2023年Jリーグ戦力値ランキング1~9位。J1全18クラブの陣容を分析。優勝候補はどこ?
明治安田生命J1リーグは17日に開幕する。アルビレックス新潟と横浜FCを加えた18チームで行われる今季のJ1で、横浜F・マリノスの連覇を阻止するチームは現れるのか。今回は、各チームの戦力を4項目(攻撃、守備、選手層、勝負強さ)に分けて数値化(各25点の100点満点)し、ランキング形式で紹介する。
●9位:ヴィッセル神戸
監督:吉田孝行
2022順位:13位(35得点/41失点)
2022成績:勝ち点40(11勝7分16敗)
戦力値:77(攻撃力19、守備力20、選手層19、勝負強さ18)
昨季のヴィッセル神戸は降格圏をさまよったが、豊富なキャリアを持つベテランを中心に結束した終盤戦で勝ち点を積み上げた。昨年6月から指揮を執る吉田孝行監督の下で戦う今季、ジェアン・パトリッキ、齊藤未月などが加わり、派手さはないが堅実な補強となった。
山口蛍、酒井高徳、大迫勇也、武藤嘉紀といったベテランは、コンディションさえ整っていれば今季も期待に応える活躍を見せてくれるだろう。チームとしての課題は彼らのような軸となる選手を増やせるか。アンドレス・イニエスタやセルジ・サンペールはフル稼働が難しいことを考えると、齊藤への期待は高まる。さらに、大崎玲央、山川哲史、菊地流帆といったあたりの活躍が浮沈のカギとなるかもしれない。
センターバックの選手層が薄く、アタッカー陣には新加入選手が多いなど、不安要素は上げられる。オフを経て上位を狙える戦力は整ったが、昨季の悪い記憶もちらつく。
●8位:名古屋グランパス
監督:長谷川健太
2022順位:8位(30得点/35失点)
2022成績:勝ち点46(11勝13分10敗)
戦力値:78(攻撃力18、守備力22、選手層19、勝負強さ18)
34試合を戦って30得点35失点という結果では、上位争いに加わることは難しかった。GKランゲラックを擁する守備陣は3バック変更を機に最適なバランスを見つけたが、ファストブレイク頼みだった攻撃は迫力を欠いた。
得点力不足解決のカギはキャスパー・ユンカーの加入だ。ユンカーが最前線を走ることで、永井謙佑やマテウス・カストロの特徴も活きるだろう。和泉竜司、山田陸、米本拓司という中盤な新たな顔ぶれは、中盤に新たなオプションをもたらす。野上結貴の加入により、3バックも高いレベルの競争が生まれている。
相馬勇紀らが抜けたウイングバックの人選など、やや不安要素を残す部分もあるが、今季は不安が期待を上回るシーズンとなりそうだ。長谷川健太監督は清水エスパルス、ガンバ大阪、FC東京でそれぞれ2年目に結果を残している。堅守は浸透しているだけに、課題は明確。昨季はラスト15分の得点数がリーグワースト2位タイの5得点。交代選手も含めた攻撃陣のクオリティが上がれば、昨季以上の順位も見えてくる。
●7位:浦和レッズ
監督:マチェイ・スコルジャ
2022順位:9位(48得点39失点)
2022成績:勝ち点45(10勝15分9敗)
戦力値:79(攻撃力19、守備力22、選手層20、勝負強さ18)
3年計画の最終年だった昨季は、国内タイトルに遠く及ばず、リカルド・ロドリゲス監督はチームを去った。江坂任やキャスパー・ユンカー、松尾佑介ら攻撃の色を生み出していたタレントが抜け、マチェイ・スコルジャ監督がどのようなチームを作るのかに注目が集まる。
ポーランド人指揮官はハイプレスを基調に主導権を握るスタイルを浦和に落とし込もうとしている。ユンカーらは抜けたが、ブライアン・リンセン、アレックス・シャルク、ダヴィド・モーベルクら外国人アタッカーの枚数は揃っており、興梠慎三の復帰や髙橋利樹の加入により、昨季とは異なる特徴を持つ攻撃陣ができそうだ。
文句のつけようがないパフォーマンスを見せたアレクサンダー・ショルツの相棒として、マリウス・ホイブラーテンが加わった。怪我から復帰する犬飼智也、残留することとなった岩波拓也も控えており、守備陣の選手層は分厚い。
昨季の順位より上を目指せる陣容は揃っているが、監督交代による影響を加味してやや控えめな評価とした。ただ、前政権の遺産を残しつつ新たな色が加われば、1年目から結果を残すことも可能だ。
●6位:FC東京
監督:アルベル
2022順位:6位(46得点/43失点)
2022成績:勝ち点49(14勝7分13敗)
戦力値:80(攻撃力20、守備力19、選手層21、勝負強さ20)
アルベル監督の下で戦った最初のシーズンは、新たなスタイルの手応えと課題の両面が見えた年になった。高いボール保持率で試合の主導権を握りつつ、アダイウトンらの特徴を活かすショートカウンターも効果を発揮した。一方で、試合によって好不調の波があり、サガン鳥栖や湘南ベルマーレといったインテンシティの高い相手との相性が悪かった。
昨季をベースに特徴のある選手が各ポジションに加わった。MF小泉慶、SB徳元悠平、FW仲川輝人の加入により、戦力の底上げが実現。熊田直紀や東廉太といった昇格組も時代を担う有望なタレントだ。仲川の加入により速攻の威力やフィニッシュパターンは増え、小泉の加入により中盤の守備強度が増す。アルベル監督の志向するゲームを支配するスタイルに合った補強となっている。
主力の退団が多い上位陣が多い中、FC東京の戦力は明確にアップしたと言えるだろう。松木玖生がいつ抜けるか分からないが、不確定要素は今回の評価では対象外。新加入選手がフィットすれば、昨季を上回る成績で優勝争いに加わることもできるはずだ。
●5位:セレッソ大阪
監督:小菊昭雄
2022順位:5位(46得点/40失点)
2022成績:勝ち点51(15勝10分9敗)
戦力値:83(攻撃力19、守備力22、選手層21、勝負強さ19)
リーグ5位、YBCルヴァンカップ準優勝という昨季の結果は、小菊昭雄監督の下で積み上げた成果と課題の両方が見えるシーズンとなった。川崎フロンターレ戦の2勝が物語るように、連動した守備から試合の主導権を握る戦いには長けていたが、名古屋グランパスやサンフレッチェ広島といったインテンシティの高いチームには苦戦した。さらに、ラスト15分の失点数がリーグワーストの21とかさみ、勝ち点を落としていたのは痛恨だった。
補強の色は明確で、昨季J2・10得点の藤尾翔太、J1・11得点のレオ・セアラを獲得し、カピシャーバ、ジョルディ・クルークスという違いを作れるサイドアタッカーの加入も頼もしい。そして香川真司、大迫塁という新旧の優れたMFが加わったことで、攻撃のクリエイティビティは格段に増すはずだ。
長期離脱が予想される清武弘嗣や、手術明けで慎重なコンディショニングが必要な香川といった若干の不安要素は、小菊監督の柔軟な起用法が消してくれるだろう。発展途上の若手、J2を経験した中堅、そして頼れるベテランと陣容のバランスも良い。昨季の課題が解決できれば、優勝争いに加わることも可能だ。
●4位:サンフレッチェ広島
監督:ミヒャエル・スキッベ
2022順位:3位(52得点/41失点)
2022成績:勝ち点55(15勝10分9敗)
戦力値:86(攻撃力22、守備力21、選手層20、勝負強さ23)
ミヒャエル・スキッベ監督が就任した昨季は、アグレッシブなプレーが連続する魅力的なサッカーがチームに浸透した。来日が遅れた影響で開幕から2試合は不在だったが、その後は着実に成果を残していった。2つのカップ戦ではともに決勝進出を果たし、YBCルヴァンカップ制覇という結果を残した。さらなるスタイルの深化が見込める今季は優勝争いの主役となる可能性も秘めている。
野上結貴と藤井智也が抜けたが、サイドのスペシャリスト志知孝明が加わった。中野就斗や山﨑大地という2人の大卒ルーキーは昨季の満田誠のように1年目からレギュラー奪取を狙えるポテンシャルがある。ユースから昇格した越道草太、怪我から復活を目指す東俊希、2年目の棚田遼など楽しみな若手も多く、青山敏弘らベテランも健在。多くの主力が残った今季の陣容は、近年で最高クラスの充実度を見せる。
昨季の2強、横浜F・マリノスと川崎フロンターレに大きく劣る部分はないと断言できる。ただ、ライバルクラブも広島の研究を進めているはずで、それを上回るオプションや優位性を作る必要があるかもしれない。
●3位:鹿島アントラーズ
監督:岩政大樹
2022順位:4位(47得点/42失点)
2022成績:勝ち点52(13勝13分8敗)
戦力値:87(攻撃力20、守備力21、選手層24、勝負強さ22)
昨季はレネ・ヴァイラー前監督の下で鹿島アントラーズの未来を描くことができず、シーズン途中で岩政大樹監督にバトンを渡した。ただ、上田綺世の移籍により得点力に悩まされ、監督交代後は2勝6分2敗と勝ち星を伸ばせず、4位という結果に終わった。今季は大型補強を敢行して臨む勝負の年だが、改革の成果はどのような形で現れるのだろうか。
昌子源と植田直通というタイトルを知るコンビが復帰し、攻撃陣には藤井智也と知念慶がライバルクラブから加わった。武者修行を終えて復帰した染野唯月や垣田裕暉の復帰により、前線の競争は激化するだろう。大卒ルーキー師岡柊生、J2屈指のボランチ佐野海舟など、楽しみな新戦力が多く、横浜F・マリノスら優勝候補にも劣らない陣容を揃えている。
昌子は右膝の負傷により序盤戦を欠場することとなったが、関川郁万やキム・ミンテも控えているセンターバックは、シーズンを通して見れば安定したパフォーマンスを見せてくれるのではないだろうか。開幕前の練習試合で全く結果を残せていないが、原理原則を浸透させるこの段階で結果を求めるのはナンセンス。ただ、戦力の充実と結果に結びつくのにどれだけの時間がかかるかは別問題として考えなければいけない。
●2位:川崎フロンターレ
監督:鬼木達
2022順位:2位(65得点/42失点)
2022成績:勝ち点66(20勝6分8敗)
戦力値:88(攻撃力22、守備力20、選手層23、勝負強さ23)
3連覇を目指した昨季は無冠という悔しい結果に終わった。一昨季開幕時から三笘薫、旗手怜央、田中碧が抜けたチームは選手層に問題を抱えており、ジェジエウや登里享平が負傷離脱していた最終ラインはやりくりに苦労した。さらにAFCチャンピオンズリーグなども含めた過密日程もあり、カップ戦はすべてベスト8にすら進めなかった。
雪辱を期すためリスタートした今季、谷口彰悟が去った最終ラインに大南拓磨が加わった。レアンドロ・ダミアンと小林悠を上回る7得点を挙げた知念慶が抜けたが、宮代大聖の復帰と大卒ルーキー山田新の加入により前線の選手層に厚みが出ている。GK上福元直人、インサイドハーフやウイングなどをこなせるポリバレントな瀬川祐輔の加入も大きなプラス材料だ。
昨年末に右足の手術を受けたレアンドロ・ダミアン、プレシーズンで負傷した小林悠や家長昭博を開幕戦では欠くものと見られるが、このピンチに台頭する若手が生まれれば、シーズン単位で考えたときにプラスになるだろう。新たなチャレンジの結実と新陳代謝の促進が、覇権奪回のカギになる。
●1位:横浜F・マリノス
監督:ケヴィン・マスカット
2022順位:優勝(70得点/35失点)
2022成績:勝ち点68(20勝8分け6敗)
戦力値:90(攻撃力24、守備力23、選手層22、勝負強さ21)
前年王者が戦力の点でもトップに立つこととなった。昨季はアタッキングフットボールの浸透はもちろん、選手が替わっても変わらない強さを見せ、首位の座を譲らなかった。AFCチャンピオンズリーグを含めたカップ戦では結果を残せず、終盤戦にはやや失速したが、シーズンを通して見ればその強さを誇示したと言えるだろう。
ケヴィン・マスカット監督の下で迎える3年目のシーズンを前に、前年度MVPの岩田智輝や、2年連続2ケタ得点のレオ・セアラ、2019年のMVP仲川輝人が抜けた。実績のある3人の退団は痛手だが、そこには将来有望な若手が加わっている。植中朝日と井上健太はJ1での経験が乏しいが、かつての岩田や藤田譲瑠チマのように伸びしろがある。上島拓巳の加入により、岩田が務めていた最終ラインに起用の幅が生まれるだろう。
プレシーズンで右サイドバックに離脱者が相次ぎ、水沼宏太、仲川とレオ・セアラの退団により前線の選手層は昨季と比べてややダウンしている。ただ、山根陸や角田涼太朗といった若手の成長、宮市亮の復帰や2年目のヤン・マテウスの爆発など、期待が持てる要素も多い。今季も優勝の有力候補になるだろう。