鎌田大地 切り拓く選手道 大地少年をサッカーにのめり込ませた鬼ごっことリフティング
W杯カタール大会開幕まで20日で2カ月となった。昨季の欧州リーグで優勝したフランクフルト(ドイツ)のMF鎌田大地(26)は、初の8強入りを目標に掲げる日本代表のキーマンとして期待される。挫折を乗り越えて世界のトップリーグに駆け上がった足跡を、自身も大学時代までサッカー選手だった父親の幹雄さん(53)が語る。
6月の日本代表戦後、実家に戻った大地や家族と約3週間、一緒に過ごしました。ほとんどがサッカーの話や孫の話。孫と会えるのは本当に楽しかったです。大地は長く体をケアしてくれている先生を呼び、トレーニングもしていました。
国外でプレーする今も試合は欠かさず見ます。午後10時に始まるときはリアルタイムで、午前4時開始の欧州チャンピオンズリーグは5時に起きて追っかけで。試合後は「お疲れさま」とメッセージをやり取りします。
最近は話の中でも大地に気付かされることが多いです。弟の大夢(ひろむ、現J2仙台)がトレーニングで悩んでいたとき、大地は「いろんなことをやって、体に合わないものはすぐ止める勇気もいる」と言いました。
僕はやり始めたら乗り越えないといけないと考えるけれど、「いや、そんなことないで」と。サッカーは駄目だったらすぐに切られる職業。目標達成のために、いいと思うことを次々試していくしかない、ということです。いろんな経験をしてきたんだなと、成長を感じます。
そんな大地とサッカーとの出会いは3歳です。私は大阪体育大でサッカーをしていて、怒られるかもしれないけれど、今の大地に近い視点でプレーしていたと思います。でも技術が追いつかず、うまくプレーできなかった。だから技術を教えてくれるチームを探そうと思いました。
いろんなチームを一緒に巡り、当時住んでいた愛媛・伊予市のキッズFCに決めました。このチームは小さい子には鬼ごっこのような遊びの中でボールを使うなど、年齢に合わせて教えてくれました。成長すると周りを見る、判断する部分を大切にしてくれて、これが今の大地にも生きています。
すぐにサッカーに熱中し、平日は毎日練習、土日は試合の日々。リフティングも最初はお母さんと2人で練習して、小学1年生の時には1000回を超えました。楽しんで成長し、小2、小3のころには3学年上の試合に出場していました。
試合が終わって家に帰ると、撮影した自分の試合の映像を見るんです。「あのパスよかったね」と言って、時にはコーチとも一緒に見てサッカー談義をして…。性格は天真爛漫(らんまん)。知らない場所に入るのもいい経験と、神戸で開かれたバルセロナのキャンプや、サッカー教室のクーバーのキャンプに行きましたが、そこでも友達をつくって帰ってくるような子でした。
挫折もありました。下級生のころから出場していた全日本少年サッカー大会。小6でキャプテンとして出場した最後の大会も、全国の舞台には届かず。号泣する子供たちに、どんな言葉をかけていいかわかりませんでした。進路ではJFAアカデミー福島を目指して選考を受けましたが、最終審査で落選しました。
通知が届いたときは大地しか家にいなくて、ひとりで結果を確認したようです。私が家に帰ったら2階で泣いていて、「選ぶ人がいるわけだから、仕方ないよ」と話したことを覚えています。切り替えは早く見えました。ガンバ大阪の下部組織に入ることを決め、私たちのもとを離れて暮らすことになります。
■鎌田 幹雄(かまだ・みきお)
1969(昭和44)年4月23日生まれ、53歳。鳥取市出身。鳥取東高から大体大。大学時までサッカー部でプレーした。現在は兵庫・尼崎市在住の会社員。
■鎌田 大地(かまだ・だいち)
1996(平成8)年8月5日生まれ、26歳。愛媛・伊予市出身。G大阪ジュニアユースから京都・東山高を経てJ1鳥栖入り。2017年夏にフランクフルト(ドイツ)に移籍。昨シーズンは欧州リーグでチームの42年ぶりの戴冠に貢献。19年3月に日本代表初招集。代表通算19試合5得点。180センチ、72キロ。