の長身DF」に強いこだわりを持っていることが窺える。今回のCB陣の板倉滉(ボルシアMG)、伊藤洋輝(シュツットガルト)、瀬古歩夢(グラスホッパー)、20日に追加で呼ばれた藤井陽也(名古屋)は、いずれもその条件に該当している。
こうしたなか、CBの軸を担うのは、もちろん板倉だ。カタールW杯のドイツ・スペイン戦の勝利の立役者であり、今季のブンデスリーガでも非常に安定感あるパフォーマンスを維持している。クラブでもリーダー格と位置づけられており、吉田麻也(シャルケ)の後継者としての期待も高まっている。
本人も「何回か言っていますけど、カタールを経験したメンバーが中心となってリーダーシップを取ってやっていかないといけないなとすごく感じている」と強調していただけに、まずは板倉が中心となって守備陣をまとめ、統率しなければならない。状況次第ではキャプテンにも指名される可能性もある人材だけに、これまでの代表活動とは違った意気込みと責任感を強く示してほしい。
そのうえで、4バックと想定して初陣を考えてみると、順当にいけば伊藤とのコンビになるところ。だが、左SBもバングーナガンデ佳史扶(FC東京)と兼任の町田しかいない。強豪相手にいきなりA代表未経験の選手を先発させるのはリスクが高い。となれば、伊藤が左に回らざるを得ない。
そこで、次の序列の瀬古がCBのスタメン候補に浮上してくる。瀬古は昨年9月の欧州遠征に帯同しており、カタール行きをあと一歩のところで逃した選手。そういう意味で森保監督の評価は低くない。
ボランチもこなせる足もとの技術や展開力、フィード力は板倉や冨安に匹敵するものがある。メンタル面も落ち着きが見られることから、今後のA代表の戦力として十分計算できるはず。今回はあえて起用に踏み切るのではないか。
森保監督が2月の欧州視察時にチェック
この前提でSBを見ていくと、左は前述の通り、現状では伊藤がファーストチョイス。本職のレフティ・バングーナガンデにも期待が寄せられる。やはり左利きのSBというのは、日本サッカー界が長年、求めてきた人材。今季の彼は攻撃の推進力も見せているだけに、そこも楽しみなところだ。
ただ、守備に関しては世界相手にどこまで通じるか分からない。それは合宿を通して指揮官がチェックしていくポイントと言える。
そして右SBは菅原由勢(AZ)、橋岡大樹(シント=トロイデン)、半田陸(G大阪)という構成だが、現状では森保監督が2月の欧州視察時にわざわざ出向いてチェックした菅原が一番手に近そうだ。
2019年夏にオランダに赴いて以来、ELやカンファレンスリーグも経験。欧州レベルを体感しながら成長を続けている点は大きなアドバンテージだ。性格的にも明るくてオープン。長友佑都(FC東京)の後継者になれるだけのキャラクターは持っている。
A代表のゲームは2020年10月のカメルーン戦以来となるが、右からの的確な指示や声出しで守備陣を盛り上げ、コントロールしていくはずだ。
場合によっては森保監督が3バックを選択する可能性もゼロではないが、4バックの場合は菅原、瀬古、板倉、伊藤というA代表招集経験のある4枚でスタートすることになるのではないか。彼らが酒井宏樹(浦和)や吉田、長友らの領域に達するのはそう簡単ではないが、一つひとつ経験を積み上げていくしかない。
フレッシュな守備陣がどのような船出を見せるのか。まずはそこを注視すべきだ。
取材・文●元川悦子(フリーライター)