U-15日本代表候補が合宿最終日の紅白戦で熱量ある戦い。平田監督「自分のストロングを1試合で1回でも、2回でも出せるように」
2008年生まれ以降で構成されたU-15日本代表候補はJ-GREEN堺(大阪)合宿最終日の10日、紅白戦を行った。3チームに分かれ、各チームが20分ゲームを計2本戦う総当り方式で実施。気持ちの込もった戦いで5日間の合宿を終えた。U-15日本代表候補は、2年後のU-17ワールドカップを目指すチームで今活動から本格始動。次回は4月にスペイン遠征を行う予定となっている。
最終日の紅白戦は、熱量の高さが周囲に伝わるような攻防戦だった。前日のミーティングでU-17日本代表の森山佳郎監督の話などを聞き、代表の責任感や1回1回の活動、日々の重要性などを再確認。目の前の相手に勝つため、自分のプレーを出し切るため、選手たちのモチベーションは非常に高かった。
CB大島琉空(VIVAIO船橋Jrユース)は「昨日の話の中で森山さんから(熱量のあるプレーを見せていた選手として)チームメート2人の名前が上がったんですけれども、名前の挙がった選手に対して、自分が負けているなと思ったので。今回、あと1日しか無いので、そこで、もっと自分の力を出さないとなと改めて思って、『最後、自分が全部やる』という意志で戦いました」と振り返る。
中学卒業式で帰郷した左SB針生涼太(FCフォーリクラッセ仙台)と練習試合(8日)での接触プレーの大事を取った右SB 田中遥大(FC東京U-15深川)が欠場。GKは新堀恵太(FC東京U-15むさし)、渡邊麻舟(FC東京U-15深川)、内田康楠(清水Jrユース)、佐藤陸斗(山形Jrユース村山)の4人が各30分間ずつプレーした。
フィールドプレーヤー30名はビブス緑とビブス白、ビブルオレンジの3チームを構成。緑は右SB篠崎健人(鹿島つくばJrユース)、CB米湊勇弥(鳥栖U-15)、CB渡邉春来(東京VJrユース)、左SB坂口佑樹(神戸FCJrユース)、MF野口蓮斗(ソレッソ熊本)とMF山縣優翔(千里丘FC)のダブルボランチ、右SH原湊士(広島Jrユース)、左SH加茂結斗(柏U-15)、FW葛西夢吹(リベロ弘前SC U-15)、FW吉田湊海(FC多摩Jrユース)。吉田湊はボランチ、野口は左SH、加茂は前線でもプレーした。
白は右SB大野廉門(鳥栖U-15)、CB宇南山新太(会津サントスFCJrユース)、CB吉田遥翔(スプレッドイーグルFC函館)、左SB小川直澄(浦和Jrユース)、MF神谷輝一(名古屋U-15)、MF加藤孝一朗(松本U-15)のダブルボランチ、右SH平島大悟(鹿島Jrユース)、左SH塩尻哲平(C大阪西U-15)、FW安西来起(さぬき市立さぬき南中)、FW岩崎亮佑(横浜FCJrユース)。2本目は大野と小川が中盤へ上がり、神谷と平島がSBを務めていた。
オレンジは右SB西村水岐(神戸U-15)、CB児玉一成(京都U-15)、CB大島琉空(VIVAIO船橋Jrユース)、左SB高橋温郎(浦和Jrユース)、MF川端彪英(京都U-15)とMF廣岡瑛太(柏U-15)のダブルボランチ、右SH姫野誠(千葉U-15)、左SH安井司(G大阪Jrユース)、FW田中陽瑛(横浜FMJrユース)、FW山崎琉偉(新潟U-15)のメンバー。2本目は児玉と西村がポジションを入れ替え、また安井が前線へ上がり、姫野が左SH、山崎が右SHを務めていた。
第1試合は白対緑。白は守備からリズムを掴み、塩尻や岩崎がボールに係わる形で最終ラインを突破しようとする。だが、緑は決定打を打たせず、逆に山縣の奪い返しなどから吉田湊がフィニッシュへ持ち込む。
そして、15分、山縣のパスで左を抜け出した加茂が中央へラストパス。これを吉田湊が左足で決め、緑が先制した。緑はさらに19分、加茂とのコンビで吉田湊が左へ抜け出す。そして、ラストパスを原が1タッチで決めて2-0。その直後にも山縣の絶妙なスルーパスで吉田湊が抜け出し、左足で決めて3-0で緑が勝った。
続くオレンジ対白は4分、オレンジが先制。姫野とのコンビで田中陽が右中間へ抜け出し、GK佐藤がセーブしたこぼれを山崎が決めた。7分にも西村のスルーパスから田中陽が抜け出してPKを獲得。これを自ら決める。
オレンジは中盤で川端らがボールを回収し、連動した動きから次々と相手の背後を狙う。白も右SB神谷らが相手の攻撃を食い止め、左SB平島が攻め上がりからクロスを上げるシーンがあったものの、無得点。逆にオレンジは安井のドリブル突破や川端のシュートなどでゴールへ迫ると20分、児玉の跳ね返しから素早く攻め、姫野がGKとの1対1を左足シュートで制した。 “優勝決定戦”となった緑対オレンジは積極的に攻め上がるCB大島らオレンジが厚みのある攻撃。だが、緑はGK新堀のファインセーブでピンチを逃れると6分、スピードある攻守を見せていた左SB坂口が右サイドからCKを蹴り込む。混戦から最後はCB渡邉春の右足シュートがゴールラインを越え、緑が先制した。
この試合、新堀、渡邊麻の両GKが好セーブ。オレンジは川端を中心とした攻撃でゴール前のシーンを作るも、1点を奪うことが出来ない。逆にボランチの吉田湊やFW葛西がゴールへ迫る緑は16分、野口との左ショートコーナーから山縣がピンポイントのクロスボール。これをファーのCB米湊が頭で決める。さらに20分、加茂のドリブルを起点とした攻撃から最後は吉田湊のパスを受けた原がカットインシュートで2戦連発。緑は篠崎、米湊、渡邉春、坂口の4バックやGK新堀、GK内田が無失点で終え、3-0で勝利した。
熱量のある戦いで、特に緑は2試合連続3-0と結果を残した。だが、平田監督は「(緑が3点取ったが)最後の4点目取れなかったので、そこは足りないんじゃないかと伝えようと思います」。今後、アジア、世界では1点が勝負を分けることもある。だからこそ、最後まで決め切ること、守り切ることを求めていた。
また、エネルギーのある戦いにも、指揮官は「もっと出せますね、彼らは。(自分たちの力で)出せると思います。(今回の活動で得た基準や適応力)これを当たり前にして、(次の活動を)スタートするべきだと思う」。満足して終わるのではなく、課題を持って次へ。「(経験豊富な)木村(康彦)コーチからこれまでの歴代の話をしてもらっていますが、(久保)建英は(15歳の時に)上(の世代の代表チーム)で出ていたぞとか、これが代表のあるべき姿だと思う」(平田監督)。貪欲に上の世代のチームに入ることを目指し、U-16、U-17の代表チームへ個人昇格する選手がどんどん出てくることも期待した。
平田監督は今回、U-15代表候補合宿に参加できなかった選手に対してメッセージ。「情報はいっぱい入ってきていますし、今までのリストの中にもたくさんいるので、人が『おっ』と思うようなプレーをしたら呼ぼうかという空気感があるので、サッカーは(そのようなチャンス、)夢のあるところなので、自分のストロングを1試合で1回でも2回でも出せるように過ごしてもらいたいですね」。今回の活動に参加した選手たちが、キーワードの適応力、強度、切り替えの速さなど基準を高めたことは確か。だが、まだまだ絶対の存在ではなく、初代表を目指す選手もどこにチャンスがあるかは分からない。常に高い基準やストロングポイントを発揮し、そのチャンスを掴めるか。2008年以降生まれの“08ジャパン”は世代全体で競争し、レベルアップする。