北川信行の蹴球ノート ガンバ大阪と大阪大学が学習支援でタッグ…ウィンウィンの協力関係が目指すもの

サッカーJ1、ガンバ大阪のアカデミー(育成組織)に所属する中学生(ジュニアユース)の学習サポートを、大阪大学体育会サッカー部の大学生が行っている。ガンバ大阪と大阪大学は2014年にフレンドシップ協定を締結しており、サッカー部の学習支援は取り組みの一環として今秋からスタート。中学生側には個別指導で質の高い「補習」が受けられるメリットがあり、大学生側にも部活動の競技以外の部分を地元のJリーグクラブと展開できる利点がある。両者の共通言語である「サッカー」を通じたウィンウィン(Win-Win)の協力関係は、もっと注目されてもいい。

■2対1で徹底マーク

平日の午後4時すぎ。パナソニックスタジアム吹田(大阪府吹田市)の会議室に、先に到着したのは大阪大学体育会サッカー部の大学生たちだった。

その後、ガンバ大阪のジュニアユースに所属する寮生が中学校の授業を終え、三々五々集まってくる。長テーブルの真ん中に中学生が着席すると、両隣に大学生たちが挟みこむように座って個別レッスンがスタートする。

特に決められたテキストや資料があるわけではなく、苦手な教科を中心に学校の授業で疑問に感じた点や理解しにくかった点などを中学生側から質問し、それを大学生らが分かりやすく教えていくスタイル。ガンバ大阪の担当者によると、英語や数学について教えてもらう中学生が多いという。

学習支援は現在は寮生活を送っている中学2年、3年生が対象で、約2週間に1度のペースで実施。1回約1時間で、終了後はそれぞれサッカーの練習に向かう。教える大学生には家庭教師や塾の講師などのアルバイト経験者が多く、指導も慣れたもの。ガンバ大阪の担当者は「分からないことをタイムリーに聞けるのがいいと思います。今回の指導を通じ、もっとたくさん教えてほしいという要望や、個人的に家庭教師になってほしいといった話もあります」と打ち明ける。

■セカンドキャリアにも一石を

今回の学習サポートは、「『愛し』『愛される』チームに」をモットーに掲げる大阪大学体育会サッカー部からの働きかけで実現。ツテを通じてガンバ大阪に持ちかけたところ、ガンバ大阪側も「寮生の学習サポートが不足しているなというのがあった」(担当者)ことから、とんとん拍子に話がまとまった。

大阪大学体育会サッカー部はガンバ大阪での学習サポート以外にも、サービス付き高齢者向け住宅の訪問活動や、地域の子供たちを招いてのサッカー大会の開催なども行っており、北野祥太主将は「愛し、愛される組織として、地域の課題解決に取り組みたいと考えています。ガンバ大阪での学習サポートもその一つ。中学生のころからサッカーと勉強を両立させておくことで、選手の(引退後の生活をどうするかといった)セカンドキャリア問題にも一石を投じられるのではないかと思います」と話す。

また、勉強を教える側の大学生たちも刺激を受けているといい、「ガンバ大阪のアカデミーにいるのは、サッカーに本気で取り組んでいる中学生ばかり。サッカーに対する考え方は勉強になりますし、新たな視点ももらえます」と北野主将。先生というよりは、近所の大学生のお兄ちゃんが苦手な分野を教えるといったスタンスで中学生たちに接しており、「先週の試合どうだった?」といったサッカーに関する会話で盛り上がることもあるという。

■阪大からJリーガーを

ガンバ大阪の担当者によると「サッカー以外の苦手なことも、一生懸命取り組む姿勢を身に付けさせる」といった狙いもあるという。また、それ以外にも、今回の協力関係を通じて大学生たちにガンバ大阪のファン、サポーターになってもらい、その輪を広げてもらいたいとの希望もある。

一方、サッカーも勉強も、問題点を要素に分解して論理的に解き明かしていく思考法は一緒だという北野主将は「僕たちが教えた中学生たちが勉強を続けてくれ、大阪大学に入って、そこからガンバ大阪のトップチームでプロになるようになれば面白いと思います」と話す。

ガンバ大阪側は学習サポートの頻度を上げたり、対象を寮生以外にも広げたりしたい意向がある。「同じような取り組みが他の大学と他のJリーグクラブとの間でも広がっていって、豊かな人生を送れる子供たちが増えればいいと思います」と北野主将。地域の大学とJリーグクラブの関係がもっと密になれば、勉強を教える、教わるだけではない相乗効果が期待できそうだ。

https://www.iza.ne.jp/

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