堂安律、GKの手をはじき飛ばす強烈ミドルで同点弾「あそこは俺のコース。フリーにさせると堂安律は危ないので」

カタールW杯 ▽1次リーグE組 日本2―1スペイン(1日・ハリファ国際スタジアム)

日本は後半“2分22秒間の逆転劇”でスペインを2―1で破った。0―1の同3分、MF堂安律(24)=フライブルク=が今大会自身2点目となる同点ゴール。同6分にはMF三笘のゴールライン際の左クロスから、MF田中碧(24)=デュッセルドルフ=が決勝点を挙げた。昨夏に東京五輪に出場し、準決勝でスペインに敗れた3人の活躍でリベンジに成功。大舞台での勝負強さを、それぞれの担当記者が「見た」。

空気を切り裂き、そして震わせた。後半3分。得意の右45度でボールを受け、丁寧なタッチで左足の前にボールを置いた。「あそこは俺のコース。フリーにさせると堂安律は危ないので」。ニアサイドを打ち抜く強烈ミドルで同点に。前半はスペイン・サポーターからウェーブが発生するなど、“スペイン楽勝”の空気が満ちていたスタジアム。しかし、この一撃が、チームメート、そして日本サポーターも勇気づけ、流れを一変させた。

日本代表のW杯史上では、稲本、本田、乾に続く1大会2ゴール目。後半開始からピッチに入り、最初のチャンスで決めた。本人は「(シュートは)コーナーに行っていない。もっとすごいGKだと思ってました」とスペイン代表GKシモンをぶった切ったが、強烈なインパクト、GKの両手をはじき飛ばすパワーは堂安ならではだった。

「俺にはひと振りしかないんですよ」。欧州移籍から約3年が経過した2020年、堂安はそう語っていた。G大阪の下部組織時代は、家長(現川崎)、宇佐美(現G大阪)らサッカーセンスにあふれた先輩と比較され「お前はまだまだ」と言われ続けてきた。欧州ではさらに、到底かなわないスピードを持った選手とも直面した。「俺には特別な技術やスピードはないので。勝負できるとしたら左足。そこは負けちゃいけない」と、そのパワーを大事な場面で爆発させることにフォーカスした。シュート練習では、常にW杯など大舞台を想像し、ひと振りで試合を決めるイメージトレーニングを繰り返してきた。その結晶が、あの強烈な弾道だった。

試合後は、口調も滑らかだった。「これで1戦目が奇跡じゃなく、必然で勝ったと国民の皆さまに思ってもらえる」。さらに「ドイツ戦はただのごっつぁん(ゴール)だろっていう人もいましたし、うっせーなと思ってたんで。結果で黙らせられて良かった」と言った。

「冗談抜きで、本気で優勝を目指しているので。やっと皆さんが信じてくれると思います」。ビッグマウスは熱を帯びる。その言葉には、説得力が備わってきた。(金川 誉)

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