【森保殿の26人】大学生の守田英正に川崎スカウトが祈った「もうこれ以上、活躍しないでくれ」

「もうこれ以上、活躍しないでくれ…」。大学3年生だった守田のプレーを見た川崎の向島建スカウトは、こう祈った。

流通経大3年生だった守田は、2017年2月、デンソー杯関東チームの一員として出場した。全国的に無名の存在だったが、1試合を見ただけで、向島スカウトは目を奪われた。

「あ、コイツすごいわと。足元の技術は高いし、1対1も強い。大学に確認したら『まだどこからも(オファーが)来てないです』と。争奪戦になる前に、これ以上活躍しないことを願いました(笑い)」

しかし、この願いはあっけなく打ち砕かれた。守田はこの大会で全日本大学選抜を決勝で破って優勝し、MVPに選出されたのだ。

結局、守田の争奪レースは川崎とG大阪の一騎打ちとなった。守田はG大阪のお膝元である大阪・高槻の出身。向島が守田に目標としている選手を尋ねると「今野泰幸選手」と返ってきた。G大阪で長きにわたり活躍した日本代表MFだ。さらに、G大阪はボランチのMF井手口陽介が海外移籍でチームを抜けることが決まっていた。川崎にとって、悪条件がそろっていた。

しかし、どうしても欲しかった。出身の金光大阪高の関係者が「G大阪に進むべき」と守田に進言しているとウワサを耳にすれば、向島は関係者を説得するため、大阪へ飛んだ。結局ウワサは誤報だったが、それほどまでに「今まで獲得した大学生と比べても、完成度は抜けていた」と将来を確信していた。当時の川崎はボランチの選手層が厚かったが「まずは右サイドバックからでいい。そこでいろいろ学んでいずれボランチで」と訴えた。

練習参加を経て、熱意は実った。17年7月、川崎への内定が発表された。その後、在籍した18~20年で2度の優勝に貢献し、ルーキーイヤーの18年にA代表デビュー。川崎で培った攻守両面での貢献度の高さを買われ、最終予選でレギュラーに定着した。約6年前に「これ以上、活躍しないでくれ」と祈られた無名の大学3年生は、日本中の期待を背負い、不動のレギュラーとしてW杯を迎える。(岡島 智哉)

守田 英正(もりた・ひでまさ) 1995年5月10日、大阪・高槻市生まれ。27歳。金光大阪高から流通経大に進学。18年に川崎加入。同年、20年の優勝に貢献。21年1月にポルトガル1部サンタクララに移籍し、22年7月からスポルティング所属。日本代表では18年9月に代表デビュー。A代表通算17試合2得点。177センチ、74キロ。右利き。

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