【ナビスコカップ決勝】“9.1パーセント”に懸けたG大阪の「不敗神話」が終焉。遠藤と今野も「負けるべくして負けた」と敗北を甘受 SOCCER DIGEST Web 11月1日(日)7時0分配信

G大阪が鹿島に逆転勝利する可能性は「9.1パーセント」しかなかった。

 鹿島に先制を許した時点で、G大阪が逆転できる可能性は「9.1パーセント」だった。その数字は、決して不可能ではないが、極めて難しいことを意味する。

ナビスコカップは1992年から2014年大会まで過去22回行なわれ、ホーム&アウェーで実施された97年大会を除くと、決勝の舞台で逆転劇が起きたのは2回。93年のV川崎と14年のG大阪のみだ。その統計から弾き出されたのが「9.1パーセント」である。

前回大会でG大阪は、0-2の劣勢から3点を決めて広島に逆転勝利しており、G大阪サポーターの脳裏には昨年の劇的な展開がよぎり、こう思ったに違いない。奇跡再び――と。しかし、サッカーの神様が今回用意したシナリオは『鹿島の圧勝劇』だった。

内容はスコア以上の完敗だ。12分には遠藤保仁が中村充孝のミドルシュートを頭で逸らし、40分には丹羽大輝がゴールライン手前でボールを掻き出したが、そのふたつの好プレーがなければもっと早くに先制点を献上していただろう。

遠藤が「鹿島が良かったのもあるけど、僕らが悪すぎたっていうのもある。試合の入りも良くなかったし、攻撃もちょっと単調になりがちでした。負けるべく して負けたと思う」と語れば、今野泰幸も「今日は本当に叩きのめされた。去年の夏以降、ここまでやられたっていうのはない。負けるべくして負けたのは久し ぶり」と振り返る。

経験豊富なふたりが「負けるべくして負けた」と口を揃えるのだから、ピッチで感じた鹿島の強さは相当なものだったはずだ。

次のページでは、「LIVEトラッキングデータ」から今回の一戦を紐解く。

【LIVEトラッキング分析】「ボール支配率」「走行距離」「スプリント回数」の3項目でチェック。

 今回の決勝では「LIVEトラッキング」のデータが1分ごとに更新され、試合の推移を「ボール支配率」「走行距離」「スプリント回数」などで表示した(※データは関連記事を参照)

「ボール支配率」を見ると、最初の15分間は鹿島が攻勢を強めていたのが分かる。G大阪は後半から盛り返し、ボールを保持する時間が増えたものの、鹿島の先制後は前がかりになる時間が増加。逆にカウンターを浴びる機会が増えて、3点目も速攻から奪われた。

「走行距離」はどの時間帯も1キロ程度しか違わず、運動量自体はそう大きく違わない。守備で走らされていた感のあるG大阪だが、肝心の攻撃は機能不全に終わっており、最終的には鹿島のほうが上回っている。

「スプリント回数」は、最終的な数値はG大阪が3回多いものの、3得点の鹿島と3失点のG大阪では意味合いが異なると推察できる。シュート数は鹿島の24本に対して、G大阪は5本。それに照らし合わせれば、鹿島側は主に攻撃、G大阪は主に守備のものと言えそうだ。

長谷川イズムの根幹を成す「球際の激しさ」「攻守の切り替え」「ファストブレイク」で後手に回る。

 前述の「LIVEトラッキングデータ」は最終的にほぼ互角の数値ながら、内容は鹿島に圧倒された。その原因はどこにあったのか。遠藤の言葉がすべてを物語る。

「前でキープできれば、それだけタメができるので押し上げやすいというのはあった。守備にしても、ディフェンスラインを高い位置で設定できていれば、前線の選手も高い位置を取れた」

「一概に前だけの問題でもない」としながらも、「チーム全体がちょっと押し込まれすぎたというのが今日の敗因のひとつ」と総括した。

前半の不甲斐ない出来を見かねた長谷川監督は、ハーフタイムに次のようなコメントを送っている。「去年に比べればまだまし(編集部・注/14年決勝は前 半を終えて1-2とリードされていた)。十分チャンスはある。頭の中をクリアにして、自分たちのやるべきことを後半の初めからやる。戦わないと勝てな い」。

しかし後半にセットプレーも含めて3失点と崩れ、試合後に指揮官は「ザックリ言えば、鹿島の『勝ちたい、タイトルを獲りたい』という気持ちが我々のそれ を凌駕した」と振り返った。長谷川イズムの根幹を支える「球際の激しさ」「攻守の切り替え」「ファストブレイク(速攻)」でいずれも後手に回る形となった のだから、完敗は必然だろう。

トップ下に入った倉田も「運動量や気持ちの部分で明らかにこっちが劣っていた」と証言する。

「すべてがハマらんかったし、向こうのやりたいように好き勝手やられた。めっちゃ強かったし、なにもさせてもらえへんかった。要はこっちが悪かった。最悪の結果でしたね」

タイトルを明け渡し、10月下旬以降の不敗神話も終焉。

 序盤に猛攻を受けて“混乱”が疫病のように広がり、先制点を与えた後は“動揺”が伝播し、三冠経験チーム同士の対決は鹿島に軍配が上がった。今季で3年目の長谷川体制において、10月下旬以降の黒星は初。それは終盤戦の「不敗神話」が途絶えたことを意味する(※年度別の詳細は関連記事を参照)。

3年間の10月下旬以降の戦績は、13年が5勝1分、14年が6勝2分。そして今季も10月21日に広州恒大にホームで引き分け、25日にアウェーで仙台に競り勝ち、尻上がりに調子を上げそうな予感を漂わせていた。ACLはベスト4で敗退も、2年連続の三冠も視界に捉えていただけに、ここでタイトルを獲得 していれば“快進撃”の機運が高まったはずだ。

結局、王座から引きずり降ろされてタイトルを明け渡し、終盤戦(10月下旬以降)の不敗神話も終焉。11月7日にはホームでの広島戦が控えているが、この一戦に敗れると広島の優勝に加え、G大阪は年間3位からの転落もあり得る。2試合続けて目の前で相手チームの胴上げという展開は、三冠王者にとって屈辱以 外の何物でもない。

もっとも、11月以降に限定すれば不敗神話は継続しており、広島戦で弾みをつけて再び波に乗れるか。真価が問われる一戦となりそうだ。

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