J1残留争い、危険域内にいるのは8チーム。各クラブの調子を「上がり目」「下がり目」「横ばい」に分けてみると?
まだ連日暑い日が続く8月だというのに、今季J1リーグはすでに第26節までが終了している。11月第1週に行なわれる最終節を含め、8節を残すのみだ。
【画像】日本代表のユニフォームを着た乾貴士(2019年ボリビア戦)
例年に比べて日程の進行が早いのは、今年11月にカタールワールドカップが開幕するため、それまでにシーズンを終えなければならないからだ。
新型コロナウイルス感染拡大や台風の影響があり、クラブごとに消化試合数に差があるとはいえ、いずれも残り試合は8~10試合。長いシーズンも、すでに佳境を迎えていると言っていいだろう。
そんな今シーズンにあって、いつになく混戦模様を呈しているのが、J1残留争いである。
まずは、現時点でのJ1下位の順位を確認しておこう(8月21日開催分終了時点)。 10位 名古屋グランパス (勝ち点33) 得失点差-211位 清水エスパルス (勝ち点28) 得失点差-512位 北海道コンサドーレ札幌 (勝ち点28) 得失点差-1713位 アビスパ福岡 (勝ち点27) 得失点差-814位 京都サンガF.C. (勝ち点26) 得失点差-515位 湘南ベルマーレ (勝ち点26) 得失点差-1116位 ヴィッセル神戸 (勝ち点24) 得失点差-917位 ガンバ大阪 (勝ち点22) 得失点差-1418位 ジュビロ磐田 (勝ち点22) 得失点差-20
現時点でJ2自動降格圏にいるのは、17位のガンバ大阪と18位のジュビロ磐田、そしてJ1参入プレーオフに回る16位は、ヴィッセル神戸となっている。
だが、降格危機にある3クラブも、J1残留圏内となる15位とは勝ち点2~4の差しかなく、十分に逆転残留は可能。14位以上を見ても、わずかな勝ち点差で各クラブが並んでいるため、1、2試合の結果次第で大きく順位が入れ替わってしまう状況にある。
最下位から11位まで急浮上 では、現実的に考えて、どのあたりまでのクラブにJ2降格の可能性があるのだろうか。
それを予想するうえでは、残り試合数が目安になる。
すなわち、「残り試合数=逆転可能な勝ち点差」である。
これを目安にすると、17位とは勝ち点差6、16位とは勝ち点差4しかない11位の清水エスパルス以下が、危険域内ということになる。
10位の名古屋グランパスにしても、16位との勝ち点差は9しかなく、目安に照らせばプレーオフ行きの可能性が残ることにはなるが、11位との勝ち点差や順位を含めて考えれば、残留当確ラインに達していると見ていいだろう。
ここでは11位以下の8クラブを対象に、J1残留争いの行方を占ってみたい。
シーズンの折り返し地点を過ぎ、明らかに状態が上向いてきたのは、清水だ。
今季途中、平岡宏章監督を解任し、新たにゼ・リカルド監督を招聘するも、すぐには劇的な変化が表れなかったが、その後、MF乾貴士、FW北川航也、FWヤゴ・ピカチュウと、新戦力を次々に獲得。積極的な補強策が実を結び、最近4試合は2勝2分けの負けなしだ。
順位のうえでも、一時は最下位まで沈んだこともあったが、ここに来て11位まで急浮上してきた。戦いぶりにも自信がうかがえるようになり、このまま残留当確圏まで一気に駆け上がっていきそうな勢いがある。
清水と同じく、監督交代後に勝ち点を伸ばしているのが、神戸である。
現在指揮を執る吉田孝行監督は、今季3人目となる神戸の指揮官。三浦淳寛監督に代わり、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が就任したあとも事態が好転しなかった神戸だが、今季2度目の監督交代で吉田監督が就任するや直後に3連勝するなど、4勝2敗1分けと成績が大きく向上した。
夏に補強したDFマテウス・トゥーレル、MF飯野七聖のチームへの適応が早いのも、J1残留へ向けて好材料となっている。FW大迫勇也、MFアンドレス・イニエスタら、本来の主軸がケガでフル稼働できない不安は依然残るが、シーズン前半に比べると成績は上向いてきた。
監督交代は吉と出るのか?
対照的に、どうにも苦しい流れを変えられないのが、G大阪と磐田である。
両クラブはともに、新監督を迎えて今季に臨んだという点で一致する。G大阪の片野坂知宏監督、磐田の伊藤彰監督に期待されたのは、すぐに結果を出すことよりも、長い目で見たチーム作りであり、自らボールを握ってゲームを進めるスタイル固めだったに違いない。
だからこそ、なかなか結果が出ず、下位に低迷してもなお、我慢してチームの指揮を託してきたのだろうが、いよいよJ2降格の危機が目前に迫り、解任に踏み切らざるを得なくなったというわけだ。
そこには当然、苦渋の決断があったとしても、長期的視野に立って迎えたはずの指揮官を結果的に1シーズンもたずに解任。しかも、G大阪は松田浩監督が、磐田は渋谷洋樹監督が新たに就任するも、初戦はいずれも黒星スタートと、即効性が期待された”ショック療法”も残念ながら結果に結びついていない。
このまま名も実も失うようなことになれば、あまりにも痛いシーズンとなってしまうだけに、両クラブにとっては踏ん張りどころである。
一方、残る北海道コンサドーレ札幌、アビスパ福岡、京都サンガ、湘南ベルマーレは、監督を代えることなく残留争いを乗り切る構えを見せている。
この4クラブに共通するのは、シーズンを通して志向するサッカーを貫いていること。だからだろうか、それが必ずしも結果につながるわけではないとしても、内容自体はそれほど悪くない。残留争いの最中にあっても監督交代という手を打たないのは、内容に対する相応の評価があるからだろう。
あえて現在のチーム状態を区別するなら、上がり目の湘南、下がり目の京都、横ばいの札幌と福岡、ということになるだろうか。ただ、いずれも試合内容は悪くないだけに、ひとつの勝利をきっかけに残留争いを一気に抜け出す可能性を秘めている。
以上が、現時点で11位以下にいる8クラブの現状だ。簡単にまとめると、状態が上向いてきた清水、神戸。低空飛行が続くG大阪、磐田。よくも悪くも安定している札幌、福岡、京都、湘南、といったところだろう。
しかしながら、それぞれが置かれた状況に多少の違いこそあれ、いずれもが決定打には欠ける。どのクラブもまだ安心できる立場にはなく、先を見通すことは難しい。
今季のJ1残留争いは、1試合ごとに目まぐるしく順位を入れ替えながら、最後まで混戦状態が続くことになりそうだ。