松木玖生、中野伸哉…U-20W杯の年に活躍が期待される次世代スター候補たち
愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集
カタールW杯で日本代表選手たちは、あらん限りの力を尽くし、最高に近い結果を叩き出した。その後、選手たちはそれぞれの所属クラブで目覚ましい活躍を見せる。三笘薫(ブライトン)は世界のトッププレーヤーの仲間入りをしているし、鎌田大地(フランクフルト)、久保建英(レアル・ソシエダ)、堂安律(フライブルク)、冨安健洋(アーセナル)、守田英正(スポルティング)、伊東純也(スタッド・ランス)などもそれぞれ欧州カップ戦も戦い、旭日の勢いだ。
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まもなく2023年のJリーグが開幕するが、次回のW杯に向けては、次の世代の台頭も求められる。W杯も五輪もない今年、注目を集める国際大会はU‐20W杯となる。次の時代を背負う10代ルーキーたちの可能性とは? 結論から言えば、ポテンシャルは十分である。
昨年11月、U‐19日本代表は欧州遠征でU‐19スロバキア代表を3-2と下し、U‐18スペイン代表にも1-0で勝利。U-19フランス代表には1-2と敗れたが、上々の結果だった。今年3月には、U-20日本代表としてウズベキスタンで開催されるU-20アジアカップを戦う。
新世代のエース最有力候補と言われるのが、松木玖生(FC東京)だろう。
昨シーズン、松木はプロ1年目でレギュラーの座を奪い取って、31試合に出場(28試合が先発)。プロでもまれていることもあって、インテンシティは10代では傑出している。フランスの屈強な選手にぶつかっても、互角以上の強度だった。守備で人と体を合わせると強さを感じさせ、ボールを失わない堅固さも誇り、ゴールへの推進力も感じさせた。スペイン代表のMFガビと近いタイプかもしれない。
ただし、松木は同世代のなかで強度が突出している反面、意外性の乏しさや連係面が課題だろう。潰されてファウルを得られるのはひとつの長所だが、ボールを持ってタイミングが遅れる傾向もある。適性ポジションも、現状ではトップ下、サイド、ボランチでは厳しい。インサイドハーフでの胆力や激しさを武器にしながら、得点力をアップさせられたら、世界進出にもつながるはずだ。
【「ラームのようなタイプ」の中野伸哉】
一方、中井卓大(カスティージャ)は、局面のプレー強度がパワー、スピードともに足りない。フランス戦でも、簡単に当たり負けするシーンがあった。松木が豪快なスライディングでボールを奪い返したショートカウンターのシーンでは、ゴールまで持ち込んでほしかったが、すぐに奪い返されていた。レアル・マドリードのセカンドチームで今シーズンわずか1試合出場(4分間)という試合勘の鈍さもあるのか。
ただ、中井はプレーの緩急を心得ている。仲間を使うのがうまく、常にコンビネーションの選択肢があり、プレーが簡潔で迅速。フランス戦もボールを引き出し、味方を走らせ、そこにコンビネーションを生み出し、流れを潤滑にしていた。こぼれ球に対するポジション取りもよく、頭を使ってプレーを作ることができる。また、スペイン戦ではふたりの間を割って入ろうとするドリブルを見せ、相手を慌てさせていた。強度に慣れたら、一気に才能が開花するかもしれない。
この世代で一番に推したいのは、左サイドバックを中心にどのポジションでも「サッカー」を見せる中野伸哉(サガン鳥栖)だ。
「伸哉はスピードも、技術もある選手。プレーを読む力もあったから、インターセプトもできた」
「左利きですが、どちらも同じように蹴ることができて、ギリギリまでタイミングを待てるので相手は読めない」
鳥栖のアカデミー関係者の証言だが、中野はナチュラルなサッカーの才能の持ち主だろう。単なる「うまい」で括れない。ボール、敵、味方をスペースのなかで見極め、プレーキャンセルも含め、最善の選択ができる。たとえば自分の間合いで相手と入れ替わることができる。昨シーズンは論理的に戦術を落とし込むところで時間がかかったが、飛躍の前段階と考えるべきだ。
「伸哉はポジション的にスペシャルになる可能性もある選手ですが、どちらかと言えば元ドイツ代表の(フィリップ・)ラームみたいなタイプ(ボランチやサイドバックをこなすポリバレントな選手)かな、と。その意味では”見えている”し、いいものを持っています」
鳥栖の川井健太監督の言葉は、核心を突いている。
すでに鳥栖から欧州に進出した福井太智(バイエルン・ミュンヘン)も期待のMFだろう。昨年は高円宮杯優勝の原動力になるなど、バイエルン関係者のラブコールを受けた能力は伊達ではない。特に長短のパス精度は際立ったものがある。ただし、欧州遠征のスペイン戦で、前半でタックルの入り方が悪く退場になったように、実戦経験が必要だ。
山根陸(横浜F・マリノス)もMFとして中井、福井としのぎを削ることになるだろう。沈着冷静な性格はボランチらしく、ピッチでも弱点が少ない。Jリーグ王者でポジションを取れたら、一気に世界が近づく。
大化けを期待したいのが熊田直紀(FC東京)か。まだ足りないことばかりだが、ストライカーの風体がある。欧州遠征のフランス戦で決めたPKひとつとっても、実にふてぶてしかった。
北野颯太(セレッソ大阪)のドリブルの切れ味は非凡だ。ルヴァンカップで3得点を記録し、高校生ながらニューヒーロー賞を獲得している。関西には恐れ知らずに仕掛けるアタッカーが出やすい土壌があるが、その系譜に連なると言える。
また、欧州遠征メンバーではないが、中村仁郎(ガンバ大阪)は左利きアタッカーで、久保に近いプレーテンポを持つ。勝負の年となるだろう。
U―20アジアカップで上位4カ国に入って代表の座を勝ち取れば、U-20日本代表は5月にインドネシアで開催されるU-20W杯に出場することになる。恐れる敵はいない。十分に世界が狙えるタレントが揃っている。



