Jリーグ終盤戦の飛躍に期待、“03ジャパン”逸材8人 ガンバの若きストライカー&18歳高校生プロMFらタレント厳選
【識者コラム】U-19日本代表招集メンバーから躍動へ期待のJリーガー8人に注目
富樫剛一監督が率いる“03ジャパン”U-19日本代表は8月15日から3日間の合宿を行い、最終日には合宿で来日していたU-19ベトナム代表とのトレーニングマッチ(40分×3本)で5-0と勝利した。
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9月10日から18日にかけて行われるU-20アジアカップ予選(セントラル方式で、日本はラオスで4試合)を前にした最後の合宿で、メンバー入りのサバイバルも兼ねており、選手たちは勝利を目指しながらも個々のアピールが見られた。
怪我やチーム事情で今回の合宿に入らなかった選手も含めて、どのような選手たちがこのチームとして最初の公式大会に臨むか楽しみだが、もう1つ気になるのは今後のJリーグでの活躍だ。
先のフランス遠征(モーリスレベロ・トーナメント)ではオーストリアでプレーするFW二田理央(当時はヴァッカー・インスブルック、現在はSKNザンクト・ペルテンに所属)やDF前田ハドー慈英(ブラックバーン)、DF髙橋センダゴルタ仁胡(バルセロナ)といった欧州組も参加した。
また元横浜FCユースのMF山崎太新(筑波大)や元横浜F・マリノスユースのGK木村凌也(日体大)など大学組のタレントもいるが、ベースになるのはJリーグの選手たちで、現役高校生ながらすでにプロ契約を結んでいたり、トップチームに2種登録されていたりする選手もいる。そうしたなかから、このコラムでは8人のタレントを厳選した。
なお、高卒ルーキーながらFC東京の主力としてプレーするMF松木玖生やJ1首位の横浜F・マリノスで存在感を高めているMF山根陸、本来このチームのキャプテン格であるサガン鳥栖のDF中野伸哉は今回の候補合宿ではメンバー外だったので、対象から外した。
■坂本一彩(FW/ガンバ大阪)
ベトナムとの練習試合では3本目の40分だけで2得点。1つはMF熊取谷一星(明治大)による左からのクロスをヘディングで合わせ、もう1つはセカンドボールを拾ったところからグラウンダーのミドルシュートを決めた。もともとドリブル突破に定評のある選手だが、ストライカーとしての引き出しも多い。2トップを組んだFW横山歩夢(松本山雅FC)とは似たところもあるが、お互いを生かし合う柔軟性も見せた。監督交代があったばかりのG大阪で救世主的な仕事ができるか。ソリッドな4-4-2の使い手である松田浩監督の戦術にはフィットしそうだ。
■松田隼風(DF/水戸ホーリーホック)
左サイドから鋭い攻め上がりと良質なビルドアップを織り混ぜる。ベトナム戦では前方のMF山崎太新(筑波大)をうまくサポートしながら、FW熊田直紀(FC東京U-18)による先制点をアシストした。セットプレーでキッカーを任されるほどの正確な左足で、効果的なサイドチェンジを通すこともできる。水戸において松田は準主力の位置付けで、U-20アジアカップ予選のメンバーに入れば少なくとも3試合不在となるが、代表の経験も得て着実に成長しており、水戸が新たなステージに足を踏み入れる推進力になれるか注目だ。
磐田のトップ昇格1年目MF藤原は、渋谷新体制で重要なプラスアルファになり得る
■藤原健介(MF/ジュビロ磐田)
トップ昇格1年目の藤原は今季、ルヴァン杯や天皇杯ではチャンスを得たが、リーグ戦には一度も絡めず「(前監督の伊藤)彰さんを助けられなかった」と悔やむ。そうした思いもぶつける形で、代表合宿では高い技術と運動量、周りを見ながらサッカーができるスペシャリティーを発揮した。藤原の才能は富樫監督も高く評価しており、セットプレーのメインキッカーの1人でもあることから、U-20アジアカップ予選のメンバー入りは濃厚だ。同世代には飛び級でU-21代表に定着しているMF松木玖生(FC東京)やMF山根陸(横浜F・マリノス)といった磐田より上位のJ1クラブで多くの出場機会を得ているライバルもいる。渋谷洋樹新監督も藤原のようなこれまでリーグ戦に絡めなかった若手の活躍が残留争いで必要になってくることを認めており、特にラスト数試合で重要なプラスアルファになり得る。
■菊地脩太(DF/V・ファーレン長崎)
清水エスパルスからJ2の長崎に育成型期限付きで移籍中。J1昇格を目指す長崎に新天地を移した事実が、期待の高さを窺わせる。誕生日の翌日だったベトナム戦では1本目から登場して、対人の強さとクレバーな統率力を発揮していた。ビルドアップも正確性が高く、状況に応じてボランチやサイドバックだけでなく、前線の裏抜けやポストプレーも引き出すことができる明るいキャラクターの持ち主だ。長崎にはDF二見宏志やDF櫛引一紀といったセンターバックの実力者がおり、実は清水に比べても競争は簡単ではないが、本人にも良いチャレンジになると同時に、長崎の助けになることを期待したい。
■横山歩夢(FW/松本山雅FC)
これまでの“03ジャパン”の代表合宿や初の海外遠征となったフランスのモーリスレベロ・トーナメントで着実に得点を重ねるなど、同世代のエース候補として名乗りをあげている。クラブでは代表合宿への合流直前の鹿児島ユナイテッド戦(2-4)でゴール。「警戒されて何もできなかったらそれまでの選手」と、さらなる飛躍を見据える。ベトナム戦では坂本とともに3本目の40分しかプレーしなかったが、効果的なポストプレーで、熊取谷のゴールを演出。さらに自らの仕掛けで獲得したPKをしっかりと決めて、1得点1アシストをマークした。「山雅は優勝して昇格しなければいけないチーム」と語る横山。本人も前向きな意欲を見せるU-20アジアカップ予選に招集されれば、少なくともリーグ戦3試合で横山を欠くことになるが、J2昇格が懸かる終盤戦で大きな力になっていくはずだ。
■吉田温紀(DF/名古屋グランパス)
センターバックもこなせる長身のボランチで、観察眼とボールを奪う能力に優れている。特に目を見張るのがリスクマネジメントで、ベトナム戦では中盤でコンビを組んだ藤原との連係はもちろん、左サイドバックのDF松田隼風(水戸)が攻め上がった時に、中間的なポジションで攻撃サポートと守備のバランス両方で良い効果をもたらしていた。名古屋ではMFレオ・シルバやMF稲垣祥の控え的な立場で、夏の補強で経験豊富なMF永木亮太もライバルに加わった。バランスワークは素晴らしいが、縦パスや機を見た攻撃参加など、攻撃に大きなプラスをもたらせる要素は強く意識してもらいたいところだ。
柏DF田中は先月リーグデビュー、上位フィニッシュを後方から支える資質は十分
■田中隼人(DF/柏レイソル)
左利きで188センチという日本では希少なセンターバック。空中線の強さは言わずもがな、展開力があり、ベトナム戦でも先制点の起点になる縦パスなどが光った。“03ジャパン”では4バックの左センターバックだが、柏では3バックの左がメインに。ただし、ユースでは中央のリベロを本職としてこなしていた。まだ18歳ながらリーダーシップと落ち着きも武器。年上の選手たちとバックラインを組んでも遠慮はない。7月30日のヴィッセル神戸戦でリーグ戦初出場を果たし、無失点勝利に貢献した。柏の上位フィニッシュを後方から支える資質は十分だ。
■北野颯太(MF/セレッソ大阪)
18歳の現役高校生ながら今年2月にトップチームとプロ契約を結んだ。持ち前の鋭い動き出しやフィニッシュで効果的なアクセントになっているが、なかなかゴールという結果を出せておらず、主力になれそうでなれない状況は本人も歯痒さを感じながら、それでも地に足を付けてトレーニングに励んでいるようだ。“03ジャパン”ではMFの1人として招集されているが、ベトナム戦では大型FW熊田と前線でコンビを組んで、ハイプレスや裏抜けなど、引き出しの多さを見せた。アカデミーの大先輩であるMF南野拓実(モナコ)を連想させ、代表とクラブの両方で注目していきたいタレントだ。
[著者プロフィール]
河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。