ガンバ大阪、残る2冠を得るために。 遠藤「残り試合全部勝ちますよ」 NumberWeb11月3日(火)10時40分配信

遠藤保仁は、何を失ったのだろうか。

ナビスコカップ決勝でガンバ大阪は、鹿島アントラーズに0-3で敗れた。スコアだけでなく内容的にも完敗で、遠藤も「負けるべくして負けた」と、自分たちがチャンピオンに値しなかったことを認めた。

今シーズンのガンバには、圧倒的な強さがあったわけではない。1stステージは4位、2ndステージも4位でステージ優勝は絶望的だ。また、遠藤 が春のキャンプから「今シーズンはACL制覇がいちばんの目標」と公言してきたACLでも、グループリーグから綱渡りでの勝利がつづいた。準々決勝ホーム での全北現代戦も本来であれば2-1で終わらせるべき試合だったが、終了間際に同点に追い付かれ、米倉恒貴の奇跡的なゴールで3-2でなんとかうっちゃっ たギリギリの勝利だった。

準決勝のホームでの広州恒大戦は、内容的にはパトリックが押さえられてほとんどチャンスを作れず、1点も奪えなかった。スコアは0-0だったがア ウェイでの逆転負け(1-2)が響き、決勝進出を逃した。あまり喜怒哀楽を見せない遠藤だが、試合後はブラジルW杯のコートジボワール戦の敗戦の時のよう に落胆した表情でいた。

逸した、勝って自信をつけていくための機会。

「自分たちに力がなかった……」

遠藤は、チーム状態が万全ではないことは理解していた。連戦つづきで選手は疲弊し、パトリック中心の攻撃も相手に研究されて思うように行かなく なっていた。それでも、タイトルのかかった試合に勝ち続けることで、足りないピースが埋まっていくこともある。南アフリカW杯でフルモデルチェンジした日 本代表がカメルーンに勝って自信をつけたように、ガンバも勝って自信をつけていくしかなかった。だが、その機会をタイトルとともに逸したのだ。

「この悔しさを忘れずに、切り替えて国内3冠獲れるようにやっていく」

遠藤は新たにそう決意を表明したが、広州恒大戦からナビスコカップ決勝までの10日間の流れは悪くなかった。リーグ戦では難敵の仙台をアウェイで 3-1で打ち破り、年間総合ポイントで3位にアップした。チャンピオンシップに出場し、優勝を狙える順位まで上昇し、選手のテンションも上がった。また、 1週間の準備期間が取れたことでコンディション的にいい状態で決勝に挑めた。

なぜナビスコ杯が重要なのか?

ナビスコ杯を獲る重要性は、選手みなが理解していた。2014年の決勝ではサンフレッチェ広島に2点リードされながらも後半、大森晃太郎の逆転ゴールで優勝した。

あの時、試合後、遠藤はこう言った。

「2点差をひっくり返して、広島に勝つことができたのは本当に力がないとできないこと。今の自分たちは強いなと感じられたし、この勢いでいけば3冠は獲れると思う」

「自信」というそれまで足りなかったパーツを「優勝」で埋合わせ、ガンバは勢いを増した。この優勝が3冠達成のスタートになって、偉業を達成できたのである。

今回のナビスコカップも、大事なスタートにしたいと遠藤は思っていた。

前半は圧倒的に攻め込まれたが、それでもなんとかゼロに押さえたことで、「ラッキーだ。ガンバは持っている。後半に勝負すればいい」と思ったはずだ。実際、前半が終わってロッカーに引き上げてくる遠藤の表情には、どこかホッとした様子がうかがえた。

ガンバの勝ちパターンが通用しなかった。

しかし後半も、ガンバのリズムは一向に上がらなかった。むしろ、ウィークポイントが大事なところで出てしまった。パトリックがファン・ソッコと昌 子源にマークされて自由にプレーできず、ボールが入ってもすぐに潰された。そのために押し上げることができず、ほとんど攻撃の型を作ることができなかっ た。広州恒大戦後、遠藤は「フィニッシュの精度と工夫と選手間の距離感や意外性が必要」と語ったが、決勝ではそのどれもが足りなかったのだ。

長谷川健太監督は「慢心があった」とメンタル面での隙を敗因の要素のひとつとして挙げていた。たしかに前半を無失点に押さえた時に、緩慢な空気が 流れたのかもしれない。内容が悪いなりにも耐えて、最後はポンと点を入れて勝つ。ある意味ガンバの勝ちパターンでもあったが、決勝はそれほど甘くはなかっ た。しっかりとガンバ対策を練って準備し、勝ちたい気持ちを前面に押し出してきた鹿島に、完膚なきまでに叩き潰された。

「大事な試合で力を発揮できなかったことは、まだまだ自分たちは力不足だということ。今年は、そういう大きな試合を経験してきたし、これからも経験 できる可能性があるんで、次は落ち着いて試合を運べるようになればいい。優勝するチャンスを2つ逃したけど、そう簡単には優勝できない。チャンピオンにな る難しさを感じた。今日それを学べたので、それをモチベーションにしてやっていくべきだと思うし、チャンピオンになるためにもっと努力が必要だと思いま す」

遠藤「残り試合全部勝ちますよ」

チャンピオンになるために必要なもの。百戦錬磨の遠藤なら十分わかっていることだが、相手に見せ付けられることで再認識することもある。

相手を分析し、選手個々がやるべき仕事をしっかりこなす。「勝ちたい」気持ちを前面に出してファイトする。ここ数年、遠藤はよく「気持ち」の重要 性を説くが、勝ちたい気持ちが出てくれば相手よりも一歩前にいけるし、球際も厳しくいける。小さな局面での勝ちを積み重ね、相手をひとつひとつ上回ること でチーム全体として優位に試合を展開することができる。鹿島はそれを90分、やりつづけた。

試合後、ピッチで遠藤はコーチの大岩剛や柳沢敦らと話をし、鹿島の強さとチーム作りを称賛した。チームをより強くし、多くのタイトルを獲れるビッグクラブにしたいという思いを持つ遠藤にとって、17冠を持つ鹿島はお手本とすべきチームだった。

「今シーズン、これだけいいチャレンジをしてきて、来シーズンACLに出れないのはさびしい。なんとしても出場権を獲らないといけないんで、残り試合全部勝ちますよ」

遠藤は、そう誓った。

もう一度、チームを建て直す。そうしてチャンピオンシップと天皇杯の2つのタイトルを獲る。この敗戦がチームをさらに一皮むけさせるためのキッカ ケとなり、良薬になればいい。惨敗でも遠藤の表情が心なしか穏やかに見えたのは、失ったタイトルから2冠を獲るための「何か」が見えたからだろう。

Share Button