G大阪での“複雑な3冠”もバネに…甲府の天皇杯初V導いたGK河田晃兵、大ベテランのミスに奮起「やりやがったなと思ったけど」

[10.16 天皇杯決勝 甲府 1-1(PK5-4)広島 日産ス]

ヴァンフォーレ甲府に史上初のビッグタイトルをもたらしたのは、在籍通算9年を数えるベテラン守護神だった。「ファン・サポーターの方々も、ヴァンフォーレ甲府がいまのままの予算でタイトルを取ると思っていた人はいないと思う。その歴史を変えられてよかった」。延長戦のPKストップでチームを救い、PK戦のセーブで栄冠を手繰り寄せたGK河田晃兵はそう感慨を語った。

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J1の広島相手に先制点を奪いながらも、後半39分の失点で試合を振り出しに戻されたこの日の甲府。終盤は一方的に攻め込まれており、河田は「終わったと思った」と率直な感想を持っていたという。ところが試合はここから、さらなるドラマチックな展開を見せた。

延長戦も劣勢が続く中、後半11分には絶体絶命のピンチも訪れた。サイドを使った相手の猛攻を耐え抜いていた甲府だったが、MF満田誠のパスをカットしようとした途中出場のDF山本英臣がペナルティエリア内でハンドの反則。クラブ在籍20年目の大ベテランのミスにより、試合を大きく左右するPKが広島に与えられた。

しかし、そこに立ちはだかったのが河田だった。「(山本に対して)『やりやがったな』と思ったけど、彼がずっとこのクラブを支えてきてくれた選手なのは間違いない。もう42歳なのでタイトルを取らせてあげたいなという気持ちがあった」。満田のキックに完璧なタイミングで反応すると、読みがピタリと当たってストップ成功。駆け引きには「情報は持っていなかったので適当に飛んだ」と謙遜したが、チームを救うスーパーセーブだった。

その結果、試合はPK戦にもつれ込み、河田の活躍の舞台が再びやってきた。1人目から3人目までのキッカーにはタイミングが合わない場面も見られたが、4人目で登場したMF川村拓夢のキックを完璧な横っ飛びでセーブ。後半39分に同点ゴールを決められた相手に対し、見事なリベンジを果たしてみせた。

一方の甲府は5人目の山本まで全員が成功。5-4という接戦となったPK戦に勝利し、天皇杯のビッグタイトルを掴んだ。「もうちょっと止めたかったけど、うちの選手はPK練習をしていても上手くて、PK戦に入ったら自分が1~2本止めれば絶対に勝てるなという感覚はあって、キッカーを信頼していた。1本しか止められなかったけど勝ててよかった」。カップファイナルでの華々しい大活躍に手応えを見せた。

試合後のミックスゾーンではユーモアものぞかせた。優勝決定直後、チームメートの歓喜の輪は5人目のPKを沈めた山本を中心にでき上がっていたが、「決まったら俺のところに走ってきてくれるんだろうなと思っていたけど、全然違うところ(山本)に行ったので……」と自虐。「一番最初に来たのがジェトゥーリオだったので『あれ?』と思ったけど、タイトルが取れてよかった」と独特の表現で喜びを語った。

もっとも、そんな河田自身にとっても悲願のタイトルだった。福岡大卒業後はガンバ大阪に所属していた河田は福岡、甲府への期限付き移籍を経て14年にレンタルバックでG大阪に復帰。J1リーグ、ルヴァン杯、天皇杯の3冠を経験したが、公式戦の出場機会はルヴァン杯の1試合のみだった。

「2014年にガンバで3冠したけど、僕はずっとベンチに座っていたので、チームが勝って嬉しいけど何も貢献できていない複雑な思いがあった」。15年から甲府に完全移籍し、8年目で掴んだ初タイトル。「ほとんどの選手が出場して、みんなの力で取ったタイトル。自分が出るだけじゃなくてチームとして取れたので嬉しい」と喜びをにじませた。

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