サッカー通信 スタイル一変の柏、上位進出へ期待感
サッカーJ1の柏がスタイルを一変させた。12日に行われたJ2千葉とのプレシーズンマッチで基本布陣を昨季の3バックから4バックへ変え、5人の新加入選手が先発。試合はミスが目立って2-3で敗れたものの、J2山形から移籍の山田が2得点に絡むなど期待感も抱かせた。ネルシーニョ監督は敗戦に不満を示しつつ、「クリエーティブな選手がそろっている。連係面の不安を解消したい」と18日に開幕戦を迎えるJ1の上位進出を見据えた。
3バックを基本布陣に優勝争いにも顔を出した昨季とは違い、千葉戦で採用したのは4-3-3だった。中盤はいずれも新加入で、アンカー高嶺の前に仙頭と山田が並ぶ。右サイドバックに片山、センターバックの一角に立田とやはり新加入選手が入って顔触れは大きく変わった。
中盤の3選手は際立った個人の身体能力や技術で勝負するタイプではなく、巧みなポジショニングや的確な判断で試合をコントロールする実力者だ。3トップのセンターフォワード細谷、左右の両ウイングに入った小屋松とマテウスサビオらと連係を深めていけば、効果的な攻撃を繰り出すポテンシャルを感じさせる。
千葉戦で見せ場も作った。0-2の前半32分、仙頭からパスを受けた小屋松が左サイドを突破してクロスを送る。細谷のシュートはDFにブロックされたが、詰めていた山田がネットを揺らした。1-2の後半6分にはマテウスサビオからのパスを受けて右サイドをえぐった山田のクロスを、ゴール前で細谷が頭で合わせた。
既存選手と新戦力の融合によって奪った両得点は、今季の柏が秘める可能性を示した。山田は「ボールを持てばいい攻撃ができる選手がそろっている」と手応えを口にする。細谷が「きょうは攻撃陣の連係をうまく出せなかった。自分がもっと点を決めていれば楽に試合を運べた」と課題を挙げたのも、目指すレベルが高いからこそだろう。
途中出場だった中盤の椎橋や戸嶋、前線の武藤らも実績があり、千葉戦はメンバー外だった新加入のジエゴも攻撃参加が魅力のレギュラー候補だ。上島や大南ら最終ラインの主力が抜けたのは不安材料とはいえ、戦い方の幅やゴールをこじ開ける期待感という点では昨季以上といっていい。
中盤で不用意にボールを失ってピンチを招くシーンは頻出した。前半19分にGK佐々木のクリアボールが味方DFに当たったのをきっかけに先制を許し、前半30分の2失点目も最終ラインの連係ミスが原因。ネルシーニョ監督が「初歩的なミスで2点を失った」と槍玉に挙げたのも当然で、上位を争うには安定感を欠くのも事実だ。
攻守に高レベルで、チームとしての戦い方も浸透している横浜Mや川崎と渡り合うには物足りない。しかし、2020年に28ゴールで最優秀選手と得点王に輝いたオルンガのような圧倒的な個人に依存するスタイルからは脱却しつつある。今季はチームとしてゴールへ迫る新たなサッカーでサポーターを楽しませてくれるかもしれない。(運動部 奥山次郎)