「弱者のサッカーに徹した」ガンバ大阪の執念。エース宇佐美貴史は語る「死ぬ気でがんばりたい」

横浜F・マリノスの歓喜の瞬間を目の当たりにすべく、向かった日産スタジアムで見たのは、ガンバ大阪の泥臭くも胸を打つ、残留への執念だった。

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押し込まれ、左右に揺さぶられ、足がつる選手が続出しながら、22本ものシュートを身体を張って耐えしのぎ、セットプレーから得た2点を最後まで守りきった。

「守る時間が多い試合でしたけど、選手は90分間集中を切らさずに、よく闘ってくれました。守備をしているだけでは勝てませんけど、セットプレーとか我々の強みを生かして得点を奪うこともできました。1点目も大きかったし、2点目も大きかった。効率よく試合を運べたのが勝因かなと思います」

降格の危機に瀕するG大阪を立て直すべく、今季途中より指揮を執る松田浩監督は、穏やかな表情で5試合ぶりの勝利の味をかみしめた。

優勝をかけたチームと残留を目指すチームの対戦は、両者の置かれた状況が如実に表れた一戦だった。

立ち上がりからボールを支配したのは横浜FMで、8分にG大阪がセットプレーから先手を奪うと、横浜FMの攻勢はさらに強まった。ほとんどハーフコートマッチとも言える展開で、G大阪がなんとかしのいでも、横浜FMの波状攻撃は止まらない。3万人以上が詰めかけたホームスタジアムで、3年ぶりの優勝を手にするために攻め続けた。

G大阪とすれば悪夢のような戦いだったに違いない。クリアに逃げてもすぐさま自陣に攻め入られ、つなごうとしてもハイプレスの網をかいくぐれずに、結局はピンチを招いてしまう。

ならば一度は逃げて、時間をかけるほうが得策である。アバウトに蹴られたボールをなんとか収めようとするも、あっさりとつぶされてしまう前線のパトリックが不憫に思えてしまうほどだった。

とはいえ、G大阪にはこれしか手段がなかった。なにせ、先手を奪ったのである。守って、守って、守り抜く。潔いまでの割りきりが、この日のG大阪の最大の勝因だった。

復帰した宇佐美が大仕事

「マリノスがいいサッカーをするチームなのはわかっていたので、自分たちは弱者のサッカーに徹した。ボールを持てるとは思えなかったし、シュート数もボール支配率でも上回れるとは思えなかった。粘り強く守り続けて、セットプレーやカウンター1発で取れればと。不本意ではありますけど、イメージどおりの試合でした」

そう振り返ったのは、宇佐美貴史である。

開幕直後に右アキレス腱断裂の大ケガを負い、前節に復帰したばかりのG大阪のエースは、この日はキャプテンマークを巻いてピッチに立っていた。

圧巻のドリブルとシュート力を備えたアタッカーにとって、「弱者の戦い」はストレスの溜まるものだったに違いない。

それでも、相手のボールを必死に追いかけ、限られたプレー機会では孤立無援の状況のなかでも確実にボールを収め、次のエリアと展開する。なにより質の高いプレースキックを、結果的にふたつのゴールに結びつけたのである。

セットプレーで先制し、守りを固め、リスクを冒して攻めてきた相手の隙を突いて、追加点を狙う—-。実力上位チームに挑む際の常套手段が、これほどまでにハマる試合も稀有だろう。その意味で、G大阪は完璧な戦いを演じたのである。

次々に際どいシュートを防いだ守護神の東口順昭がこの試合のマン・オブ・ザ・マッチにふさわしいが、ケガ明けながら志願のフル出場で90分間走り続けた宇佐美もまた勝利の立役者だった。

もっとも、首位チームを撃破して価値ある勝ち点3を手にしたG大阪だったが、ヴィッセル神戸、湘南ベルマーレ、アビスパ福岡と残留を争うライバルチームも揃って勝利を収めたことで、17位からひとつ順位を上げるにとどまった。降格圏から抜け出したとはいえ、いまだ苦しい状況であることに変わりはない。

守備の奮闘があった一方で、セットプレー頼みの戦いでは限界があるだろう。守備を意識しながらも、いかに攻撃に打って出られるかが、残り2試合のG大阪に求められる重要なテーマとなる。

J1残留まで「あとふたつ」

「今日のサッカーを、どの試合でもベースにするのは違うと思う。今日は、今の状況と対マリノスということで、しっかり最後までやりきることができましたけど、もう少し攻撃に出るシーン、ボールを持つシーンを増やさないといけない。そこが課題なので、この中断期間で積み上げていきたい」(宇佐美)

次節は3週間後、残留を争うジュビロ磐田との直接対決となる。横浜FM戦よりもボールを持てる時間が増えることが予想されるなか、どのような攻撃を構築できるか。

そのクオリティ次第で、結末は大きく変わることになるだろう。最下位のチームを蹴落とし、這い上がれるか。あるいは、”降格の沼”へと引きずり込まれることになるか。

「あとふたつがんばって、チームをJ1に残せれば。不本意ではありますけど、現状の目標は達成できる。来季につなげていくためにも、あとふたつ、死ぬ気でがんばりたい」

たくましさを増したエースは、果たしてG大阪の救世主となれるだろうか。

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