Jリーグ盛り上げの起爆剤になるか 応援番組「KICK OFF!」が変えるサッカーの未来

サッカーの普及を目的に、Jリーグが各地の放送局と連携したテレビ番組が4月1日から、全国30地域45都道府県で始まる。「日本サッカーの未来に向けたキックオフ」との意味を込め、地域名に「KICK OFF!」を付けた番組タイトルで統一。各放送局の系列の枠組みを超え、同タイトル同コンセプトでオリジナル番組を制作するユニークな取り組みだ。昨年のワールドカップ(W杯)カタール大会で巻き起こった日本代表ブームを、J1~J3合わせて60あるJリーグ加盟クラブの認知度向上や、地域のサッカー熱向上に結びつけることができるか、注目される。

【グラフでみる】Jリーグの1試合平均観客数

■選手覚えて

関西2府4県エリアの番組は「KICK OFF! KANSAI」の名称で、毎日放送(MBS)が毎週土曜日の午前6時半~午前7時に放送する。

関西には、Jリーグ加盟が古い順に、ガンバ大阪▽セレッソ大阪▽京都サンガヴィッセル神戸-の4クラブ(以上J1)、J3が今シーズンから参入を果たした奈良クラブ▽FC大阪-があり、計6クラブが本拠を置いている。

クラブ数が多く、J1、J3と複数のカテゴリーにわたるなど取り上げ方に難しさはあるが、番組のチーフプロデューサー、藤島淳史さんは「関西全体で活性化できるようになれば」と話す。土曜日の早朝のため、当日の午後か翌日に試合があることを想定。「視聴した人がスタジアムに行きたいと思えるような番組にしたい」という。

具体的には、①前節の試合の振り返り②関西ゆかりの選手のルーツをたどる企画③サッカーのテクニックなどにチャレンジする企画-の3本柱で構成。①については、放送が試合日から1週間近く経過しているケースもあるため、ゴールシーンなどを単純に振り返るのではなく、選手自身にキーとなったプレーや判断を解説してもらうことを考えている。

また、試合結果に応じて、次のホームゲームでの集客イベントなどを番組で告知する時間が長く与えられる「タイムサバイバル」(藤島さん)というシステムを導入。番組が各クラブのモチベーションとなるように仕向ける。

②は、タレントが街をぶらぶら歩きながら名所やグルメなどを紹介する「街ブラ」に近い形を検討。街クラブの恩師を訪れたり、よく通った駄菓子屋が登場したり、サッカーを始めた思い出の公園が出てきたり…。さまざまな形で選手のルーツや人となりに迫る。③は、ボールをゴール枠に当てる「バー当て」に各チームの代表選手がチャレンジすることなどを計画。ここでも各クラブ同士が競い合う形にする予定だ。

藤島さんは「各クラブの選手の顔と名前、背番号が一致するようにしたい。なるべく多くの選手を取り上げ、ユニークなキャラクターを発掘していきたい」と抱負を語る。

■「出演が夢」

司会には現役時代、セレッソ大阪やヴィッセル神戸で活躍した元日本代表FWの大久保嘉人さんとMBSの若手アナウンサー、海渡未来(かいとみく)さんを起用。4月1日の初回放送は午前6時半から1時間の特別番組で、関西6クラブの代表選手による座談会を開き、各クラブのアピールポイントなどを話してもらうことにしている。

自身も早稲田大学ア式蹴球部(サッカー部)出身で、毎月最終火曜日深夜(水曜日未明)に放送しているガンバ大阪の応援番組「GAMBA TV~青と黒~」の立ち上げにも携わった藤島さんは「サッカーに恩返ししたい気持ちがある。番組を見ていただいた老若男女の方々にサッカーの楽しさ、素晴らしさが伝わり、競技人口、サッカーファミリーの数が増えることにつながれば。僕にとっては天職のような番組」と話す。

W杯カタール大会で一世を風靡(ふうび)し、現在はフライブルク(ドイツ)でプレーする日本代表MF、堂安律(どうあんりつ)がガンバ大阪で頭角を現して「GAMBA TV」で取り上げた際に「出演するのが小さいころからの夢でした」と喜んでくれたことがあるそうで、「今回も『見て育ちました』『サッカーが好きになるきっかけになりました』などと言われるような、長く続いていく番組にしたい」という。

「関西にはサポーターの熱があると思う。熱さは必ず何かを生むと思っている」と藤島さん。「KICK OFF! KANSAI」が、その熱量を増幅させるきっかけになればと願っている。

■観客復活へ地上波で放送

平成5年5月に開幕したJリーグは今年、30周年を迎える。それに合わせ昨年11月、①60クラブがそれぞれの地域で輝く②トップ層が、ナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く-の2つのテーマを柱とした新たな成長戦略を発表した。①に基づき、Jリーグは「ローカル露出支援プロジェクト」を発足。「サッカー応援番組」は主要施策の一つだ。

プロジェクトの責任者で、Jリーグ執行役員(クラブサポート担当)の勝沢健さんは「スポーツ全体への関心が落ちているとの調査もある中で、Jリーグを好きになる前にサッカーに興味を持ってもらいたい。誰でも見られる地上波で放送することに大きな意味がある」と話す。

新型コロナウイルス禍で減少した観客を呼び戻したい思いもある。入場料収入が増加すれば、クラブ経営も安定する。(編集委員 北川信行)

https://www.iza.ne.jp/

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