【番記者の視点】G大阪、痛恨ドローも15位浮上…光明はMF山本悠樹が加えた“変化”

明治安田生命J1リーグ第29節 G大阪0―0FC東京(10日、パナスタ)

この引き分けで15位に浮上したとはいえ、チャンスをつくりながら勝ち点3を積めなかったFC東京戦のスコアレスドローは痛い。ただこの試合で見えたチームの“変化”が、残り5試合の光明となる可能性は見えた。その一つが、ダブルボランチの一角で約5か月振りに先発したMF山本悠樹の存在だ。

8月に就任した松田浩監督は、ここまで守備からチームを立て直す中で、4―4―2のダブルボランチにはMF斉藤、ダワン、奥野と潰し屋タイプを主に起用してきた。もう1敗もできない状況で、手堅く試合を進めるなら、ボランチの人選に変化を加える必要はなかったはず。しかし指揮官は守備の強度では他3人に劣るが、攻撃センスは随一の山本悠をこの試合の先発に選んだ。

すると山本悠は、久々の先発とは思えないほど冷静かつ正確なプレーで、攻撃のリズムをつくった。「今日は相手がどこで(ボールを)取りたいのか。(スペースが)どこが空いているのか、試合前を含めて頭に叩き込んだ。今日ならアダイウトン選手の後ろ(のスペース)が空く、と思っていたので、そこをいかに使えるかはずっと見ていました」。GK東口も含めたDFラインとのパス交換で相手を引き出し、FC東京の右FWアダイウトンの背中を狙ってボールを前進させた。ゴール前へのラストパスはわずかに合わなかったが、堂々とパス回しの中心を担った。

今季は4月に負傷後、復帰まで約4か月を要するなど苦しんできた山本悠。しかし現在は「ケガから帰ってきてから、ちょっと落ち着いているというか、(周りが)見えているという感覚がある」。チームの戦い方が整理されてきたこともあって、味方の位置や、相手のプレッシャーの矢印がどう向いているか、などを敏感に感じ取れているという。

この日はそんな視野の広さを生かし、タイミングよくFC東京のアンカー・MF東まで積極的にプレスをかけ、相手の攻撃を遮断する守備も光った。松田監督も「彼の攻撃のセンス、アイデアは非常にいいものがある。プラスして、今日は守備面でも本当によくボールを奪うところに関わってくれた。期待以上の仕事をやってくれた。チームの中で欠かせない存在になってきた、という印象を受けます」と評価した。

松田監督が整備した4―4―2の強固な守備から、FWパトリックら前線のパワーを生かすカウンターが今のG大阪の武器。しかしこのスタイルのみでは、守備に終われ、疲弊して押し込まれる時間は増える。ボール保持の中心となり、チームに落ち着きを与える山本悠のプレーが、チームの戦い方に幅を加えることは確かだ。次節は17位・神戸戦(9月18日・アウェー)。リスクを取ってつかんだ“変化”への手ごたえが、残留争いの行方を左右する大一番で、結果につながるか注目したい。(G大阪担当・金川誉)

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