名良橋晃の2023年J1順位予想&全チームレビュー。降格1枠で「それぞれのチームカラーを出しやすい」シーズンを制するのはどこか
愛してるJ! Jリーグ2023開幕特集
元日本代表右サイドバックの名良橋晃さんに、2023シーズンのJ1の順位予想と各クラブの評価を聞いた。昨季までは横浜F・マリノスと川崎フロンターレの2強による優勝争いが続いたが、「今年はより多くのクラブが絡んできそう」と言う。
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<名良橋晃のJ1順位予想>
1位:セレッソ大阪 2位:横浜F・マリノス 3位:鹿島アントラーズ 4位:川崎フロンターレ 5位:サンフレッチェ広島 6位:FC東京 7位:名古屋グランパス 8位:浦和レッズ 9位:柏レイソル 10位:サガン鳥栖 11位:ガンバ大阪 12位:湘南ベルマーレ 13位:ヴィッセル神戸 14位:北海道コンサドーレ札幌 15位:アルビレックス新潟 16位:京都サンガF.C. 17位:横浜FC 18位:アビスパ福岡
【若手の成長+戦力アップ成功のセレッソ大阪】
優勝はセレッソ大阪と予想している。昨季はタイトルを獲れなかったけれど、リーグでは5位と上位に食い込み、ルヴァンカップ準優勝と結果を残した。チームに自信をつけながら若手も成長著しいシーズンを送った。
そのなかで、昨季優勝争いをした横浜F・マリノスや川崎フロンターレと比べて、得点力に課題があった。それに対してMF香川真司の帰還やMFジョルディ・クルークス、FWレオ・セアラの獲得など、前線の戦力アップに成功した。あとは小菊昭雄監督のチームマネージメントがブレなければ、十分優勝に届くと思っている。
昨季王者の横浜F・マリノスはケヴィン・マスカット監督3年目でベースは強固だとはいえ、FW仲川輝人、FWレオ・セアラが離れ、GK高丘陽平も移籍が決定的と多くの主力流出が不安材料としてある。
獲得したDF上島拓巳、J2組のFW植中朝日、MF井上健太ら新戦力が、どれだけチームと融合し、戦力の上積みとなれるか。選手層を保てれば今季も優勝争いの一角であることは間違いない。
鹿島アントラーズは獲得した新戦力を見るに、クラブとしての危機感、本気度が伺える。とくにDF昌子源、DF植田直通という鹿島を知る2人の補強は大きく、鹿島らしいいい守備が戻ってくれば、おのずと結果はついてくると思っている。
あとはFW鈴木優磨を中心に、どれだけ得点というところにフォーカスして、結果を出せるか。FW知念慶やFW垣田裕暉、FW染野唯月がチームにフィットし、MF荒木遼太郎の復活はマストだと思っている。それがあれば優勝争いに絡むだけのポテンシャルはある。
【安定感が出てきそうなFC東京、名古屋】
川崎フロンターレはDF谷口彰悟が抜けた穴は大きいはず。先発に名を連ねる選手たちの計算は立つとはいえ、谷口のリーダーシップを失った不安というのは拭えない。前線ではFW宮代大聖が戻り、湘南からFW瀬川祐輔を獲得でいい補強ができた。
ただ、長いシーズンを戦う上では、主力を休ませる選手層が求められる。そういった意味で、そのほかの若手がどれだけ成長できるかがカギを握る。そこでやや波があるだろうと見ている。
サンフレッチェ広島は昨季ルヴァンカップで優勝し、若手が躍動したシーズンだった。ただ、トップの得点力は不安が残る。FWナッシム・ベン・カリファを軸に、はたしてどれだけ結果を残せるか。また、AFCチャンピンズリーグ(ACL)に出場することになったら、選手層という面も気になるところだ。サッカーのスタイルは明確で、育成も長けているクラブなので、昨季のように若手の台頭に期待したい。
FC東京はアルベル・プッチ・オルトネダ監督2年目で、自分たちでボールを握るスタイルがより浸透し、昨季よりも期待できる。また、ブラジル人3選手(FWディエゴ・オリヴェイラ、MFアダイウトン、MFレアンドロ)の破壊力に加え、FW仲川輝人の加入は大きい。中盤にはMF小泉慶を補強し、プロ2年目のMF松木玖生と合わせて、どのように前線と絡んでいけるか。攻守の安定感がより増したチームになっているだろう。
名古屋グランパスは、長谷川健太監督がやりたいサッカーに合う選手を補強できた。前線のFWキャスパー・ユンカーは物足りなかった決定力という面で大きな戦力アップで、MF和泉竜司、MF米本拓司の加入でセンターラインが強化された。シーズンを通して、いい守備からのカウンターというスタイルを高い質で続けられれば、さらに上の順位も狙えるはず。
マチェイ・スコルジャ新監督を迎えた浦和レッズは、強度の高いチームになり、ポゼッションとカウンターのハイブリッドなサッカーが期待できる。FWキャンスパー・ユンカー、MF江坂任、MF松尾佑介と前線のタレントが多く抜けたのが痛いが、それでもタレントは揃っている。
FW興梠慎三の復帰はもちろん、熊本から加入した高橋利樹はJ1でも十分通用するFWだ。新監督のサッカーがどれだけスムーズに浸透するかにかかっているだろう。
【柏、鳥栖は選手入れ替えのなか今季はどうなるか】
柏レイソルはいい守備というベースがあるなかで、DF上島拓巳やDF大南拓磨など、うしろの主力を抜かれてしまった。そこに対してDF片山瑛一、DF立田悠悟、DFジエゴを補強したが、どれだけチームと噛み合うか。個人的にはMF山田康太の活躍は必要不可欠だと感じていて、J1でも十分通用すると思うので期待している。
サガン鳥栖は中盤の要であったMF小泉慶の後釜にMF河原創が加入した。ロアッソ熊本で抜群の存在感を示したが、どれだけチームの色にアジャストしていくか注目している。毎年選手の入れ替わりが多いなかで、川井健太監督はスタイルにはめるより選手のよさを引き出すようにマネージメントできる指揮官。今季もどんなチームになるのか楽しみだ。
ガンバ大阪はダニエル・ポヤトス新監督になって新しいスタイルを目指すと思うが、今季はJ2降格が1枠なため、安定感には欠けるかもしれないがチャレンジしやすいだろう。新戦力のFWイッサム・ジェバリがどれだけ得点できるか。それから新キャプテンとなったFW宇佐美貴史が、ケガなくフル稼働できるかにかかっているだろう。
湘南ベルマーレに足りないのは得点の部分だけ。守備面は昨季失点39と非常にいい守りができていた。強度の高い守備から前に出ることはできるので、あとはフィニッシュ。FW町野修斗やMF阿部浩之、新加入のFW山下敬大がどれだけ結果を残せるかに注目したい。
ヴィッセル神戸は相変わらずタレントは豊富で、吉田孝行監督のマネージメント次第だ。ただ、影響力の強いアンドレス・イニエスタ、セルジ・サンペールの稼働率が読めないのは不安材料。若手の成長による底上げが求められるシーズンになるだろう。
北海道コンサドーレ札幌はミハイロ・ペトロヴィッチ監督6年目で、どこが相手でもスタイルは変わらない。戦力的にはMF高嶺朋樹が抜けた穴にはMF小林祐希を補強できたけれど、前線はやや層が薄くなった印象。MF浅野雄也やMFスパチョークのフィットが遅れれば苦労しそうだ。
アルビレックス新潟も札幌同様、自分たちのスタイルというものが不動のチーム。しっかりとボールを握りつつ、ハードワークもできるという一体感はJ1でも通用するはず。課題はJ2とはレベルの違う相手の攻撃に対して、守備のところでどれだけ我慢ができるかになるだろう。
【未知な部分が多いチーム】
京都サンガF.C.も湘南と似ていて、昨季は失点を抑えたものの得点が伸びずに苦労しながらかろうじて残留を手にした。その課題にはFW一美和成、FWパトリックを獲得したが、どれだけ機能するか。また攻撃に重きを置くことで守備の安定感が失われないかという不安もある。守備の要であったGK上福元直人が移籍した影響もあり、今季も苦戦を強いられそうだ。
横浜FCは選手の入れ替えが激しく、どれだけチームとしてまとまるかが読めない。昨季、エースの小川航基はJ2で26得点と結果を残したが、果たしてJ1でどれだけとれるか。小川だけでなく、全体的にJ1経験者が少ないので攻守に未知数な部分の多さは懸念材料だ。
アビスパ福岡も昨季は守れるけど、点がなかなかとれなかったチームだ。FWファンマ・デルガド、MFジョルディ・クルークスと主力が離れ、FW佐藤凌我を獲得したとはいえ、前線のスケールダウンは否めない。相手も福岡がやりたいことがわかっているなかで、今季はさらに得点というところで難しくなりそうだ。
今季は優勝争いだけでなく、ACL圏内、残留争いと、どの順位争いも最後の最後まで予断を許さない展開になると予想している。昨季は横浜FMと川崎の2強による優勝争いとなったが、今年はより多くのクラブが絡んできそうだ。また、降格が1枠なので、よりそれぞれのチームカラーを出しやすいシーズンにもなるだろう。
個人においても3月から新生日本代表がスタートし、パリ五輪に向けてもメンバー入りの競争は激しくなるので、どんな選手が台頭してくるのか楽しみなシーズンだ。
名良橋晃 ならはし・あきら/1971年11月26日生まれ。千葉県千葉市出身。千葉英和高校からフジタ(現湘南ベルマーレ)に入り、その後のベルマーレ平塚で右サイドバックとして活躍。1997年からは鹿島アントラーズで10シーズンプレー。2007年に湘南ベルマーレに復帰し2008年に引退した。J1通算310試合出場23得点。日本代表ではAマッチ38試合出場。日本が本大会に初出場した1998年フランスW杯でプレーした。引退後は育成年代の指導や、解説者を務めている。



