宇佐美貴史が語る2023年シーズン。「ガンバのサッカーはこれだ、と言いきれるスタイルを確立させたい」

ガンバ大阪宇佐美貴史インタビュー(後編)

2020年シーズンこそ、リーグ2位の結果を残したものの、2021年シーズンは13位、2022年シーズンも15位と低迷が続いているガンバ大阪。スペイン人のダニエル・ポヤトス新監督を迎えた今季、”王者復活”への足がかりをつかみたいところだが、チームの中心選手である宇佐美貴史はどれほどの手応えを得ているのか。開幕前のキャンプ中に話を聞いた――。

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◆前編/宇佐美貴史が語る、背番号「7」への思い>>

――今シーズンのガンバ大阪の戦いについても伺いたいと思います。ダニエル・ポヤトス新監督を迎えての新シーズンに向けて、どんなオフを過ごされたのでしょうか。

「昨年、11月19日のフランクフルト戦を終えてから、例年より長い約2カ月のオフがありましたが、3週間くらい体を休めて以降は、基本的には3日動いて1日休む、みたいなスケジュールで体を作ってきました。これまではチームの始動日に60~70%の状態まで上げて、あとはボールフィーリングやプレーの感覚を戻していく感じでしたが、今回はもう少し意図的に強度を落とし、わりとリラックスした感覚で体と向き合ってきたところもあります。

年齢が上がれば体も少しずつ変化していくからこそ、その時々の体の声にしっかり耳を傾けて、疲労になりそうだなと感じたらセーブするとか、もう少し突っ込んで取り組んだほうがいいなと思ったら少し強度を上げるというように、体と相談しながら必要な準備をしてきました。そういう意味では、例年ほどコンディションを上げずに始動日を迎えたところはありますが、開幕戦にピークを持っていくイメージはできているので、状態としてはすごくいいです。

ただ唯一、右アキレス腱周りの筋肉だけは休めずにずっと動かしてきました。というのも、Jリーグ最終戦が終わったあと、4日間のオフがあった時に、戦列に復帰してから初めてべったり体を休めたら、一気に右アキレス腱周りの筋肉が落ちてしまったんです。おそらく急ピッチで体を作ったからだと思うんですけど、その時の経験をもとに、右アキレス腱だけはメディカルスタッフにもらったメニューに沿って意識的に動かすようにしていました」

――例年に比べてメディア出演や、子どもたち向けのサッカー教室など、イベントにも積極的に参加しているように見えました。

「そうですね。ここまで長いオフは初めてだったし、ましてやオフ期間中、何もせずに休んでいるだけだと、僕の性格的にサッカーのことだけを考えてしまって、ついつい体を動かそうとしてしまいますから。

でも、自分にとっては昨年の、ケガをして、長期離脱となり、復帰して残留を争って……という、心身両面でハードな一年を過ごした流れを思い返しても、一度しっかりサッカーを頭から切り離す時間が必要だと思っていたので、それならメディア出演やサッカー教室などに参加して、違う刺激を入れてリフレッシュしたいなと。そのほうが逆に、自分が一番休まると思い、あえてそういう場に積極的に出て行っていました。

また、このくらい長いオフがないと、現役中にイベントに参加するのはなかなか難しいので、せっかくだから子どもたちにいい刺激を入れてあげたいなとも思っていました」

――チームが始動してからまだ間もない状況ですが、現時点で、新チームにはどんなことを感じていますか。

「素直に『いいな』って思います。ポヤトス監督はすごくフレンドリーで、話す言葉もメッセージ性が強いですし、選手やスタッフなど一緒に仕事をする仲間へのリスペクトもすごく感じます。基本的には通訳を介して会話をするんですけど、通訳がいる感じがしないくらい壁がない雰囲気もある。いろいろと準備されてきたからだと思いますが、近年のガンバに対する理解も深いですしね。

サッカーについては、これから段階を踏んで戦術を突き詰めていくことになるはずですが、どのトレーニング、シーンでも、監督からは『自分たちがボールを持つよ、回すよ』と徹底して伝えられていて、練習の強度やメニューもそこから逆算した意図を感じられる内容が多いです。ただ正直、練習はめちゃめちゃキツい! 中盤から前線の選手にかけては、特にロンド(ボール回し)が攻守に激しいので、頭も体もめちゃめちゃ疲れます。

でもその先に、監督の描くサッカーが常に見えていることで、無闇やたらに強度が高いトレーニングじゃないと思えるのは救いです(笑)。なので、あとは監督の描くサッカーを選手がどれだけ理解し、表現していけるのかなと。

正直、近年のガンバはその『ボールを持つ、回す』ことから遠ざかりすぎてきた流れがありますが、プラスに考えれば、まっさらな状態だからこそ、毎日繰り返すことでチーム全体がそういう意識、脳、体になっていくのも早いんじゃないかと思っています」

――そのスタイルで”決めきる””勝ちきる”ために、必要だと感じていることを教えてください。

「最後はやっぱりメンタリティなのかな、と。というのも、崩しの形や攻撃に向かう意識は、今のトレーニングを毎日続けていけば出来上がっていくと思うんです。ただ、それを試合で貫けるか、勇気を持ってプレーを選択していけるか、仕上げのところでいかにゴールに向かえるかは、個人の意識によるところも大きいのかなと。

監督も、『昨年までのガンバは個々の能力は高いのに、試合のなかで不都合な現象が起きた時に、(自分たちがやろうとしているサッカー、プレーが)できなくなるまでのスピードがすごく速かった。自分たちにとってよくないことが起きた時のリバウンドメンタリティや、トライし続けるメンタリティが足りていない』とおっしゃっていましたが、まさにそれは僕も感じていることで……。

だから、苦しい状況に追いやられた時に勇気を持った判断、プレーができず、自分たちでより窮地に追い込まれる状況を作り出してしまっていた。そう考えても、自分たちが目指すサッカーを試合のなかでも貫く、やりきろうとするメンタリティをそれぞれが備えることも不可欠だと思います」

――宇佐美選手にはどんなタスクを与えられているのでしょうか。

「監督からは、『貴史には、僕がやりたいサッカーを一番理解しておいてほしいし、それを表現するためのリーダーシップをピッチで示してほしい』と繰り返し言われています。仮にピッチ上で他の選手が判断を迷うようなことがあっても、その場で修正できるくらい戦術を理解し、仲間を導いてほしい、と。

それは昨年終盤、戦列に復帰した4試合でも意識していたし、年齢を考えてもそういう責任を追うべき立場だと思うので、積極的に取り組んでいきたいです」

――個人的な目標は「ふた桁得点」と明言されています。ご自身がフィニッシュに絡むプレーを増やすために意識したいことを教えてください。

「”9番”的な役割というか、ストライカーとしてゴール前でチャンスを待ち続けようとは思っていません。監督にも『それでは貴史のよさが出ない』と言われていることからも、チャンスメイクをより求められるシーズンになるのかな、と。イメージとしては、数多くボールを触ってリズムを作り、フィニッシュから逆算して3~4つ前で起点になりながら、ゴール前に入っていく、みたいな。

それには、間違いなくチームメイトの協力、クオリティも必要ですが、個々の選手の特徴からもめちゃめちゃいいイメージは湧いています。また、そうやってチャンスメイクの数が増えれば、必然的に自分の得点機会も増え、ゴール数も見出していけるんじゃないかと思っています」

――新体制発表会で、ポヤトス監督は「目標はACL(AFCチャンピオンズリーグ出場)圏内」だとおっしゃっていました。その目標設定をどう受け止めているのか。また、そこに向けてどんな近づき方をしていきたいと考えているのかを聞かせてください。

「もちろん”タイトル”を口にできればいいですが、今のガンバがそこを平気で口にするようでは、逆に危機感がないと思うんです。”ACL圏内”ですら、やや高い目標かもしれない。ただ、先ほどの身の丈の話と同じで、その目標に自分たちを合わせていくことを考えるうえでは、いい目標設定だと思います。

とはいえ、僕は単に数字として目標を達成すればいいとは思っていません。昨年のJリーグ王者である横浜F・マリノスしかり、上位を争うチームは常に確固たるスタイルを打ち出して、戦い続けてきたことで常勝チームとしての姿があると考えても、今シーズンこそ『ガンバのサッカーはこれだ!』と言いきれるスタイルを確立させたい。

つまり、ファン・サポーターのみなさんが『今日はこういうことができたから勝てたよね』と論理立てて説明できるくらいのチームになることで、目標に近づいていきたいな、と。それが、ガンバがかつての強さを取り戻すためのベースになっていくと思っています」 (おわり)

宇佐美貴史(うさみ・たかし)1992年5月6日生まれ。京都府出身。ガンバ大阪のアカデミー育ち。2009年、高校2年次にトップチームの昇格。2011年夏にはドイツの名門、バイエルン・ミュンヘンに移籍。翌シーズンはホッフェンハイムでプレーし、2013年にガンバへ復帰。2014年シーズンには、リーグ、カップ、天皇杯と三冠達成に貢献した。その後、再び海外へ。アウクスブルク、デュッセルドルフでプレーし、2019年に再びガンバへ復帰。以降、チームのエースとして奮闘している。

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