【番記者の視点】8試合ぶり勝利のG大阪 「ハードワークのシェア」がJ1残留の鍵に

明治安田生命J1リーグ第27節 名古屋0―2G大阪(27日、豊田ス)

現実と向き合い、つかんだ勝ち点3だった。前半3分に奪った先制点を粘り強くキープし、終盤にとどめの追加点を奪って2―0で勝利。前回の勝利は、約2か月前となる6月29日の広島戦(2〇0)。約2か月ぶり、8試合ぶりの勝利に、試合後の選手たちはまるで憑(つ)き物が落ちたように晴れやかな表情を見せていた。

先制点は前半3分。ゴール前で一度倒れたFWパトリックがすぐに立ち上がると、名古屋のマークが緩んだタイミングをMFアラーノが逃さずラストパス。パトリックが冷静に沈めた。相手の隙をついてリードを奪うと、その後は名古屋の前線からの守備をいなし、攻撃の時間をつくろうとトライ。しかしそれが制限されると、4―4―2の強固なブロックを組んだ。中央を固めて名古屋に決定機を作らせず、守備からカウンターの機会をうかがった。そして1点リードのまま迎えた後半42分。GK東口のパントキックを収めた途中出場のFW鈴木が、一人で持ち込んで豪快なミドルシュートを突き刺してリードを広げた。

無失点の守備でポイントとなったのは、MF食野とアラーノの両サイドハーフだ。3―5―2を採用する名古屋の両ウイングバック(相馬、森下)を監視しつつカウンター時には前に絡むという、攻守にハードワークが求められる重要なタスクを担った。松田監督は「今やっているシステムでは、(サイドハーフは)ハードワークと戦術理解度、駆け引きもすごく要求される。特に3バックのチームに対しては、自分が出ていくのか出ないのか、駆け引きもすごく要求されるポジション。彼らの頑張りは、今日の勝利の上では相当重要な意味を占めていた」と評した。

一方で松田監督が就任後、2試合連続で先発起用されているFWレアンドロ・ペレイラは、決して守備のハードワークが目立つわけではない。サイドや後方のカバーにはほとんど走らず、中央に縦パスを入れさせない、という仕事に専念。この日も出場72分間で走行距離6・675キロ、スプリント回数8回は、今節J1で60分以上出場したFWでは最も少ない数字だ。しかし前節の広島戦で約5か月ぶりのゴールを決めると、この日もVARで2度とも取り消しとなったが、少ないチャンスで2度ともネットを揺らし、その決定力は示した。

守備のハイプレスを求めた片野坂前監督の下では、先発の機会を約3か月も失っていたレアンドロ。守備でチームを助ける、という姿勢の不足からとみていたが、今の彼は得点でチームを助けるという仕事で力を発揮しつつある。食野が「チームが勝てばそれでいい。レアンドロは守備が甘くても、点を取ってくれる」と語ったように、2試合で3度もネットを揺らした(得点は1点のみ)事実により、チームメートからの信頼もつかみつつある。

松田監督は「ハードワークを互いにシェアする」という言葉を使う。個々が強みと弱みを補い合うことで、今できる勝利への最短距離を進もうとしているG大阪。シーズン開幕時に目指していた主導権を握って攻守に仕掛けるサッカーとはかけ離れているが、今は理想を追求する時期ではない。この勝利で16位に浮上したが、最下位・磐田から12位・福岡までわずか勝ち点差6と混戦の残留争い。残り8試合の方向性がこの勝利で定まったことが、苦しみ続けてきたチームにとっては希望の光だ。

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