小野瀬康介の新境地。G大阪を契約満了となった男が湘南ベルマーレに与える影響【コラム】

明治安田生命J1リーグ第2節、湘南ベルマーレ対横浜FCが24日に行われ、2-2の引き分けに終わった。湘南において特筆すべきは、2試合で7得点を挙げている攻撃陣。ガンバ大阪を契約満了となり、湘南に加入した小野瀬康介は、中盤で新境地を開拓している。(取材・文:加藤健一

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●湘南ベルマーレを活性化させる小野瀬康介

開始わずか12秒で失点を喫したが、湘南ベルマーレは慌てていなかった。サガン鳥栖との開幕戦と同様に鋭いプレスを繰り出し、後ろから繋ごうとする横浜FCに襲い掛かった。すると、17分に同点弾が生まれた。

起点となったのは、右サイドのタッチライン際でボールを持った小野瀬だった。ボールを受けるや否や前を向き、前線へ浮き球のパスを送る。「最初は町野(修斗)が見えたから町野に出そうと思ったんですけど、奥に(大橋祐紀が)走っているのが見えて、そっちだという感覚で蹴った」

小野瀬のパスは相手ディフェンスラインの裏のスペースへ放たれ、大橋が走りながら頭で合わせ、これが並走する町野の下へ。町野は対峙したンドカ・ボニフェイスを切り返してかわし、左足でゴールネットを揺らした。

その後もショートカウンターを中心に湘南は横浜FCゴールに迫り続けた。後半は相手の修正におされて同点に追いつかれたが、開幕戦に続いて20本を超えるシュートを放ち、2試合連続で複数得点を奪った点は評価していいはずだ。

小野瀬はこの試合でチーム最多となる6度のチャンスクリエイト、19回のアタッキングサードパス数を記録。新加入の小野瀬の活躍がチームに与える影響は大きい。

●新たなポジションで開拓する新境地

小野瀬はこれまでサイドを主戦場とすることが多かった。しかし、湘南で与えられたポジションは右のインサイドハーフ(サイドボランチ)。ピッチの中央でプレーする時間も多く、これまでとは違う景色のはずだが、いきいきとプレーしているように見える。「自由にやらせてもらっています。貢献できているなら嬉しい」と小野瀬は話しているが、その自由こそが今季の湘南の躍動を生み出している。

前半終了間際には、右サイドから小野瀬が折り返し、平岡太陽がボレーシュートを放つシーンもあった。「あれは感覚で、誰かニアに入ってきて後ろに誰か来てくれと。(平岡が)いいところに入ってきてくれたのでイメージ通りだった」と、加入から間もない中でもイメージを共有できている。

周囲との連係が構築できている理由を、小野瀬はこう話す。

「元々できあがっているチームに(新加入の)僕が合わせる形から入っている。『こういうプレーもできる』というプレーを見せていって、今の形になっている。もっと良くなっていくと思う」

2021年9月から指揮を執る山口智監督の下で、湘南ベルマーレはブレないスタイルを貫いている。ボール保持・非保持にかかわらず、最適なポジションを取り続け、優位性を作り出していく。ベースとなる戦い方があるからこそ、小野瀬のフィットも早かったのだろう。

もう一つの理由は、小野瀬のこれまでの経歴にある。

●活躍を支える試合中のやり取り

小野瀬と山口監督は、2018年途中から2年半、コーチと選手という立場でガンバ大阪で戦った間柄。山口がヘッドコーチを務めた2020年にガンバは2位となり、小野瀬も主力として活躍していた。

開幕前にはチームに「智さんのいじり方を教えたい」と茶目っ気を見せていたが、「智さんはダメなところも、自分の課題も言ってくれる」と言うように2人は深い信頼関係で結ばれている。

開幕節から試合中のプレーが途切れたタイミングで、2人がピッチ脇で話している姿をよく見かける。「(ピッチの)外からと中からでは見え方が違う。状況共有しながら話している」。こうしたやりとりが、今季の湘南のスタートダッシュに大きく寄与しているのだろう。

「5位以内」を目標に掲げる湘南は、幸先の良いスタートを切った。しかし、チーム内で数少ない「5位以内」を知る小野瀬は課題も感じている。「前半できたことを90分できていれば今日も勝てたんじゃないかと思う」と悔しさをにじませていた。

「前へ出ていく力だったり、プレッシャーというのは強みとして持っている。相手もかなりパワーを持ってやってきた後半は、前半よりもロングボールが増えた中でセカンドボールを拾えなかった。(プレスに)行ききるのか行かないのかをチームで話さなきゃなと」

ガンバを契約満了となり、湘南へ加入した小野瀬は「後がないんで」と言う。まもなく30歳となるこの男にとっても、湘南が上を目指すためにも今季はターニングポイントのシーズンになる。 (取材・文:加藤健一)

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