サッカー通信 初の7年連続リーグV逸危機の鹿島、取り戻したい伝統の勝負強さ

サッカーJ1でクラブワーストの7年連続V逸の危機に直面する鹿島に今季、昌子源(30)と植田直通(28)が復帰した。15日の新体制発表で昌子は「勝負にこだわる姿勢をみせる」、植田は「帰ってきた理由はタイトルを取ること」と誓った。サポーターの期待感も高まる中、勝利を義務付けられる鹿島の伝統を受け継ぐ両DFは、名門再建に向けて重要な役割を担っていきそうだ。

昌子は2018年シーズン後に欧州へ渡って20年からG大阪に所属し、植田は18年シーズン途中に欧州へ渡って直近はフランス2部ニームでプレーした。昌子は11年、植田は13年に鹿島でプロキャリアをスタート。いずれかが在籍中に獲得したタイトルは、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)1回、J1リーグ1回、天皇杯1回、YBCルヴァン・カップ(16年途中までヤマザキナビスコ・カップ)3回に上る。

不在の間に鹿島の代名詞だった〝常勝軍団〟の肩書は色あせてきた。最後に獲得した主要タイトルは18年ACLで、2人がクラブを去ってからは1つもタイトルを手にできていない。主戦場のJ1で今季も優勝を逃せば、クラブ史上初の7年連続となる非常事態といっていい。

両選手を呼び戻したのは、クラブが抱く危機感の表れだ。サポーターが寄せる期待も高く、新体制発表で新加入選手として紹介された際は会場の拍手が鳴りやまなかった。責任を自覚するように昌子は「『鹿島を体現できる選手が必要だ』といわれた期待に応えたい」、植田は「自分が先輩たちをみて学んだ勝負にこだわって戦う姿勢をみせていく」と表情を引き締めた。

鹿島は近年、急速に世代交代が進んだ。数々のタイトルをもたらしてきた小笠原満男氏が18年シーズン後、20年にはシーズン中に内田篤人氏、シーズン後に曽ケ端準氏が引退した。クラブの顔が相次いでピッチを去り、当たり前のようにタイトルを積み重ねていた時代を知るのは土居ら一部に激減。22年の鈴木に続く昌子と植田の復帰は、無類の勝負強さを誇った鹿島の伝統を引き継いでいく上で頼もしい限りだ。

昌子と植田以外の補強にもクラブの意気込みが感じられる。主力では三竿を海外挑戦で失った一方、川崎の黄金期構築に貢献したストライカーの知念や広島で右サイドを切り裂いてきたスピード自慢の藤井というレギュラー候補を獲得。垣田や染野、須藤ら将来性豊かな若手も期限付き移籍から復帰した。既存戦力にもJ1有数の実力者をそろえ、今季もリーグを引っ張りそうな横浜Mや川崎を追撃する態勢は整えた。

昨シーズン中に就任した岩政監督は、チーム状況を好転させたとはいえなかった。ただ、シーズン途中から指揮を執るのは誰であっても難しく、腰を据えて戦える今季が勝負の年となる。戦力はJ1トップクラスで、昌子と植田の復帰はピッチ外でも好影響を与えることが期待される。常勝軍団復活を目指すシーズンは、2月18日に敵地で行われる京都戦で幕を開ける。(運動部 奥山次郎)

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